2017 Fiscal Year Annual Research Report
海洋島の実験系を利用したマメ科ー根粒菌共生特異性の進化学的研究
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15H05232
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
梶田 忠 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 教授 (80301117)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高山 浩司 京都大学, 理学研究科, 准教授 (60647478)
青木 誠志郎 東京大学, 総合文化研究科, 助手 (10334301)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 生物間相互作用 / 共生特異性 / 根粒菌 / マメ科植物 |
Outline of Annual Research Achievements |
■現地調査: 今年度の現地調査は本科研費の研究期間中最大規模のものであり、El Hierro を除くカナリー諸島の全島(5島)を、5月20日から30日の10日間で調査した。La Laguna大学のMilagros Leon-Barrios博士らとは十分な共同研究体制が構築できており、大規模な現地調査を短期間に集中して実現させることができた。 ■土壌メタゲノミクス解析: 現地調査で採集した土壌サンプルについては、昨年度までと同様にLa Laguna大の研究室で土壌からの環境DNA抽出を行った。また、今年度は現地でゲノムデータが得られるように、現地研究室にNanoporeシーケンサを導入し、実験解析手法の検討を行った。■データ解析: 前年度までの実験で得られた、カナリー諸島に固有のいくつかのLotus属植物の共生根粒菌のデータと、 生育土壌に存在する根粒菌のデータについて解析をさらに進め、土壌根粒菌相の分化は環境毎に生じているかどうか、また、根粒菌相の分化が環境毎に異なる場合、Lotus属植物との共生特異性に影響しているかどうかを検討するための解析を行った。現状で、コンタミの可能性を捨てきれないという問題点が生じており、問題解決に向けて工夫を続けている。また、いくつかのLotus属植物については、海洋島という環境における植物側の遺伝的分化が、根粒菌と比較してどの程度進んでいるかを確かめるため、集団遺伝学的解析を開始した。■栽培実験: Lotus属植物が生育する様々な環境から得られた土壌に、他の環境に生育する別種のLotus属植物の種子を播種し、それぞれの土壌中でどのような根粒菌と共生できるかを確認する栽培実験を実施した(Fishing実験)。実生から栽培した植物個体を用いて、根粒菌の違いによって、根粒形成の度合いと、植物体の生長量の違いを計測している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請時の計画では予算にあわせて、年1回の現地調査で、かつ、現地機関に滞在しての実験は短縮して実施し、現地協力者の協力を得て栽培実験等を行うことを計画した。また、現地研究機関から譲り受けた種子を国内で栽培する実験も行っている。 今年度はLa Laguna大の研究者との共同研究が予想以上に進展し、前期(5月)に 短期間で大規模な現地調査を実施することができた。カナリー諸島の5島で現地調査を実施し、土壌メタゲノム実験と接種実験に必要な多くのサンプルを得た。 一方、メタゲノムデータの解析に関しては、Lotus属植物ー生育環境ー根粒菌相の明瞭な関係を示唆する結果は得られたものの、現時点ではコンタミの可能性を十分には排除できておらず、研究成果の出版には至っていない。そのため、出版計画にはやや遅れが生じている。ただ、La Laguna大の研究者とは平成30年度に日本で開催する第7回国際マメ科で、本科研費プロジェクトに関連した国際シンポジウムを開くように、準備を進めている。また、そのシンポジウムにあわせて、得られたデータを検討し、論文出版の準備を進めている。 以上の状況から、現在までの進捗状況は、全体的に見て概ね順調であると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である来年度に向けて、研究計画は以下のように推進する方策を立てている。 ■成果公開: 第一に、本研究プロジェクトの直接の成果としての論文を出版する。平成30年8月には研究代表者が実行委員長となって、第7回国際マメ科会議を仙台で開催し、その中で、本科研費に関連する国際シンポジウムを実施する。これにあわせて、La Laguna第の研究者2名を招へいし、日本で共同研究を実施する。シンポジウムの準備の過程と、日本における共同研究で、論文作成が大きく進捗と見込んでいる。 ■現地調査: H30年度 1回。重点的に解析している広域分布種のサンプルを複数の島から得る。 ■現地機関で実験: H30年度は期間を短縮して実施。 ■メタゲノム解析実験: H30年度に再度実施。これまで問題となっていたコンタミの可能性を極力抑える方法で、実験を行う。 ■研究のとりまとめと、発展的プロジェクトに向けた検討: 次年度は最終年度であるため、カナリー諸島におけるLotus属植物と根粒菌の共生特異性について、目的としていた海洋島での特異な分化が見られるかどうかについて、研究結果をとりまとめる。また、La Laguna大学の研究者と共同で議論を重ね、また、マメ科国際会議で他国の専門家の意見を得て、新たな枠組みでの発展的プロジェクトへの拡大を目指す。
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Research Products
(6 results)