2015 Fiscal Year Annual Research Report
次世代型CRISPRシステムの構築によるヒト遺伝子機能解明のための基盤技術開発
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15H04319
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
程 久美子 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (50213327)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | バイオテクノロジー / 遺伝子 / 核酸 / ゲノム / RNA / CRISPR |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、CRISPRの改良による次世代型ヒト遺伝子機能解明のための基盤技術の開発を目的とする。CRISPRシステムとは、原核生物の免疫防御システムを利用した新しいゲノム編集法であり、あらゆる生物種に応用可能な画期的技術として注目されている。本研究では、第一世代のCRISPRシステムの問題点を改良することで、第二世代の高精度および高効率のCRISPRシステムの構築を目指す。すなわち、CRISPRの分子機構の解明に基づく、ゲノム編集効率の高いガイドRNA配列の選択法、およびオフターゲット効果を回避できる目的遺伝子特異的なガイドRNA選択法を構築することを中心とし、さらに実用的なオフターゲット効果を回避できる手法を構築する。また、本手法により、従来RNA干渉法での解析が困難とされた遺伝子群のヒト細胞でのノックアウトライブラリも構築する。 CRISPR システムによるゲノム編集法は、開発されてまだ5年程度の手法であり、その特異性や効率には改善すべき点も多く残されている。まず1つは、ゲノム編集効率はガイドRNA配列によって大きく異なり、ガイドRNAによってはほとんどゲノム編集が起こらないものもあることである。さらに、もっとも大きな問題点となるのは、目的のゲノム配列領域以外にも影響を与えてしまう「オフターゲット効果」である。CRISPRシステムは目的のゲノム領域を永久的に改変してしまう方法であるため、オフターゲット効果はかなり重篤なダメージになる場合がある。特に、ヒトで利用するためには倫理的な問題にも注意を払う必要がある。そこで、本研究では、このような問題点を改良し第二世代の特異性の高い実用的なCRISPRシステムの構築を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CRISPR/Cas9システムでは、ガイドとなるRNAが塩基配列の相補性に基づいて認識するゲノム領域をCasエンドヌクレアーゼが切断し、遺伝子を破壊する。本手法は、ガイドRNAとCasタンパク質を導入すれば、どのような生物種でも遺伝子に変異を誘導することが可能な優れた手法として注目されている。しかし、一方で、意図しない抑制効果を示すこともしられており、本手法ではゲノムそのものに変異を誘導するため、そのようなオフターゲット効果を排除することが重要な課題の1つとなっている。オフターゲット効果を軽減し、標的遺伝子特異的なゲノム編集を行うため、多数のレポーター遺伝子を用いた解析を行った。その結果、遺伝子配列や遺伝子上の位置などによって抑制効果に相違がみられるという興味深い結果が見出されている。
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Strategy for Future Research Activity |
オフターゲット効果を軽減し、標的遺伝子特異的なゲノム編集を行うため、多数のレポーター遺伝子を用いた解析を行った。本研究では、野生型のCasタンパク質だけではなく、Casタンパク質のDNA切断活性部位に変異を入れたdCas、さらに、dCasに転写促成作用をもつVP64や抑制作用をもつKRAB遺伝子を不可したタンパク質による抑制作用を検討した。その結果、これらのCasタンパク質は、同じ標的DNA部位に対して異なる抑制作用を示すことがわかった。これは、おそらく、これらのCasタンパク質の作用機序の違いによるものと考えられ,標的とする遺伝子配列や位置などによる抑制効果の相違が見出された。より詳細な解析を行うことにより、それらの特徴を生かして、効率よく特異的に標的遺伝子を編集する手法を構築する。
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Research Products
(22 results)