2015 Fiscal Year Annual Research Report
歯内疾患の再生治療剤としての再生3要素球状複合体の有用性
Project/Area Number |
15H05022
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
柴 秀樹 広島大学, 医歯薬保健学研究院(歯), 教授 (60260668)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 茂樹 広島大学, 医歯薬保健学研究院(歯), 助教 (30549762)
永安 慎太郎 広島大学, 医歯薬保健学研究院(歯), 助教 (60635192)
本山 直世 広島大学, 医歯薬保健学研究院(歯), 助教 (70509661)
小武家 誠司 広島大学, 医歯薬保健学研究院(歯), 助教 (50744794)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | LL37 / 間葉系幹細胞 / 細胞外基質 / 歯内治療学 / 歯内疾患再生治療剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
骨髄間葉系幹細胞やヒト歯髄組織由来未分化間葉系細胞にとって最適な足場や調節因子を整え、各間葉系幹細胞(MSC)が機能を十分に発揮できる環境を創出できれば、歯髄・象牙質および根尖部歯周組織の再生を伴う再生療法の開発は可能になりうる。本研究の目的は、間葉系幹細胞が産生した細胞外基質(ECM)(足場)と血管新生能を有する抗菌ペプチドLL37(調節因子)という、間葉系幹細胞の機能発現を支える環境因子と、間葉系幹細胞で構成される再生3要素球場複合体の歯内療法域の組織再生における有用性を検討することである。 LL37を調節因子として用いるために、まずin vitroにおいてその濃度依存的な細胞刺激活性について検討を行った。歯髄細胞および口腔扁平上癌細胞を様々な濃度のLL37で刺激すると5 micro-g/mlまでは細胞の生存に影響を与えなかったが、10 micro-g/ml以上では濃度依存的な細胞増殖抑制を認めた。LL37は細菌に取り込まれることによってその細胞死を誘導することで抗菌活性を示すが、真核細胞においても高い濃度ではその増殖に影響を与えることから、将来的に組織再生に用いる際にはその濃度が重要であることが示唆された。また、培養ヒト歯髄細胞を6または12日間、LL37存在下で培養すると、培養開始6日後においてLL37(5 micro-g/ml)刺激群では硬組織分化マーカーであるオステオカルシン遺伝子の発現が無刺激群と比較して有意に上昇した。一方で高濃度のLL37(15 micro-g/ml)で刺激した群では培養開始6、12日後において無刺激群と比較して、オステオカルシン遺伝子の発現が有意に減少した。これら結果からLL37は細胞増殖のみならず、硬組織分化誘導能においてもその刺激濃度依存的に活性が惹起されることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
計画全体の中で平成27年度においては、LL37が間葉系幹細胞の機能に及ぼす影響の検討ならびに、再生3要素球状複合体の作製・利用を予定していた。LL37の活性については詳細な検討を行ったが、球状複合体を用いた動物実験については現在条件の再検討中であり、広範囲根尖部歯周組織欠損への利用を行えていないため。
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Strategy for Future Research Activity |
in vitroにおいてECMとLL37による間葉系幹細胞機能発現メカニズムの解明を行う。 平成27年度の実績の通り、LL37による細胞刺激に関しては増殖・分化においてその濃度が重要であることが判明した。そこで、投与後の濃度コントロールが困難である外来性投与のみならず、内在性に発現するLL37の発現を能動的に誘導することで、効果的な局所濃度を維持するための分子基盤についても検討を行っていく予定である。具体的には、LL37の組織治癒および再生における炎症制御については十分に明らかとなっていないので、ヒト歯髄細胞のみならず、内在的にLL37およびその遺伝子であるCAP-18を発現する上皮系細胞も並行して利用し、種々の増殖因子および炎症性サイトカイン刺激がこれら細胞でのCAP-18ならびにLL37発現に及ぼす影響ついて検討する。
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