2016 Fiscal Year Annual Research Report
強塩基性・高アルカリ度な巨大閉鎖性塩湖、トルコ・ワン湖の特徴的陸水科学過程
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15H05114
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
杉山 雅人 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (10179179)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ワン湖 / イシククル湖 / 強塩基性 / 高アルカリ度 / 塩湖 / 生物地球化学過程 / 躍層変動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、トルコ東部に位置し強塩基性と異常に高いアルカリ度を示す塩湖であるワン湖において、物理学・化学・生物学にわたる湖の特徴的陸水科学過程を解明し、同湖の保全に資する知見を得ることにある。 昨年度はInonu大学Tolga Depci准教授等との間で覚書を交わし、平成28年3月にワン湖で物理学・化学・生物学にわたる総合陸水科学調査を行った。本年度は夏季のワン湖を調査する予定であった。しかし、7月のクーデター未遂、ワンでのテロによる爆発事件などが発生し、トルコの治安が急激に悪化した。外務省からも7月に海外安全ホームページなどを通して渡航自粛の要望が発出された。このため、8月に予定していたワン湖調査を中止し、トルコの治安回復を待った。しかしながら、10月になっても状況の改善がみられなかったので、申請した研究計画調書に述べたように、研究対象の変更を検討した。ワン湖ほどには塩基性もアルカリ度も高くはないが、水深が400 mを超える塩湖がキルギスにあるので、この湖(イシククル湖)での調査を行うことにした。このため11月23日から30日にかけてキルギスに渡航した。 イシククル湖の3地点と流入河川2地点で調査を行った。多項目水質計による鉛直方向の水質変動(水温、電気伝導度、溶存酸素濃度)を測定した。湖水・河川水を採取し、日本に持ち帰った。現在、この試料の化学分析と生物群集解析を行っている。水温躍層が1日で10 m近くも上下するなど、興味深い陸水物理構造が明らかになった。 ワン湖での研究成果の一部を、"Distribution of trace elements and the influece of major ion water chemistry in saline lakes"と題した論文に纏めた。これをLimnology and Oceanography 誌に投稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「研究実績の概要」に述べたように、トルコの治安悪化のために対象とする湖を変更せざるを得なかった。このため、研究初年度と第2年度での調査実績の積み重ねができていない。また、このためもあって生物生産が最も活発で、湖の物理・化学・生物学構造が大きく変動する夏季の調査が未だに行えていない。
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Strategy for Future Research Activity |
研究最終年度は、トルコの治安が回復したらワン湖での調査を行う予定であるが、現時点でのトルコの状況からすればイシククル湖での調査を継続せざるを得ないと考えている。どちらの場合でも、夏季に調査を行う予定である。ワン湖の治安が回復した場合には、可能であれば二つの湖の調査を行う。
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Research Products
(5 results)