2016 Fiscal Year Annual Research Report
実用植物が作る志賀毒素特異的分泌型IgA植物抗体の毒素中和作用と安全性の研究
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15H04660
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
今井 康之 静岡県立大学, 薬学部, 教授 (80160034)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
黒羽子 孝太 静岡県立大学, 薬学部, 講師 (90333525)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 微生物 / 粘膜免疫 / 抗体医薬 / 免疫グロブリンA / 植物発現系 |
Outline of Annual Research Achievements |
今後有用性が期待できる植物を用いた抗体医薬の製造(植物抗体)の技術基盤の確立、および有用性と安全性の研究を目的として研究を行なった。具体的には、腸管出血性大腸菌や赤痢菌が産生する志賀毒素(Stx1)に対して、組換え型IgA抗体を作製し、分泌型IgAとして植物に発現させた。植物に発現させた分泌型IgAがStx1の毒性を中和できることを証明した。分泌型IgAを構成するH鎖、L鎖、J鎖、分泌片 (SC)という4種類の異なるポリペプチド鎖を同時に発現するシロイヌナズナを作製した。平成27年度に確立したヒト大腸上皮細胞(Caco-2)を標的としたin vitro評価系を用い、Stx1による細胞傷害およびアポトーシス誘導を植物抗体が中和することを明らかにし、原著論文として発表した。in vivo評価系として、Stx1をマウス直腸経由で暴露し、大腸上皮細胞の一過性傷害を検出する実験系を開発した。一方、実用植物であるレタスの葉においても分泌型IgAの産生を確認しているが、in vivoでの評価のためには、さらに発現量の向上が必要である。そこで、植物におけるコドン最適化および小胞体での保留性を考慮した新たなコンストラクトの作製を実施し、完成に近づいている。一方、安全性研究のモデル実験に用いるため、小胞体保留シグナルであるKDEL配列を付加した分泌片単独発現シロイヌナズナを確立した。これにより、KDEL付加が植物での発現量の向上に有用であることが確認できた。植物由来の分泌片を、塩析およびイオン交換で精製する方法を確立し、植物由来biologicsモデルとして、マウスを用いた安全性研究に活用できるようになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Stx1がヒト大腸上皮細胞Caco-2に細胞死を誘導し、アポトーシスを引き起こすことをDNAの断片化を用いて示した。モデル植物であるシロイヌナズナに発現させたStx1特異的分泌型IgA抗体が、Caco-2細胞の細胞死、アポトーシス誘導を阻害することを証明し、原著論文として発表した。小胞体保留シグナルおよび植物でのコドン最適化を行なった人工遺伝子を取得し、クロロフィル結合タンパク質a/bのプロモーターを用いて4種類の遺伝子を一括して発現させるコンストラクトの作製がほぼ完成段階に近づいている。シロイヌナズナに小胞体保留シグナルを付加した分泌片遺伝子を単独発現させ、分泌片を精製する方法を確立した。この分泌片をマウスに投与し、植物由来biologicsに対する抗体産生の有無を評価する実験を開始している。マウス大腸内にStx1を投与する実験を開始し、組織学的な評価をすすめつつある。トマトについては、人工遺伝子発現コンストラクトの完成をふまえて、実験を開始する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
植物での発現のためのコドン最適化および小胞体保留シグナルの付加を行なった、分泌型IgA発現コンストラクトを完成させる。アグロバクテリウム法によりシロイヌナズナにて分泌型IgAを発現させる。同じコンストラクトを用いて、実用植物レタスでの発現を行なう。さらに、実用植物トマトにおいても分泌型IgAが発現できるかどうかを確かめる。植物で発現させたStx1特異的分泌型IgAを用いて、ヒト大腸上皮細胞に対するStx1の毒性中和活性を評価する。さらに、マウスを用いてStx1による一過性の大腸上皮の傷害を観察し、大腸上皮細胞に対するStx1による直接的な細胞傷害機構の解明をすすめる。それとともに、in vivoにおいて植物抗体による毒素中和効果を評価する。安全性研究としては、精製が可能となった分泌片をモデルとし、マウスへの経口投与および静脈内投与を比較しつつ、経口投与においては植物由来biologicsに対する抗体産生などの副反応の問題が生じないことを実証する。
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Research Products
(7 results)