2015 Fiscal Year Annual Research Report
GSK3β経路を標的とする大腸がんの病態解明と治療法開発の基盤形成
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15H04928
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
源 利成 金沢大学, がん進展制御研究所, 教授 (50239323)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮下 知治 金沢大学, 医学系, 助教 (30397210)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 大腸がん / 病態 / 治療 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は,糖尿病やアルツハイマー病などの創薬標的として注目されているGSK3βが,これらの疾患とともに「がん促進的に作用する治療標的」であることを発見した.本研究は,GSK3βと大腸がんの悪性形質に関する分子病態をがんの代謝特性やmicro-RNAなどの視点から明らかにする.それに基づいて,臨床応用を視野に入れたシード化合物とアンチセンスオリゴ核酸のがん治療効果を検討するとともに,新規GSK3β阻害剤の同定のため化合物スクリーニング法を考案する.これにより,GSK3βを標的とする大腸がんの病態解明と治療法開発の基盤形成を目的とする. 本年度はまず,50数例の大腸がん組織におけるGSK3βと3種類のGSK3β制御性micro-RNAの発現を比較解析し,GSK3β発現亢進の一因としてこれらのmicro-RNAの発現低下であることを見いだした.腫瘍におけるGSK3β発現はおよそ70%のがん症例で亢進していたが,臨床病理学的諸因子との相関は認められなかった.がん代謝におけるGSK3βの機能解析のため,正常細胞とがん細胞のGSK3β活性を阻害し,解糖経路と酸化的リン酸化(TCA)回路における個々の中間代謝産物量の変化を比較解析した.その結果,GSK3β阻害により正常細胞の代謝は変化しなかった.一方,がん細胞では解糖系の抑制とTCA回路の賦活化に相当する代謝産物の変化が観察された.このことから,GSK3β阻害により両代謝経路の岐点を調節するピルビン酸脱水素酵素(PDH)の活性が回復することが示唆された.当初予定していたGSK3β阻害剤シード化合物の授受とアンチセンスオリゴ核酸の設計,合成は下記の理由により期間内に進められなかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究代表者の予期せぬ私的事情のため,GSK3β阻害剤シード化合物の供与とアンチセンスオリゴ核酸の設計,合成について,それぞれ国内製薬企業TM社と東工大連携研究者との効率的な連携を進められなかった.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度の研究を開始してできるだけ早い時期に,国内製薬企業TM社および東工大連携研究者とそれぞれ協議し,GSK3β阻害剤シード化合物の供与とアンチセンスオリゴ核酸の設計,合成の見通しについて再検討する.
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