2015 Fiscal Year Annual Research Report
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15H04296
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
岡田 雅人 大阪大学, 微生物病研究所, 教授 (10177058)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小根山 千歳 愛知県がんセンター(研究所), 感染腫瘍学部, 部長 (90373208)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | がん遺伝子 / 腫瘍進展 / Src / チロシンキナーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
Srcはチロシンキナーゼ型がん原遺伝子産物であるが、ヒト腫瘍においては活性化変異は認められず、その制御破綻による機能亢進によって浸潤・転移など腫瘍進展に重要な役割を担うと考えられている。本研究では、Srcのヒト腫瘍における本質的な意義や機能を明確にすることを目的として、なぜSrcに変異がないのか、どのようにSrcが制御破綻して腫瘍進展を促すのかなどの未解決の課題について、活性化Src発現誘導系や腫瘍悪性化再構成系を構築して解析することを提案した。 まず、正常組織内におけるSrc活性化細胞の運命を辿るために、上皮細胞株MCF10AとMDCK、およびマウス個体において活性化Srcの発現誘導系を導入して解析を行った。その結果、培養細胞系においてSrc活性化細胞が正常細胞層から排除されることが観察され、Src活性化変異が正常組織内においては蓄積されないことが示唆された。その現象をin vivoで検証するために、マウス個体(表皮組織)において活性化Srcをランダムな細胞に発現誘導する系を構築し、Src活性化細胞の挙動の解析を現在進めている。また、MCF10Aにおいて、TGFβ刺激による上皮間葉転換(EMT)にともなってSrc遺伝子が顕著に発現誘導されることを見出した。この現象が腫瘍悪性化に伴うSrcの制御破綻の有用なモデル系となる可能性が示され、現在、Srcの発現制御に関わる転写因子の同定など分子機序の解析を行っている。さらに、活性化Srcが特異的にエンドソーム系に輸送されて分解制御を受けることを見出した。活性化Srcを特異的に認識する分子を同定することにより、その経路の分子機序と腫瘍悪性化における意義解明を目指した研究を進めている。以上、本年度においては、目的達成のための実験系の構築を中心に研究を進め、ほぼ終了することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度においては、ヒト腫瘍進展におけるSrcの意義解明を目指した研究のための実験系の構築を予定していたが、正常組織におけるSrc活性化細胞の挙動のin vitroおよびin vivo解析系、EMTに伴うSrcの発現亢進の解析系、さらに、活性化Srcのエンドソーム系を介する分解制御系など、重要な解析系の確立を終了することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に構築した実験系において既に興味深い現象が幾つか観察されているが、今後はその分子機序解明を目指して解析を進める予定である。特に、正常細胞とSrc活性化細胞との相互作用の分子機構、Src遺伝子の発現制御機構、活性化Srcのエンドソーム系への輸送機構と分解制御機構について詳細な解析を行う。
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Research Products
(9 results)