2016 Fiscal Year Annual Research Report
染色体分断技術とゲノム編集技術の融合による酵母ゲノム工学の新展開
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15H04475
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Research Institution | Sojo University |
Principal Investigator |
原島 俊 崇城大学, 生物生命学部, 教授 (70116086)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浴野 圭輔 崇城大学, 生物生命学部, 准教授 (30310030)
杉山 峰崇 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (80379130)
笹野 佑 大阪大学, 工学研究科, 助教 (90640194)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 酵母 / 育種学 / 応用微生物 / ゲノム / バイオテクノロジー |
Outline of Annual Research Achievements |
従来のPCS技術では成功していなかった染色体複数箇所の同時分断技術を、CRISPR/Cas技術を融合することによって確立し、Nature の姉妹誌であるScientific Reports誌 (2016)に発表することができた. 同様に、従来のPCD技術では成功していなかった染色体2領域の同時削除、および同時重複についても、CRISPR/Cas技術を併用すれば、可能であることを示すことができた.しかし、こうした技術の開発を進める中で、必要な要素技術をもっと簡単にする必要があることを痛感し、本年度は、最も重要な要素技術であるがguide RNA (gRNA) の発現を簡単化することにも取り組んだ.具体的には、様々な部位のgRNAを一過的に発現する(transient expression) DNA断片を、共通の鋳型プラスミドを用いて、PCRによってのみ調製できるシステムの構築を行った.その結果、それぞれの標的配列を含むgRNA断片(断片A)と、それを発現させるSNR52遺伝子のプロモータ部(断片B)を別々のPCRによって調製し、その後、2つの断片を混合し、断片Aと断片Bを融合させるオーバーラップPCRを行うことにより、そうした断片を調製できる「gRNA transient expression system (gRNA-TES)」を構築することができた.そして、gRNA-TESが、従来の方法では困難であった染色体の大規模領域を簡便に削除するのに有効であることを示すことができた. オーバーラップPCR断片から発現するgRNAのレベルがどのようなレベルかは測定していないが、最終的に、期待される染色体構造を持つ形質転換体を取得できるので、適正なレベルで発現しているものと想定される.今後は、さらに効率良く形質転換体が取得できるようにgRNA-TESの最適化を図る予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は本年で2年目を終了したが、その目的は、これまでに申請者らが開発してきた様々なゲノム工学技術(染色体の任意部位の分断(PCS)、任意領域の削除(PCD)および重複(PCDup))に、近年新しく開発されたCRISPR/Casゲノム編集技術を融合し、飛躍的な効率化、簡便化、迅速化により新しい展開を図ろうとするものである.1年目は、CRISPR-PCS技術を確立し、2年目の本年には、その成果を、Nature の姉妹誌であるScientific Reports誌(2016)に発表した.また、2カ所の領域の同時削除(CRISPR-PCD)、同時重複(CRISPR-PCDup)が可能であることを示すこともできた.さらに、従来法では、いわゆるDonor DNAをオーバーラップPCRによって調製する必要があったが、それを標的部位の両側50塩基対の相同配列をプライマーに付けて調製できるように改良した.さらに、これらの技術をハイスループット化する上で最も重要な要素技術は、様々なguide gRNAの発現の簡便化であるが、これを共通の鋳型プラスミドを用いて、PCRだけで調製するユーザーフレンドリーな技術の開発(gRNA-TES:gRNA transient expression system)に成功した(投稿準備中).こうして開発してきた一連のゲノム工学技術は、本研究申請のもととなったNucleic Acids Research誌(2014年)の論文、そして、本研究の1年目の成果としてNature の姉妹誌であるScientific Reports 誌(2015年)に発表した論文、さらに2年目の成果として同じくScientific Reports誌(2016年)に受理された論文と、毎年IFの高い国際誌に発表してきており、進捗状況は計画以上に進展していると言っても良いと自負している.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的は、これまでに申請者らが開発した様々なゲノム工学技術にCRISPR/Casゲノム編集技術を融合し、ゲノム工学技術に新しい展開を図ろうとすることである.特に、ゲノムの多様性を創出するためには、同時に複数の染色体部位、染色体領域の操作を簡便に、そして迅速に行うことが重要である.この観点から、最も重要と思われる技術は、様々なgRNAを、いかに簡便に発現させるかであろう.このことを可能とする為、本年度は、共通のプラスミドを鋳型として、それぞれの標的配列に応じたgRNAを一過的に発現させるDNA断片を、PCRによってだけ調製する技術(gRNA-TES)を開発した.今後の研究方針としては、実験1)このgRNA-TESのさらなる最適化を図ること.その後、実験2)この技術がどれほど有効かを同一細胞内で一度に多種のgRNAを発現させ、同時に複数の遺伝子を種々の組み合せで破壊できるライブラリーの構築が可能かどうかで検証すること、そして、実験3)従来の技術では困難な、大規模領域の削除がどれほど効率良くできるかを検証すること、そして、削除可能な大きさに応じて、ゲノムワイドに大規模領域の削除を行い、それらsegmental deletion 株の表現型を解析すること、実験4)以前の研究で発見した未知の合成致死遺伝子を含む領域を対象として、gRNA-TESを応用し、様々な組み合せの削除を、one-stepの形質転換で作出し、合成致死に責任のある遺伝子ペアを迅速に同定することを通して、gRNA-TESの有効性を検証することを目指す.
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Research Products
(13 results)