2016 Fiscal Year Annual Research Report
感染による炎症性骨破壊を制御する神経骨免疫ダイナミクスの解明
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15H05686
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
丸山 健太 大阪大学, 免疫学フロンティア研究センター, 特任助教(常勤) (60724119)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 真菌細胞壁 / 急性疼痛 / アロディニア / 骨髄炎 / ATP |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者らは、痛覚神経を遺伝学的に欠損させたマウス(無痛マウス)の作成を行い、当該マウスが重篤な骨粗鬆症を呈すると同時に、真菌性骨髄炎モデルの著名な増悪を示すという知見を得た。興味深いことに、無痛マウスにおけるLPS誘発性の骨髄炎モデルはコントロール群と比較して異常がみられなかった。このことから、痛覚神経は真菌性骨髄炎を選択的に抑制している可能性が示唆された。驚くべきことに、痛覚神経には真菌感染を感知する自然免疫受容体が複数発現しており、遺伝子改変動物を用いた行動学的・電気生理学的・機能的MRI解析を駆使した結果、真菌性急性疼痛/掻痒にかかわる受容体ならびにシグナル伝達経路の同定に成功した。真菌感染の持続は個体に痛覚過敏をもたらすが、真菌細胞壁成分による痛覚過敏の発生にはMyD88/TRIF/Bcl10/Malt1といった真菌性炎症の惹起に必須のアダプター蛋白質は不要であった。一方、ATP受容体阻害剤を投与されたマウスあるいはATP分泌顆粒形成に障害を持つVNUT欠損マウスでは真菌細胞壁成分による痛覚過敏が顕著に減弱しており、真菌性の痛覚過敏にはATPの寄与が大きいことが示唆された。これらの知見に加え、本年度は真菌感染の際に痛覚神経から大量に分泌される液性因子Xの産生が辛子と山葵の受容体の活性化に依存していること、また当該因子が真菌性炎症の抑制にかかわっており、転写抑制因子Jdp2の発現をマクロファージに誘導することを見出した。Jdp2KOマウス由来のマクロファージは真菌細胞壁成分に対して正常の炎症応答を示すが、真菌細胞壁成分をJdp2KOマウスの足底に投与すると顕著な炎症の増悪が観察された。また、この炎症はRTX投与による痛覚神経の除去によって変化することはなかった。以上より、痛覚神経による真菌性炎症の抑制には転写抑制因子Jdp2が必須であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究に必要な遺伝子改変マウスの繁殖が完了し、行動学的・電気生理学的・機能的MRI解析を実施することができた。また、無痛マウスの骨髄炎モデルの立ち上げに成功し、痛覚神経が真菌性骨髄炎を選択的に抑制している可能性を示唆する証左を得た。以上より、研究課題は計画通りに進展しているものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は同定した真菌性疼痛/掻痒にかかわる受容体が、関節炎や神経因性疼痛にかかわっているかどうかを検討する。また、当該受容体のアゴニスト或は中和抗体が新たな鎮痛医薬となりうるかどうかを評価した上で、知財の確保をめざす。また、侵害受容システムの研究者と免疫学の研究者の交流の場をつくるため、H29年7月3日~7月4日にかけて、第1回感覚免疫学研究会(後援:自然科学研究機構生理学研究所)を岡崎カンファレンスセンターにて主催する予定である。
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Research Products
(12 results)
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[Journal Article] Bone-protective Functions of Netrin 1 Protein2016
Author(s)
Kenta Maruyama, Takahiko Kawasaki, Masahide Hamaguchi, Motomu Hashimoto, Moritoshi Furu, Hiromu Ito, Takao Fujii, Naoki Takemura, Thangaraj Karuppuchamy, Takeshi Kondo, Takumi Kawasaki, Masahiro Fukusaka, Takuma Misawa, Tatsuya Saitoh, Yutaka Suzuki, Mikael M Martino, Yutaro Kumagai, and Shizuo Akira
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Journal Title
Journal of Biological Chemistry
Volume: 291
Pages: 23854-23868
DOI
Peer Reviewed
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[Patent(Industrial Property Rights)] 組織損傷治療剤2017
Inventor(s)
丸山健太、マルティーノ ミカエル エム、審良静男
Industrial Property Rights Holder
丸山健太、マルティーノ ミカエル エム、審良静男
Industrial Property Rights Type
特許
Industrial Property Number
PCT/JP2017/007069
Filing Date
2017-02-24