2016 Fiscal Year Annual Research Report
周極域森林生態系において蘚苔地衣類が炭素窒素循環に果たす役割と地域間差の評価
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15H05238
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
森下 智陽 国立研究開発法人森林総合研究所, 四国支所, 主任研究員 (90391185)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 周極域 / アラスカ / エストニア / コケ / 地衣 / クロトウヒ / ヨーロッパアカマツ |
Outline of Annual Research Achievements |
気候変動の影響を受けやすい周極域の森林生態系では、林床の蘚苔地衣類の蓄積および分解様式が森林の成立に深く関与していると考えられる。一概に周極域森林生態系と言っても、北欧、ロシア、アラスカ、カナダに拡がる森林では、気候および植生が異なる。周極域森林生態系において林床を覆う蘚苔地衣類が炭素および窒素循環におよぼす影響について、量的およびプロセスの面から評価することが本研究の目標である。本年度は、調査予定地点の一つであるアラスカ州フェアバンクス市近郊のクロトウヒ林において、林床を構成する蘚苔地衣類の被覆状況と有機物層厚およびクロトウヒ細根量との関係を明らかにすることを目的として研究を進めた。調査地点において、クロトウヒおよび下層植生の細根について、層別、径別に測定したところ、太さが0.5㎜未満のクロトウヒのみ、H層よりもF層で細根量が多くなっていた。下層植生として見られたイソツツジやクロトウヒの0.5mm以上の根は、H層で多くなっていた。F層とH層で、水分率には大きな違いがないことから、F層の方が温度が高い、もしくはクロトウヒにとって必要な養分が多いためこのような違いが生じたと推測される。さらにF層の構成物が地衣類よりもコケ類が主体である際に、細根が多く発達する傾向が認められた。原因は未解明だが、考えられる要因として、水分、養分含量の違いが挙げられる。原因究明は今後の課題であるが、林床を構成する蘚および地衣類が、クロトウヒの細根発達に影響を及ぼすことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
年度当初に予定していた、林床を構成する蘚苔地衣類の被覆状況と有機物層厚およびクロトウヒ細根量との関係を明らかにできた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに明らかにできなかった主要なコケおよび地衣類の年間成長量を明らかにするために、アラスカで観測を実施する。
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Research Products
(2 results)