2015 Fiscal Year Annual Research Report
日本における近隣住区論の導入過程に関する包括的研究
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15H04098
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
中野 茂夫 島根大学, 総合理工学研究科(研究院), 准教授 (00396607)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
不破 正仁 東北工業大学, 工学部, 講師 (20618350)
中島 直人 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30345079)
中島 伸 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50706942)
石田 潤一郎 京都工芸繊維大学, 大学院工芸科学研究科, 教授 (80151372)
小山 雄資 鹿児島大学, 工学部, 准教授 (80529826)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 近隣住区 / 防空計画 / 防火ブロック / 内田祥三 / 高山英華 / 大同 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、近隣住区論の重要な役割を果たした人物の抽出を行うために、都市公論、都市問題、区画整理、都市創作、公園緑地といった主要な都市計画関係の雑誌の精査を行った。その上で、近隣住区論に関連する重要な論考を、それらの都市計画関係の雑誌から抽出し、六原則(規模、境界、空地、公共施設用地、地区的な店舗、内部的街路系統)の観点から、理論の導入の状況を精査している。この作業は、次年度以降も継続して整理・分析を行う。 近隣住区論の導入過程において重要な人物である内田祥三に関しては、東京都公文書館において、基礎的な資料の収集を行った。また内田祥三が大同で実施した近隣住区論を取り入れた最初の計画について、具体的な内容を精査するとともに、研究分担者らが現地調査を実施した。一方、内田らは海外の住宅地に関する調査・研究も行っており、その成果をまとめた類例集の分析を行っている。このように植民地統治下では、特に新興都市建設のために計画単位が必要だったと考えられるため、同様の計画がみられたソウルについても研究分担者が分析を行っている。 国内の事例については、近隣住区論は防空計画とも関係しており、戦時下の新興工業都市において先進的に取り入れられたことが確認されるため、広畑の新興工業都市における土地区画整理の実態を明らかにし、研究論文として公表した。広畑では、防火ブロックを想定しており、それがある意味での住区を構成し、小学校と公園の適正配置によって歩車分離を実現しており、近隣住区論と非常に類似した空間が誕生していたことが明らかとなった。広畑と同様に高砂でも、公園と小学校を分散させ、緑地帯を配置することによって、住区を計画単位とした計画が確認された。兵庫県では、防空と住区を一体的に設計していたことが推察されるが、尼崎近郊の住宅地開発でも同様の例がみられたため、継続的に研究を遂行している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、理論、実践、制度化の三点から近隣住区論の導入過程を明らかにすることを目的としている。理論に関しては、平成27年度に、近隣住区論の導入過程において重要な位置づけにある人物をおおむね特定することができた。現在、主要人物の論考を収集・整理している段階であるが、おおむねリスト化が完了していることから、順調に研究が進展しているといえる。また近隣住区論の六原則にそくして、近隣住区論のどの部分が導入され、どの部分が捨象されたのかについて精査することで、理論の導入過程が明らかになると考えられ、その道筋をつけることができた。 実践に関しては、大同とソウルといった国内に先行して近隣住区論の現地調査および分析が研究分担者を中心に鋭意進められており、研究成果としてまとめていく段階である。また国内における実践例については、日立 ・勝田の事例は筆者らがおおむね明らかにしているが、それに関連して新興工業都市において積極的に導入されていたことが判明したため、個別事例の精査を行っているところである。もっとも最初に新興工業都市として開発された広畑に関しては、すでに研究成果を公表することができたため、おおむね順調に進展していると判断した。 制度化に関しては、新興工業都市建設の指導要領の設定のプロセスについて明らかにする必要があるが、その作成の人物はおおむね特定されているため、今後精査し、戦後の戦災復興までへの系譜を明らかにする予定である。以上の点に関しては、都市計画学会で開催したWSにおいて研究発表を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、理論、実践、制度化の三点から近隣住区論の導入過程を明らかにすることを目的としている。 理論に関しては、平成27年度に開始した作業を継続して実施し、平成28年度中に、近隣住区論に関連する都市計画関係の論考を網羅するとともに、主要人物の理論的な咀嚼の状況を明らかにする。その成果は、都市計画学会論文集等に投稿を予定している。また海外に於ける住宅敷地割類例集で取り上げた住宅地の精査も行い、どの理論をどのように国内に応用しようとしていたのかについて検討する。 実践に関しては、大同の調査は一定度の成果を達成しつつあるため、今年度の公表を目標としている。また新興工業都市に関しては、一通り都市計画関係の資料を収集しているため、防火ブロックの導入された都市を中心に、住区の計画単位について検証する。 制度化に関しては、新興工業都市の指導要領の原案が作成された経緯を明らかにするとともに、戦災復興の計画標準との比較検討を行う。
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