2016 Fiscal Year Annual Research Report
薬物誘発性不整脈に関する機能解析および発症予測へ向けた統合的評価法の構築
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15H04684
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
黒川 洵子 静岡県立大学, 薬学部, 教授 (40396982)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
児玉 昌美 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 日本学術振興会特別研究員 (30512248)
諫田 泰成 国立医薬品食品衛生研究所, 薬理部, 室長 (70510387)
芦原 貴司 滋賀医科大学, 医学部, 助教 (80396259)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 心臓安全性 / ヒトiPS細胞 / 画像処理 / 抗がん剤 / 不整脈 / インシリコモデル / イオンチャネル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、突然死に代表される重篤な医薬品副作用の予防を長期目標とし、ヒトiPS細胞とコンピューターシミュレーションを統合したアプローチにより、心毒性を予測する新たな方法を構築することを目的とする。 昨年度までに、内向き整流性カリウムチャネル (IK1) の機能が成体心室筋モデルと比較して約1割程度であることを示し、IK1をコードするKCNJ2遺伝子を市販ヒトiPS細胞由来心筋細胞に導入し、薬物評価系を構築した。また慢性の薬剤作用を調べるための非侵襲的実験系の構築も開始した。 本年度は、IK1チャネル以外の電流成分として、Naチャネル電流、Caチャネル電流、Ifチャネル電流の測定を行い、得られた電流値をシミュレーションモデルに組み込んだ。IKs電流とhERG電流は通常の生理的条件では他のイオン電流と分離することが困難であったため、外液のカリウム濃度を細胞内と同等にすることでカリウム平衡電位をゼロにして、いくつかの陽イオン電流を不活化し脱分極刺激も小さくすることで、各電流成分を単離することに成功した。これらのカリウムチャネルの電流値は薬物反応に大きく影響するので、次年度にデータの例数を追加し、値を決定することを予定している。また、薬物誘発性不整脈の発症性差に関連する国際共同研究をの論文が受理された。KCNJ2に関する論文はリバイス中である。 今年度は、一部の抗がん剤のように心収縮機能に対して慢性作用を有する薬剤の評価を見据えて、動きベクトル解析法の開発を更に進めた。8日間、ヒトiPS細胞由来心筋細胞シートの収縮機能を安定的に継続することに成功し、日本安全性薬理研究会および国際安全性薬理学会にてポスター発表を行った。また、自動培地交換システムにつながる技術の開発を進める研究の結果を利用することで、心肥大シグナル等の病態心筋における筋収縮の機能変化についてもパラメーターを取得する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、ヒトiPS細胞とコンピューターシミュレーションを統合したアプローチにより、心毒性を予測する新たな方法を構築することである点を鑑み、当該年度は下記2点が進展したと言える。 1点目は、カリウムチャネル定量測定の方法を開発した点である。ヒトiPS細胞由来心筋細胞のモデル構築において、小さいコンダクタンスのカリウムチャネル電流値を求めることは、困難かつ重要な課題であった。当該年度は、その為に細胞外液のカリウムイオン濃度を細胞内液と同等にすることで、平衡電位をゼロ付近にして、少ない電位刺激で電流を活性化できるようにした。この条件であると、リーク電流のコンタミネーションが減るため、電流成分を単離するのに有利である。この溶液条件で特異的阻害剤に感受性の電流成分を単離できる電位パルス条件を特定することが出来たことが今年度の成果である。この実験系を構築するに当たって、当初の予定通り、モルモット心室筋細胞の値と比較する事に加えて、ヒト心筋から得られたtotalRNAでのチャネル関連遺伝子の発現レベルも参考にした。 2点目としては、心収縮機能を長期間安定的に測定する方法を構築した。ヒトiPS由来心筋細胞の維持のためには、細胞外の培地を2日に1回、半量を置換する。その前後で、筋収縮力が落ちることを見いだした。そこで、37度蓄熱材の上で培地交換をするなど、工夫を凝らすことにより、8日間、収縮力が全く減弱しない条件を見つけることに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度以降の予定を下記に記す。 ヒトiPS細胞由来心筋細胞の活動電位シミュレーションの構築については、カリウムチャネル電流成分の値を決定して、導入することを目指す。さらに精度の高いモデルを構築するために、新たな実験系の構築もする。シミュレーションの観点から、細胞内の陽イオン濃度が決定しないことが、モデルの安定性を損なう大きな原因であることが分かってきた。そこで、本年度は細胞内のカルシウム動態の解析を中心に、細胞内イオン環境の定量を行う実験系の構築にも着手する。また、細胞のサイズや形状もシミュレーション結果に影響することが分かってきたので、この観点についてもウェット実験による細胞容量の測定や3D細胞イメージ構築およびドライ実験による3Dシミュレーションなどから検討していく。 収縮機能を長期間に測定する方法を使用して、抗がん剤ドキソルビシンの心毒性などの効果を検討する。インスリンシグナルがアントラサイクリン系抗がん剤の心毒性に保護効果があるという報告を再現することが出来るか検討する共に、その分子メカニズムについても検討する。
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Research Products
(36 results)
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[Journal Article] A multiscale computational modeling approach predicts mechanisms of female sex risk in the setting of arousal-induced arrhythmias.2017
Author(s)
Yang PC, Perissinotti L, Lopez-Redondo F, Wang Y, DeMarco KR, Jeng MT, Vorobyov I, Harvey RD, Kurokawa J, Noskov S, Clancy CE
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Journal Title
J Physiol (Lond.)
Volume: 印刷中
Pages: 印刷中
Peer Reviewed / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] Sall1 transiently marks undifferentiated heart precursors and regulates their fate.2016
Author(s)
Morita Y, Andersen P, Hotta A, Sasagawa N, Kurokawa J, Tsukahara Y, Hayashida N, Koga C, Nishikawa M, Evans SM, Furukawa T, Koshiba-Takeuchi K, Nishinakamura R, Yoshida Y, Kwon C, Takeuchi JK
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Journal Title
J Mol Cell Cardiol.
Volume: 92
Pages: 158-162
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Embryonic type Na+ 1 channel β-subunit, SCN3B masks the disease phenotype of Brugada 2 syndrome.2016
Author(s)
Okata S, Yuasa S, Suzuki T, Ito S, Makita N, Yoshida T, Lin M, Kurokawa J, Seki T, Egashira T, Aizawa Y, Kodaira M, Motoda C, Yozu G, Shimojima Masaya, Hayashiji N, Hashimoto H, Kuroda Y, Tanaka A, Murata M, Aiba T, Shimizu W, Horie M, Kamiya K, Furukawa T, Fukuda K
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Journal Title
Sci Rep
Volume: 6
Pages: 34198
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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