2015 Fiscal Year Annual Research Report
男性同性愛者のもつ複数のソーシャル・キャピタルが性的健康に及ぼす影響のメカニズム
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15H05691
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
塩野 徳史 名古屋市立大学, 看護学部, 助教 (30616694)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ソーシャル・キャピタル / 公衆衛生看護 / 性感染症予防 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、男性同性愛者のもつ複数のソーシャル・キャピタル(家族や地域社会、男性同性愛者コミュニティ)との相関関係を明らかにし、さらに複数のソーシャル・キャピタルと性的健康(感染のリスク要因や予防行動)との関連を明らかにすることを目的とした。 日本では男性同性間での性行為によってHIV感染は拡大し続けており、特に若年層や都市部での感染拡大が顕著となっている。本研究の結果により、男性同性愛者における健康行動を影響を与える要因が明らかとなり、予防介入のメカニズムが理論的に示されることが期待でき、男性同性愛者を対象としたエイズ対策として実証的なモデルを国内および国外に提示することが可能となる。 本年度は性感染症予防分野の研究でソーシャル・キャピタルとの関連を示した論文を収集し、使われている調査項目の中から、ネットワーク・信頼・互酬性の規範について関連した項目を抽出した。また国内で行われた他領域のソーシャル・キャピタルに関する研究も参考にし、結合型ネットワークとして町内会・自治会団体への参加や、橋渡し型ネットワークとしてボランティア団体への参加項目を抽出した。HIV感染リスクや予防行動に関する調査項目は、申請者らが先行研究で活用してきた項目を活用することとし、男性同性愛者を中心とする当事者団体の意見をふまえ男性同性愛者の社会的文脈に沿った調査項目となるよう作成した。 そして本調査の実施方法・時期を検討し、アンケートセットを作成した。平成28年度の第1調査、平成29年度第2調査ともに趣意書、同意書、質問紙、回答用封筒、謝礼として商業施設で使用可能な1,000円相当のチケット、共通のアンケートセットを作成した。各地域の当事者団体に説明を行い、第1調査は近畿地域で実施し、第2調査は東海地域、沖縄県で実施することとした。また、本研究実施について名古屋市立大学看護学部倫理委員会の承認を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に沿って、当事者団体の協力のもと調査項目、調査実施体制を構築した。プレ調査を実施予定であったが、当事者団体と研究目的や質問項目について十分な検討を行ったため少量略したが、先行研究をふまえて質問項目は一部改定にとどまったため妥当性については問題ないと考えた。また同様の方法での調査実施について承認を得て、参加地域を3地域に確定した。都市部(大阪市)・地方中都市(名古屋市)・地方市(那覇市)を参加地域とし、地域差を考慮するにあたっては適切な地域の参加を得たので、おおむね順調に進展したと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画にしたがって平成28年度には第1調査を実施する。第1調査は近畿地域でMASH大阪と共同し実施する。調査方法は横断質問紙調査とし、申請者らの先行研究と同様とする。同意の得られた商業施設にアンケートセットを配布し、従業員から利用者に直接手渡され、利用者が自ら郵送にて研究機関宛てに送付し、回収する方法を用いる。回答者には謝礼として商業施設で使用可能なチケットを謝品として提供する仕組みとすることで、調査回答者の選定バイアスを可能な限り考慮した。アンケートセット配布協力店舗は70店舗を目標とし、1ヶ月間で2,100部のアンケートセット配布(各店舗で30部程度)を目指す。回収率は申請者らの先行研究から60%程度であり、最終的には回収目標数を1,300と設定する。 また研究機関宛に送付された回答について、統計ソフトウェアSPSSを活用しデータの分析を研究代表者を中心に進める。分析結果の解釈では、適宜研究協力者の協力を得て客観的に分析を進める。 さらに、第2調査の準備として、東海地域、沖縄県で男性同性愛者を中心とする当事者団体も含めて、第1調査の進捗状況を報告する。 平成29年度には該当地域でアンケートセット配布協力者のリクルートを開始する。東海地域ではANGEL LIFE NAGOYAが、沖縄県ではnankr が予防啓発資材を配布している商業施設に調査協力を依頼し協力への同意を得る。第2調査も第1調査と同様の手順で実施する。アンケートセット配布協力店舗は東海地域30店舗、沖縄県30店舗を目標とし、各地域1ヶ月間で1,000部のアンケートセット配布(各店舗で30部程度)を目指す。最終的には回収目標数を東海地域500、沖縄県500と設定する。 概ね研究計画に沿って進めていく。
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