2018 Fiscal Year Annual Research Report
院外心停止例の救命に寄与する要因の多面的分析と治療ストラテジの構築に関する研究
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15H05006
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
石見 拓 京都大学, 環境安全保健機構, 教授 (60437291)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川村 孝 京都大学, 環境安全保健機構, 教授 (10252230)
嶋津 岳士 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (50196474)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 院外心停止 / 救急蘇生学 / 心臓突然死 / 集中治療 / 心肺蘇生 / 病院前救急医療 / 心停止後症候群 / 治療体制 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、研究者らが先行研究で開始した、搬送先医療機関の治療体制、低体温療法などの集中治療に関するデータの集積を更に進めるとともに、従来評価が困難であった救急隊員が行う『心肺蘇生の質』も含めて、院外心停止例の救命に寄与すると思われる要因を包括して前向きに登録する仕組みを構築するとともに、多面的に分析し、院外心停止の社会復帰率を向上させるための治療ストラテジ、地域の救急医療体制を検討し、提案することを目的とする。 平成30年度は前年度に引き続き病院到着後の集中治療に関するデータを前向きに登録・分析し、研究分担者・協力者との研究会議を概ね月1回のペースで定期的に開催した。平成28年12月までの9,822例(前年度時点では7,373例)の症例についてデータを確定し、解析テーマの検討を進めている。 研究論文として、血清アルブミンと院外心停止後の社会復帰の関係について国際誌に報告を行った。更に、体温管理療法における目標温度と院外心停止後の転帰との関連について蘇生領域の国際雑誌であるResuscitation誌に報告した。米国心臓協会 (AHA) 年次学術集会において、高酸素暴露が院外心停止患者の生存と関連すること、高カリウム血症が院外心停止患者の転帰と関連することを示した。日本救急医学会総会・学術集会では、高齢の院外心停止患者の実態、転帰について示すとともに、院外心停止患者における二酸化炭素分圧の影響についても報告した。 大阪府内の複数の消防機関(枚方市・寝屋川市、吹田市、箕面市・豊能町)と共同で、救急隊員が行う『心肺蘇生の質』に関わるデータを収集するコホート研究についてもデータ登録を進めている。本研究では、救急隊が蘇生処置を行った全ての院外心停止症例を対象としている。平成29年2月から症例登録を開始し、平成31年3月末時点で、1560例の症例を登録した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究体制を更に発展させ、大阪府内の全救命救急センターを含む14施設からなる研究体制を構築し、研究を継続している。研究分担者・協力者との研究会議を概ね月1回のペースで定期的に開催し、データの継続的な収集、質の維持を図ると共に、現場の課題意識に基づいた解析テーマの選定を実現している。平成31年3月末時点で、平成28年12月までの9,822例(前年度時点では7,373例)の症例についてデータの確定を完了し、研究は順調に推移している。 研究成果も順調に増加しており、体温管理療法における目標温度と院外心停止後の転帰との関連について蘇生領域の国際雑誌であるResuscitation誌に報告した。更に、血清アルブミンと院外心停止後の社会復帰の関係についても国際誌に報告を行った。米国心臓協会 (AHA) 年次学術集会において、高酸素暴露が院外心停止患者の生存と関連すること、高カリウム血症が院外心停止患者の転帰と関連することを示したほか、日本救急医学会総会・学術集会では、高齢の院外心停止患者の実態、転帰について示すとともに、院外心停止患者における二酸化炭素分圧の影響についても報告するなど、解析、報告数も増加している。 心肺蘇生の質に関わるデータについては、協力消防機関に導入する除細動器に付属する加速度センサーで自動的に記録、収集し、データマネージャーがデータクリーニング後、研究者がダブルチェックしたうえで現場に還元する体制を構築した。平成29年2月から本登録開始しているが、平成31年3 月末時点で、1560例の症例を登録しており、順調に症例集積が進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
病院前蘇生記録、医療機関での低体温療法等の集中治療等の記録については、年間2000症例を超える症例集積を実現しており、引き続き症例の蓄積を進めるとともに、現在参加している救命救急センター以外にも救急受け入れ機関の参加を呼び掛けていく。研究分担者・協力者、参加施設との打ち合わせを定期的に開催し、研究の質向上を図るとともに、集積されたデータの解析、国内・国際学会での発表、論文作成を進める。 解析テーマとしては、研究班員から提案のあった「膜型体外式人工肺を用いた蘇生開始時間と転帰との関連」「膜型体外式人工肺を用いた蘇生開始前の血液ガス結果と転帰との関連」「心肺蘇生中における乳酸値の意義」などの研究テーマについて解析を進めていく。最終年度に当たる令和元(平成31)年度は、これまでの分析結果を統合し、現時点で考え得る包括的な予後予測式の完成と論文投稿を目指す。合わせて、世界各地で院外心停止に関わるレジストリ研究を進める研究チームと意見交換を進め、PROM(patient related outcome measure)や集学的治療に向けた予後予測に必要な項目など、次なる課題設定と解決のための新規レジストリに求められる項目について検討を重ね、次期多施設共同院外心停止レジストリ構築に向けた準備を進める。 心肺蘇生の質データの収集については、研究への参加を協議中の消防機関(札幌市、高崎市)からの登録開始を目標とする。引き続き、研究事務局、データマネージャーがデータの質を維持するとともに、米国 アリゾナ大学の研究者等とミーティング(ウェブ会議を含む)を行うなどして、研究の質の向上に努める。十分な症例数が確保できた段階で、心肺蘇生の質のデータに基づくフィードバック、院外心停止例の状況別の搬送先選定基準等、院外心停止症例に対する包括的治療ストラテジの検討を進めることが可能となるよう基盤構築を進める。
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Research Products
(9 results)
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[Journal Article] Prognostic Impact of Serum Albumin Concentration for Neurologically.2018
Author(s)
Matsuyama T., Iwami T., Yamada T., Hayakawa K., Yoshiya K., IrisawaT., Abe Y., Nishimura T., Uejima T., Ohishi Y., Kiguchi T., Kishi M., Kishimoto M., Nakao S., Hayashi Y., Sogabe T., Morooka T., Izawa J., Shimamoto T., et.al., Shimazu T., and Kitamura T..; on behalf of the CRITICAL Study Group Investigators
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Journal Title
Therapeutic Hypothermia and Temperature Management
Volume: Vol. 8, No. 3
Pages: 165-172
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] The effect of different target temperatures in targeted temperature management on neurologically favorable outcome after out-of-hospital cardiac arrest: A nationwide multicenter observational study in Japan (the JAAM-OHCA registry).2018
Author(s)
Irisawa T, Matsuyama T, Iwami T, Yamada T, Hayakawa K, Yoshiya K, Noguchi K, Nishimura T, Uejima T, Yagi Y, Kiguchi T, Kishimoto M, Matsuura M, Hayashi Y, Sogabe T, Morooka T, Kitamura T, Shimazu T; CRITICAL Study investigators.
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Journal Title
Resuscitation.
Volume: 133
Pages: 82-87
DOI
Peer Reviewed
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