2015 Fiscal Year Annual Research Report
強塩基性・高アルカリ度な巨大閉鎖性塩湖、トルコ・ワン湖の特徴的陸水科学過程
Project/Area Number |
15H05114
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
杉山 雅人 京都大学, 人間・環境学研究科(研究院), 教授 (10179179)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ワン湖 / 強塩基性 / 高アルカリ度 / 塩湖 / 生物地球化学過程 / 人工湖水 / サーミスタ・チェーン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、トルコ東部に位置し強塩基性と異常に高いアルカリ度を示す塩湖であるワン湖において、物理学・化学・生物学にわたる湖の特徴的陸水科学過程を解明し、同湖の保全に資する知見を得ることにある。 本年度は研究第一年度であるために、まずはトルコ側共同研究者との間での共同研究覚書の策定を行った。このため平成27年9月20日から26日にかけてトルコ・マラティアに渡航し、Inonu大学Tolga Depci准教授、Yuzunc Yil大学Tijen Uner准教授との間で覚書について議論し、第一次案を得た。帰国後、電子メールでの議論を行って最終案を作成した。 平成28年3月26日から31日にかけてトルコ・ワンに渡航した。トルコ側研究者との間で覚書に調印した。ワン湖3地点、流入河川1地点において物理学・化学・生物学の総合調査を行った。サーミスタ・チェーンを湖に繋留して、鉛直方向における水温変動の長期連続観測を開始した。このサーミスタ・チェーンは平成28年9月に回収の予定であり、回収後データの取得を行って、再び繋留を計画している。化学・生物学調査のために、湖水・河川水の採取、ならびに一般的水質項目(水温、電気伝導度、溶存酸素濃度、pH)の現場観測を行った。予想通り、pHは高い値にあって、9.6を超えていた。湖水・河川水試料については、日本に持ち帰って、現在、分析中である。 湖水の蒸発濃縮実験を行うための予備研究として、人工湖水の作成法について検討した。塩湖にも応用できる人工湖水・河川水調製法を創案した。この成果を、"Method for the preparation of artificial lake and river waters"と題した論文としてLimnology and Oceanography: Methods誌に投稿し、受理された。その電子版が公表された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
共同研究覚書の策定に時間を要したため、当初の総合調査が夏季には行えず、平成28年の3月に最初の調査を行うことになった。また、ワン湖はシリア・イラク国境から約100 kmしか離れていないこと、トルコのイスタンブールとアンカラでテロが複数回あったこと、トルコへのシリア難民などの大量流入があったこと、などによりトルコ国内治安の悪化が懸念されたため、渡航に慎重を期したことも、研究の遅れの一つの理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は8月と9月の2回にワン湖に赴く予定である。このことについてはトルコ側共同研究者の了解を得ている。この2回の調査によって、研究の遅れを挽回する予定である。 トルコの治安の悪化により渡航が困難になる可能性もある。しかし、イスタンブールにくらべればワンの治安は良好であると感じる。また、ワンではトルコ側共同研究者とともに行動するので、危険性は少ないと考える。
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Research Products
(4 results)