2019 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15H05703
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Principal Investigator |
高柳 広 東京大学, 大学院医学系研究科, 教授
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Project Period (FY) |
2015 – 2019
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Keywords | 骨代謝 / 免疫 / 造血 / 関節リウマチ / 自己免疫疾患 / 自己寛容 / サイトカイン |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では、生体における様々な骨免疫間相互作用を明らかにし、疾患克服に向けた治療法開発基盤の構築に取り組んだ。最終年度では主に以下の成果を挙げた。 ①自己免疫疾患の根源である自己反応性T細胞の発生機序を明らかにすべく、胸腺における自己寛容成立機構の解析に取り組んだ。胸腺髄質上皮細胞(mTEC)は末梢組織自己抗原を発現することで自己反応性T細胞を負の選択により除去する。我々は以前mTECに高発現する転写因子Fezf2がAire非依存的な末梢抗原の発現を制御することを見出した(Takaba et al, Cell, 2015)。そこでFezf2による末梢組織自己抗原の発現制御機構をさらに明らかにすべく、共役沈降法と質量分析解析によりFezf2と結合するタンパク質を探索し、クロマチン制御因子Chd4を同定した。Fezf2はChd4を含むヌクレオソーム再構築デアセチラーゼNuRDと複合体を形成していることが判明した。さらにATAC-seq解析とChIP-seq解析の結果から、Fezf2-Chd4複合体はプロモーター領域の付近に結合し、末梢抗原遺伝子を直接的に制御することが明らかとなった。一方で、Chd4はヘテロクロマチン構造を解くことで、スーパーエンハンサーを介したAire依存的な末梢抗原の発現誘導にも関与していた。以上より、Chd4はFezf2またはAire依存的な末梢抗原遺伝子の発現誘導の双方に関与する上流因子であり、mTECの末梢自己抗原はこうした二種類の異なる遺伝子発現様式により誘導されていることが明らかとなった(Tomofuji et al, Nat Immunol, in press)。 ②病的状況下において骨髄環境の変容が多岐に亘って個体の機能低下に繋がること知られている。そのため、骨髄微小環境を構築する細胞間コミュニケーションの実態とそれを担う相互作用因子、さらには疾患との関連性を明らかにすることが重要である。がん細胞は骨に転移すると骨髄の骨芽細胞に作用してRANKLの発現を高めるため、破骨細胞による骨吸収が亢進し、骨の破壊や脆弱化が起こる。加えて、骨基質から成長因子が放出されるため、がん細胞がさらに増殖する、という悪循環に陥る。さらに乳がん、メラノーマなどの骨転移を起こす多くのがん細胞はRANKを発現しており、RANKLはがん細胞に作用することで細胞走化性を高めることが知られている。またRANKLは膜型として発現する他、細胞外領域でタンパク質分解酵素により切断を受け可溶型として産生されることが知られているが、生体内での各々の役割の違いはこれまで不明であった。我々はCRISPR/Cas9系により可溶型RANKLを選択的に欠損させたマウスを作製し、可溶型RANKLの生体内の役割を調べた。その結果、骨代謝や免疫組織形成には膜型RANKLが中心に働いており、可溶型RANKLは必要ないことが判明した。一方で、可溶型RANKLはがん細胞に直接作用して、骨への走化性を促して骨転移を誘導することを見出した(Asano et al, Nat Metab, 2019)。可溶型RANKLは骨組織で高く産生されるため、血液と骨髄の間で可溶型RANKLの濃度勾配が生じる。その結果、RANK陽性がん細胞は、可溶型RANKL濃度に従い骨への転移が進むことが示された。本研究により可溶型RANKLが骨転移発生率を予測するバイオマーカーとして有効であることが示唆された。 研究期間全体を通じて、多くの骨免疫連関を分子レベルで同定し、その生理的意義・病理学的意義を明らかにすることができた。関節リウマチにおける免疫系による骨破壊、というコンセプトが発端となった骨免疫学であるが、本研究成果により、骨と免疫の相互関係が生涯に亘り個体の生命維持の要に位置し、様々な生体制御に関わることが明らかとなった。本研究により、自己免疫疾患や感染症、骨粗鬆症やがん骨転移などの運動器疾患の病態解明並びに予防・治療法開発の分子基盤の確立に結びつくことができた。
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Research Products
(91 results)
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[Journal Article] Ras homolog gene family H (RhoH) deficiency induces psoriasis-like chronic dermatitis by promoting T_h17 cell polarization2020
Author(s)
Norimasa Tamehiro, Kyoko Nishida, Yu Sugita, Kunihiro Hayakawa, Hiroyo Oda, Takeshi Nitta, Miwa Nakano, Akiko Nishioka, Reiko Yanobu-Takanashi, Motohito Goto, Tadashi Okamura, Reiko Adachi, Kazunari Kondo, Akimichi Morita and HarumiSuzuki
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Journal Title
Journal of Allergy and Clinical Immunology
Volume: 143
Pages: 193-203
DOI
Peer Reviewed
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[Book] Methods Mol Biol2020
Author(s)
Ryunosuke Muro, Hiroshi Takayanagi and Takeshi Nitta
Pages
193-203
Total Pages
296
Publisher
Retroviral gene transduction into T-cell progenitors for analysis of T cell development in the thymus
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[Remarks]