2017 Fiscal Year Annual Research Report
ナルコレプシーの感受性遺伝子の探索及び個別化治療への応用
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15H04709
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
宮川 卓 公益財団法人東京都医学総合研究所, 精神行動医学研究分野, 主席研究員 (20512263)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
徳永 勝士 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 教授 (40163977)
豊田 裕美 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 客員研究員 (90637448) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ゲノム / 遺伝学 / ゲノムワイド関連解析 / ナルコレプシー / 中枢性過眠症 / アシルカルニチン |
Outline of Annual Research Achievements |
ナルコレプシーを対象としたゲノムワイドメチル化解析を実施した。さらにそのデータとナルコレプシーのゲノムワイド関連解析を統合した解析を行い、ナルコレプシーの新規感受性遺伝子としてCCR3遺伝子を同定した。平成29年度から特発性過眠症の研究も開始した。特発性過眠症は長時間にわたる睡眠エピソードが出現し、日中に強い眠気を感じ、総睡眠時間が11時間以上となる特に重症な中枢性過眠症である。その病態及び原因が解明されていないため、治療法が確立しておらず、対症療法に用いられる薬剤は副作用が多いことが問題となっている。そこで、特発性過眠症の遺伝要因を探索するために、ゲノムワイド関連解析を実施した。ゲノムワイド有意な一塩基多型(SNP)は同定されなかったが、疾患関連候補SNPを抽出した。平成28年度までの研究で、ナルコレプシーと真性過眠症を含む中枢性過眠症のゲノムワイド関連解析によりCRAT遺伝子の近傍のSNP(rs10988217)が真性過眠症とゲノムワイドレベルで有意な関連を示すことを見出している。発現解析及びメタボローム解析の結果を統合的に解析した結果、rs10988217遺伝子型は血中スクシニルカルニチン濃度ともゲノムワイドレベルで有意な関連を示すことがわかった。上記のようなSNPだけでなく、頻度の低い変異も睡眠障害に関わる可能性が高いと考えている。平成28年度までに、PER2遺伝子上に頻度が低く、アミノ酸置換を伴う疾患関連の候補変異(p.Val1205Met)を見出している。そこで、実際に睡眠障害と関連するか検討した結果、当該変異が睡眠相後退症候群及び特発性過眠症と有意な関連を示すことを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ナルコレプシー患者26例、健常者20例を対象として末梢血から抽出したDNAを用いて、ゲノムワイドメチル化解析を行った。そのデータに、ナルコレプシーのゲノムワイド関連解析のデータ、さらにmeQTLの情報を用いた統合解析を実施し、新規感受性遺伝子としてCCR3遺伝子を同定した。特発性過眠症の遺伝要因を同定するために、特発性過眠症患者120例、健常者1791例を対象にゲノムワイド関連解析を実施した。統計解析の結果に影響を与えるデータを取り除くためにフィルタリングを行い、その後解析を行った。Imputationも行ったが、この時点ではゲノムワイド有意なSNPはなかった。そこで、疾患関連候補SNPとして48個を抽出し、これらを再現性研究用のサンプルセットで関連解析を実施することとした。中枢性過眠症のゲノムワイド関連解析の結果から、CRAT遺伝子が真性過眠症の感受性遺伝子であることが示唆された。CRATはミトコンドリア内のアシルCoA/CoA 比の調整に関わる代謝経路上の酵素である。そこで発現解析を実施し、rs10988217遺伝子型とCRAT遺伝子のmRNA発現量がゲノムワイドレベルで有意に相関することを確認した。次に、rs10988217が健常者のメタボローム解析の結果と関連を示すか確認し、rs10988217遺伝子型は血中スクシニルカルニチン濃度とゲノムワイドレベルで有意な関連を示すことがわかった。興味深いことに本領域で最も強い関連を示すSNPが、真性過眠症とスクシニルカルニチン解析で同じrs10988217であった。PER2遺伝子上の頻度が低く、アミノ酸置換を伴う変異が、睡眠相後退症候群、特発性過眠症、ナルコレプシー、真性過眠症と関連するか検討するために、関連解析を実施した。その結果、当該変異が睡眠相後退症候群及び特発性過眠症と有意な関連を示すことを見出した。
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Strategy for Future Research Activity |
特発性過眠症のゲノムワイド関連解析により抽出された候補となる48個のSNPに関しては、ゲノムワイド関連解析に用いたサンプルセットとは異なる特発性過眠症患者187例、健常者2049例を対象に関連解析(再現性研究)を実施する。これにより、真に特発性過眠症と関連するSNPが同定できるものと期待される。SNPのタイピング方法としては、DigiTag2法及びTaqman法を用いる。ナルコレプシーのメチル化解析に関しては、これまでは末梢血由来のDNAを用いていた。今後、疾患部位である脳のサンプルを用いてメチル化解析を実施する予定である。睡眠と関連があると、想定されなかったスクシニルカルニチンが真性過眠症の原因になる可能性がある。そこで実際に真性過眠症患者及び健常者の血液を用いて、スクシニルカルニチンを測定し、両群に濃度の差が認められるか検討する。測定方法として、LC-MS/MS法を用いる。この結果から真性過眠症の病態にエネルギー代謝経路の異常が関わることが証明できるものと考える。睡眠相後退症候群及び特発性過眠症とPER2遺伝子に関しては、前述の変異以外にも疾患と関連する変異が存在する可能性が考えられる。そこで、両疾患を対象にPER2遺伝子の主にエクソン領域のリシークエンスを実施する必要がある。その後、検出されたアミノ酸置換を伴う変異を対象に関連解析を実施する。また、頻度が低い変異を対象に含むことから、単点の関連解析では統計上の有意差を見出せない可能性もある。そこで、全体の変異数が疾患群で多いか検討するBurden解析も実施する。
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Research Products
(11 results)
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[Presentation] A genetic variant in CRAT is associated with HLA-DQB1*06:02 negative essential hypersomnia2017
Author(s)
Miyagawa T, Khor SS, Toyoda H, Shimada M, Kojima H, Futagami T, Yamasaki M, Saji H, Mishima K, Honda Y, Honda M, Tokunaga K
Organizer
World Sleep 2017
Int'l Joint Research
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