2016 Fiscal Year Annual Research Report
心血管系の発生・形態形成に働くシグナル伝達機構の研究
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15H04883
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Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
中川 修 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 部長 (40283593)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡邉 裕介 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 室長 (20562333)
片山 由美 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 流動研究員 (20570675)
深山 俊治 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 流動研究員 (60779304)
久光 隆 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 室長 (50327946)
岩田 裕子 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 室長 (80171908)
西谷 友重 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 室長 (50393244)
山岸 敬幸 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 准教授 (40255500)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 心血管発生・形態形成 / 先天性心疾患 / シグナル伝達 / 転写調節因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
心血管発生・形態形成は多様な情報伝達系・遺伝子発現調節機構によって制御されており、ヒト先天性心疾患の病因として転写調節因子やシグナル伝達因子の変異や機能異常が重要である。 これまでに私達は、Notch情報伝達系およびALK1情報伝達系の下流ターゲット因子であるHrt/Hey転写調節因子ファミリーを同定し、Hrt/Heyが心血管系の分化・形態形成に必須の役割を有することを報告してきた。これらの情報伝達系は複数のヒト心血管疾患の病因・病態に深く関与しており、Hrt/Heyファミリーの病態生理的意義についても注目されている。今回の研究では、3種類のファミリー遺伝子のうち、特にHrt1/Hey1に注目し、conditionalノックアウトマウスなどの新しいモデルマウスと新しい分子生物学的手法を組み合わせ、心血管発生におけるHrt1/Hey1機能の細胞特異性、下流遺伝子群を介した心血管細胞機能制御メカニズムを明らかにすることを目的としている。平成28年度までにHrt1/Hey1ノックアウトマウスにおいて大動脈弓離断症などの大血管形成異常が生ずることを報告する論文発表を行い、 Hrt1/Hey1欠損による異常を引き起こす組織・細胞特異的分子機構を明らかにするためにconditionalノックアウトマウス作出などを行っている。一方、私達は近年ALK1情報伝達系下流の新しい胎生期血管内皮遺伝子Tmem100に関する研究を行っているが、今回の研究ではTmem100の心臓形態形成における必要性を検討する計画である。平成28年度までに心内膜内皮細胞特異的なTmem100欠損モデルマウスを作成し、心臓形態異常が生ずるか解析を進めている。 今後もこれらの研究を進めることによって、Hrt1/Hey1やTmem100の心血管系の発生・形態形成における意義を明らかにすることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度において、Hrt1/Hey1遺伝子のconditionalノックアウトマウス解析のために新しいfloxed遺伝子座を有するマウス系統の作成に成功した。その後様々なCre酵素発現マウス系統との交配を行っており、平成29年度中には組織特異的Hrt1/Hey1欠損マウスの表現型解析を行うことができると考えている。また、CRISPR/Cas9遺伝子編集法などを用いて、マウス胎仔心血管系において発現するHrt/Heyファミリー分子のタグ検出系の作成を試みている。一方、Tmem100遺伝子に関して、心内膜内皮細胞特異的欠損マウスを作成し、胎生期の心臓形態異常が生ずるか解析を進めている。これらの実験はいずれも長期間にわたるものであるが、概ね計画通り研究が進行していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに作成したHrt1/Hey1 floxedマウスと組織特異的Cre酵素発現マウスの交配により、平成29年度中には組織特異的Hrt1/Hey1欠損マウスの表現型解析を行うことを試みる。特に、血管内皮細胞におけるHrt1/Hey1の意義と機能メカニズムに注目している。Hrt1/Hey1が血管形成期において果たす機能の細胞特異性を明らかにするとともに、他のファミリー遺伝子と比較した特異的機能・相補的機能の詳細についても研究を進めたい。また、Hrt1/Hey1のタグ標識型へのマウス遺伝子編集を進める計画であるが、マウス胎仔において安定した検出が可能なタグシステムの選定を行う必要があると考えている。Tmem100に関する研究について、心内膜内皮における機能と心臓形態形成に対する意義を解析するとともに、心内膜内皮の分化に重要とされる細胞内カルシウムシグナリングとの機能的連関について明らかにするため、TRPチャネルとの相互作用の可能性を検証する計画である。
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