2015 Fiscal Year Annual Research Report
海外敦煌書儀・六朝尺牘文献の古代日本への受容実態の解明
Project/Area Number |
15H05151
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
西 一夫 信州大学, 学術研究院教育学系, 教授 (20422701)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 比出代 信州大学, 学術研究院教育学系, 准教授 (10631187)
奥田 俊博 九州女子大学, 家政学部, 教授 (30343685)
白井 伊津子 淑徳大学, 総合福祉学部, 教授 (40323224)
佐野 宏 京都大学, 人間・環境学研究科, 准教授 (50352224)
奥村 和美 奈良女子大学, 人文科学系, 教授 (80329903)
桑原 祐子 奈良学園大学, 情報学部, 教授 (90423243)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 敦煌文書 / 書儀 / 月儀 / 書簡表現 / 表現受容 / 漢文書簡 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度に実施した海外調査は台湾の故宮博物院、イギリスの大英図書館所蔵の敦煌文献の実見調査である。 台湾の故宮博物院では「故宮本十二月朋友帖」の実見調査をおこなった。閲覧回数と時間の制限があることから文書全体の6割程度を調査するにとどまった。同時に実施予定であった董本の月儀帖についても次年度以降での実見調査となった。今回の調査では紙継ぎの状況や折り本周辺の残存文字の確定をおこない、現在の接続関係と本来の「故宮本十二月朋友帖」の姿を想定することができた。これによって「朋友書儀」の類型に故宮本の位置付けに一部修正を加える必要が生じている。調査は西が行った。 イギリスの文献調査は、27年度実施予定であったがフランスでのテロ事件勃発によって中止し、予算を繰越の上で28年度の調査として実施した。大英図書館所蔵のStein文書のうち、今回の調査で実見調査を行った文書(S.78 ; S.329 ; S.361 ; S.681 ; S.766 ; S.1040 ; S.1145 ; S.1438 ; S.1725 ; S.2072 ; S.2200 ; S.2832)の12件である。すべての文書を実見調査して翻刻資料との突き合わせを徹底して実施した。これによって翻刻文書の誤植や改行・双行注などの誤りをただすことができた。また、紙質や形状についての実測調査を行った。調査は西・小林がおこなった。 国内調査については、台東区書道博物館での中村コレクションの書儀断片の実見調査を行った。実測調査によって、従来の報告書で明示されていない形状を把握することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「やや遅れている」要因は、イギリスでの文献調査が実施できなかったことがある。台湾での実見調査と国内調査でる台東区書道博物館での調査は予定通り実施しているものの、早くから準備を進めていたイギリスでの調査を中止して次年度に実施することとした。隣国フランスでの手と事件の勃発が調査中止の原因である。 平成27年度に実施予定であったイギリス文献調査を28年度に実施した。当初予定の20文献の内から12文献に精選して文献調査を行った。残りの8文献については、追加調査などを実施予定である。27年度には台湾の故宮博物院での文献調査は文献閲覧制限と時間制限の関係で当初予定から文献を精選した。 その他の表現受容については当初予定の内容通りの調査を実施できた。注釈作業についての当初計画通りに初稿原稿の作成を進めて研究会並びにメールでの検討会を重ねてきた。成果発信についても当初計画通り学術論文・著書・口頭発表を行った。これらについては「おおむね順調に進展している」と判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
1.海外文献調査については、本年度実施予定のイギリス調査を次年度に旅費を繰り越して実施予定である。また27年度の台湾故宮博物院での実見調査も予定の文献をすべて調査終了していないため、28年度に27年度に引き続き実施する。フランスのPelliot文書の実見調査の準備は予定通り実施する。ロシア調査は、イギリスの調査年度が変更となったことから、29年度の実施に変更してフランス調査とあわせて実施予定である。これらの調査実施によって、当初計画の実見調査はすべて終了する予定である。イギリスでの文献調査は当初予定の20文献から日程との関係から12文献に精選して実施した。残りの8文献については、追加調査を実施するなどで補填を予定している。 2.国内調査は引き続き台東区書道博物館での中村コレクションの断片調査をおこない接合の可能性をさぐる。27年度までで大型の断片調査は終了するため、微細な断片の接合調査を実施する。あわせて東洋文庫所蔵のマイクロフィルムを用いて実見調査の状況を再確認する。 3.表現受容と文献特質の解明については、写真で確認ができる文献を中心に引き続き作業を進めて語彙の検討結果を受けて正倉院文書や木簡などの史料との関係を検討する。注釈作業は引き続き研究会とメールでの原稿共有で進めていく。さらに成果発信として奈良女子大学古代学学術センターとの共催でシンポジウムと公開講演会を開催予定である。
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