2015 Fiscal Year Annual Research Report
外来きのこ定着が進行するニュージーランド森林における菌根共生環境因子の解明
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15H05249
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田中 千尋 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (60263133)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大澤 直哉 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (10221821)
門脇 浩明 京都大学, 人間・環境学研究科(研究院), 研究員 (30643548)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 菌根菌 / ナンキョクブナ / ラジアータマツ / アカマツ / シイ |
Outline of Annual Research Achievements |
アカマツ林における微生物相を明らかにするため,土壌希釈平板法と菌根チップ分離法を用いて調べた.また,あわせてメタゲノム解析用試料の作製も行った.土壌希釈平板法では,細菌と糸状菌相の調査を行った.マツタケが優占するシロでは,細菌数ならびに糸状菌数も有意に少なく,既報とほぼ同様の結果が得られた.また,糸状菌相としてはMortierella属菌,ならびにTrichoderma属菌が根圏土壌から多数分離された.細菌相についてはBurkholderia属菌等の土壌生息菌が分離されたが特定の細菌相が優占していることはないようであった.菌根チップについては,マツタケシロにおいては,マツタケ,対比区においては,Cortinarius属菌等の外生菌根菌が見出された.メタゲノム解析用試料の作製については,Walters et al. 2015の方法に従い行った.次年度以降,作製試料の解析を進める. ニュージーランドにおけるナンキョクブナ林ならびにラジアータマツ林における調査は,許可の関係から当初予定が大幅に遅れ,3月に行った.また,現地研究協力者と実施を予定していた実験実施計画も調査予定地での許可取得の関係から見直す必要が生じた.現地研究協力者の所属機関が利用している調査地を実施候補地とし,子実体の採集,菌根チップの採集を行い,菌根菌相を調べた.また,ニュージーランド側で蓄積した過去データと合わせて解析を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初,ニュージーランド国のナンキョクブナ林,ラジアータマツ林においてもコドラートを設定し,根圏微生物相の調査ならびに撹乱操作による微生物相動態の変化を調査する予定であった.しかし,同国Dept. of Conservation(DOC)の方針で,前回調査で用いた国立公園内における調査許可条件が厳しくなり(具体的な調査標本数の申請ならびに報告が必要とされるようになった),また,調査予定地の林分が保護林に指定されたことにより,生態系撹乱操作の認可を得ることが極めて難しいものとなった.そのため,当初予定地での微生物相調査自体は研究手法の変更を行うことによりDOCから許可が得られるものの,撹乱操作が実施できないため,同国の研究協力者と討議し今後の研究計画を練り直した.本年度は,対比として調査を計画していた我が国のアカマツ林の微生物相調査を行うとともに,ニュージーランド国の研究協力者の所属研究所が調査を継続している別サイトの微生物相調査を予備的に行うにとどまった.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の立案申請段階においては,生物多様性条約名古屋議定書制定による影響が考えられたため,それを回避するため,ニュージーランド国の研究協力者と連絡を取り合い,実験計画の立案ならびに許可申請等を進めてきた.しかし,DOCの保護林に対する対策厳密化と相まって,調査方法の極めて大幅な変更をせざるを得ない状況となった.研究協力者と討議し,その結果,研究協力者の所属研究所が調査継続している別サイトを利用し,微生物相調査を行うこと,現在までに明らかになってきている特定の微生物群集に着目し,その動態を明らかにすることで,初期の研究目的を達成可能であると判断した.
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