2016 Fiscal Year Annual Research Report
生理的欲求に応じて価値判断を調節する神経ネットワークの解明
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15H05374
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
山田 洋 筑波大学, 医学医療系, 助教 (70453115)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 霊長類 / 線条体 / 価値判断 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、昨年度より続けていた研究の立ち上げを、年度始めに達成した。そして、年度の途中からは、神経細胞活動データの取得と解析を行った。以下にその内容を記す。 本研究では、欲求が動物の行動と判断を調節する神経メカニズムを明らかとすることを目的としている。欲求の程度に応じて柔軟に行動を調整することは、ヒトを含む動物が備え持つ基本的で重要な脳の仕組みである。価値判断の中心と考えられる前頭眼窩野や腹内側前頭前野、腹側線条体が欲求の程度に応じて意志決定を調節すると考えられる。このような脳の認知機能を明らかとするために、価値判断を行っている最中のマカクザルの脳から神経細胞活動データを記録した。 神経生理学の研究では、マカクザルを最低2頭用いる必要がある。2頭の動物に価値を判断する課題を訓練し、その行動課題を遂行中のサルの脳から侵襲的に神経細胞活動を記録する。本年度は、1頭の動物の行動訓練及び、線条体の腹側部からの神経細胞活動の記録を行った。その間、手術や実験のための機器を準備を行った。本研究計画は3年を計画しているが、本計画に必要な機器の多くを購入し、セットアップを行った。 今回、一頭の動物から取得した実験データの解析を、現在進めているところである。核磁気共鳴装置を用いて脳活動を記録するための脳部位の同定を行った後、背側線条体と腹側線条体から約150個の単一神経細胞活動を記録した。現在、仮説に基いて欲求依存的な価値信号が観察されるかを検証するための解析を行っている。予備的な結果として、腹側線条体で観察される価値の信号が強いという結果が得られた。 また、本研究計画に関連して進めてきた研究の論文を2本出版した。研究の成果が出始めたため、今後、更に研究を発展させたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は、本研究計画の開始2年目として、一番の目的で実験データの一部の取得を行った。更に、今後必要となる2頭めの動物からデータを取得できるように、行動訓練を進めている。3年計画の2年目として、目標を達成したと評価できる。以下にその詳細を述べる。 平成28年度は、研究計画の進展を評価する上で非常に重要な年であった。1年目から行ってきた実験設備のセットアップを終了し、実験計画が本当に妥当なのか検証するための初期データを取得し、解析した。計画の通り実験結果が得られたため、データの取得を継続し、計画の達成に必要なデータのうち半分を取得した。更に、もう半分のデータを取得するために、行動訓練を進めている。 従って、計画の最終年にあたる来年度に、計画の達成に必要なデータを取得できると予測され、本計画はおおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
計画2年目の本年度は、順調に実験を進めることができた。この状況を継続し、仮説の検証に必要な残り半分の実験データを取得する。データ解析を推し進め、より頑強な結果を早期に取得する。計画がうまく前進している現状を踏まえ、更に本研究を発展させる。 そのために、次の2点の方針を継続する。1.残りのデータを取得することを最も重視し、研究の成果に直結する研究を行う。2.成果をより大きな物とするために、実験データの解析を繰り返し行い、新規の発見を達成する。来年度は計画最終年度にあたるため、成果に直結する研究を継続し、計画を達成する。 来年度の早い時期にデータの取得の目処を立て、結果を発表するための論文作成を開始する。国内外の学会で発表することで、内容を精査するとともに、より良い結果とするための追加の解析を行い、論文として発表する。
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Research Products
(2 results)