2015 Fiscal Year Annual Research Report
Comparative study of plant populations using big-data in projection matrix models
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15H04418
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
高田 壮則 北海道大学, 地球環境科学研究院, 教授 (80206755)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大原 雅 北海道大学, 地球環境科学研究院, 教授 (90194274)
金子 有子 東洋大学, 文学部, 准教授 (90280817)
深谷 肇一 統計数理研究所, データ科学研究系, 外来研究員(JSPS特別研究員) (30708798)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 生態学 / ビッグデータ / 推移行列モデル / 個体群統計 |
Outline of Annual Research Achievements |
個体群生態学では、この半世紀の間に生育段階構造をもつ集団の動態を記述する方法として、生活史行列モデルが用いられてきた.約900種の植物にわたる数千個の生活史行列を保有するビッグデータ( C O M P A D R E )が2014 年秋に公開され、オンラインで利用可能となった.そのビッグデータを用いて、集団個体数の年増加率、弾性度行列、平均余命、個体の流れ行列などの個体群統計量の種間横断的研究を行う。まず、年度始めにプロジェクト会議を開催し、今年度の研究計画遂行上の役割分担について詳細な打ち合わせを行った。その結果、解析準備として、 解析に供与する生活史行列の整理・抽出が重要であることがわかった。量が膨大であるため、ポスドクを一名雇用し、計算加工のためのコンピュータープログラムを開発し、能率化を図った。また、今年度は【解析1:過去の弾性度解析の検証】、【解析2:個体群成長率と平均寿命の関係の解析】を行う計画を立てた。 「過去の弾性度解析の検証」では、1990年代に行われた82種の植物の弾性度解析の結果と、C O M P A D R Eに含まれる多数の植物種の結果を比較する。生活史行列の整理・抽出が完了するまでの間、各植物種の弾性度を算出するためのプログラム開発を行った。連携研究者の横溝がこれを担当した。 「個体群成長率と平均寿命の関係の解析」では、やはり生活史行列の整理・抽出が完了するまでの間、個体群成長率および平均寿命を同時に求めることが可能なプログラムを開発した。これは、研究分担者の深谷が担当した。これら二つの解析が終了した時に、実際の生物集団の結果と、ランダムに要素を与えた生活史行列の結果の比較を行うため、「ランダム生活史行列の解析」に着手した。その結果、ランダム行列の弾性度の結果は1990年代に行われた82種の植物の弾性度解析の結果と全く異なることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
プロジェクト研究を円滑かつ機能的に実施するために、年度始めにプロジェクト会議を開催し、今年度の研究計画遂行上の役割分担について詳細な打ち合わせを行った。 解析に供与する生活史行列の整理・抽出が重要であることがわかったため、ポスドクを一名7月までに雇用する予定であったが、生物集団データベースの専門的知識を有する予定の人員が急遽他の機関に就職するため雇用できなくなることがわかり、データの整理・抽出に数ヶ月の遅れが生じた。整理されたデータをもとに行う研究は、【解析1:過去の弾性度解析の検証】、【解析2:個体群成長率と平均寿命の関係の解析】であったのでそれら二つの研究の事前準備を行うことになった。 例えば、「過去の弾性度解析の検証」では、各植物種の弾性度を算出するためのプログラム開発を行い、完了した。また、「個体群成長率と平均寿命の関係の解析」では、個体群成長率および平均寿命を同時に求めることが可能なプログラムを開発した。これら二つの解析が終了した時に、実際の生物集団の結果と、ランダムに要素を与えた生活史行列の結果の比較を行うため、「ランダム生活史行列の解析」に着手した。その結果、ランダム行列の弾性度の結果は1990年代に行われた82種の植物の弾性度解析の結果と全く異なること、弾性度解析の特徴は生活史行列のサイズに大きく依存することがわかった。その成果は、十月にアムステルダムにおいて行われた国際学会で発表され、現在英文論文として国際誌に発表準備中である。 また、植物集団の生活史行列群の一部を公表するためデータベース紹介のホームページを作成した。さらに、当該分野の研究の発展に寄与するため、次年度に札幌市にて行われる個体群生態学会において海外研究者を招聘するシンポジウムを提案し、受理された。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に二回開催した研究打ち合わせ会議の結果に基づいて研究を行う。生活史行列を保有するビッグデータ( C O M P A D R E )の解析を通じて、普遍的な植物の動態特性を明らかにする一方、生活史タイプに依存した種間の相違点解析する予定で研究を進める.残念なことに、ビッグデータベースからのデータ整理・抽出に数カ月の遅れが出たため、その遅れを取り戻すように、プロジェクト会議の開催回数を増やすなどの方策を取りたい。 研究テーマ「個体群成長率と平均寿命の関係の解析」においては、すでに開発されたコンピュータープログラムを用いて、個体群成長率、弾性度、平均寿命を求める。それらの実際の生物集団の結果と、ランダムに要素を与えた生活史行列の結果の比較を行なう。また、約7000個の植物集団の弾性度解析結果と過去の弾性度解析の結果を比較する。繁殖と生存のそれぞれにはコストがかかり、繁殖率の高い生物種の生存率は低いというトレードオフが存在すると考えられているため、個体群成長率と平均寿命の間には負の相関が生じていると予想される.データベースの全種を対象にした場合と、生活史タイプ別にした場合の相関分布を求める。 新しいテーマとして、「外来植物の個体群増加率と導入からの経過時間との関係の解析」も進める予定である。外来植物の個体群増加率を求めた上で、外来植物データベースから割り出された導入からの経過時間との関係を調べる。 さらに、「個体の流れ行列の作成とその可視化」にも着手する。各植物種の個体の流れ行列を算出し、個体の流れ行列の要素の総計が個体群増加率になる性質を利用して、三角錐体上に、各植物種の個体の流れベクトルをプロットする、などの可視化を行う.特に、解析準備で供された生活史行列の中から外来侵入種の行列を選び出し, 外来侵入種に特徴的な個体の流れ行列の性質の有無を解析する。
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Research Products
(4 results)