2016 Fiscal Year Annual Research Report
Recognition of self and non-self in the genome by small RNAs and chromatin factors
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15H05583
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
岩崎 由香 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (80612647)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | small RNA / RNA-タンパク質複合体 / ゲノム安定性 / トランスポゾン / Piwi-piRNA複合体 / 転写制御 / エピゲノム制御 / 標的認識 |
Outline of Annual Research Achievements |
小分子RNAがいかにその制御対象となるトランスポゾン等の「非自己遺伝子」を認識するかについては未解明な部分が多い。細胞質でArgonauteタンパク質と複合体を形成する小分子RNAは、相補配列をもつ標的遺伝子にArgonauteタンパク質をガイドし、標的RNAを切断する。一方で、核内で標的遺伝子を転写レベルで制御するショウジョウバエPiwiタンパク質とpiRNAの複合体は、PiwiのRNA切断活性は標的遺伝子抑制に不要、一部のpiRNAには相補的な標的遺伝子が存在しない、などの特徴があり、その標的認識機構は不明である。Piwiが直接標的遺伝子領域に作用する可能性を検討するために、PiwiのDam-ID解析、CLIP解析等を試みたが、標的遺伝子特異的なシグナルは得られていない。そこで、Piwiはなんらかの未知因子を介して標的遺伝子を認識している可能性を検討した。その結果、新たな候補因子として、卵巣特異的に発現するNxf2を同定した。Nxf2はユニバーサルに発現するRNA核外輸送因子Nxf1と類似したドメイン構造をもつが、その機能は明らかになっていない。これまでに、Nxf2がPiwiをはじめとしたpiRNA経路関連因子と複合体を形成すること、およびNxf2のRNA結合能を持つ可能性のあるドメインがpiRNA標的トランスポゾンの転写抑制に必須であることを明らかにしてきた。現在、Nxf2の抗体作成およびこれを用いたCLIP解析RIP解析等の生化学的・情報学的解析をとおして、Nxf2が核内Piwi-piRNA複合体の標的遺伝子認識を担う可能性を検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Piwiが直接的に標的を識別している可能性を検討するために行ったDam-IP解析およびCLIP解析では、Piwi-piRNA標的遺伝子特異的なPiwiの結合は観察できなかった。この結果から、Piwiが新規因子を介して標的トランスポゾンを認識している可能性を検討し、候補因子Nxf2を得ることに成功した。Nxf2がPiwi-piRNAによるトランスポゾン抑制に関与していることを既に明らかにしており、国際学会等でこの研究成果を発表した。さらに、本年度は核内のPiwi-piRNAによるトランスポゾン転写制御機構に関する関連論文が出版された [Iwasaki et al., Mol Cell. (2016)]。この論文は、Piwi-piRNA複合体はリンカーヒストンH1の位置情報を規定することでトランスポゾンを制御するという新たな制御モデルを提唱する論文であり、本研究で目的としているPiwi-piRNAによる非自己認識機構を総合的に理解する上で重要な知見が得られた。また、新たなPiwi-piRNA経路関連因子が同定されたとことから、今後非自己認識の責任因子を探索しその機能解析を行う上で、H1とクロマチン凝集が有用な手がかりとなることが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、Piwi-piRNAがどのように標的トランスポゾンを認識するかを明らかにするために解析をすすめてきた。その過程でNxf2という新たなPiwi複合体形成因子を同定し、この複合体はH3K9me3の誘導を介し、piRNA標的トランスポゾンの発現を抑制していることを明らかにした。さらに、トランスポゾン抑制には複合体形成に加え、Nxf2のRNA結合能を持つ可能性のあるドメインが必須であることが示された。この結果から、Nxf2はpiRNA標的トランスポゾン由来のRNAへの結合を介して、Piwi-piRNAの標的選択を担う可能性を着想した。今後は、CLIP解析およびRIP解析を用いて、Nxf2が結合するRNAを網羅的に同定すると同時に、Nxf2を人工的にRNAにテザリングした際にPiwi-piRNAによる転写抑制が引き起こされるかを検討することで、Nxf2がPiwi-piRNAの標的認識を担う可能性を検証する。
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Research Products
(9 results)