2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15H05704
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
審良 静男 大阪大学, 免疫学フロンティア研究センター, 教授 (50192919)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 荘 大阪大学, 微生物病研究所, 助教 (60619716)
國吉 佳奈子 大阪大学, 微生物病研究所, 特任研究員 (70747881)
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Project Period (FY) |
2015 – 2019
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Keywords | 自然免疫 / mRNA安定性制御 / M2マクロファージ / 炎症 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで研究代表者はTLR誘導性の分子群の研究から、“mRNA安定性制御機構”及び、“疾患特異的マクロファージサブタイプ”という自然免疫の新しい分野を切り開いた。 我々はRegnase-1のIKKキナーゼによる蛋白質リン酸化および分解が炎症関連遺伝子のmRNAの不安定化や免疫反応全体に及ぼす影響を調べた。Regnase-1のIKKキナーゼによるリン酸化に対して非感受性の変異体マウスは、マウスのT細胞性自己免疫疾患モデルの一つである実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)の症状が野生型よりも抑制されており、病状の進行も遅くなることが明らかとなった。この変異体マウスでの症状の低減は非血球系細胞群、特に血管内皮細胞の炎症性サイトカインIL17に対する応答が野生型よりも弱いことが原因であることが考えられた。現在Regnase-1の点変異によりIL17に対する感受性が低下したメカニズムについて検証中である。 佐藤らはアレルギー疾患、代謝疾患に関与する疾患特異的マクロファージに加え、線維症に関わる新しいマクロファージの同定を進めた。線維化期にマウスの疾患部位で増殖する細胞に着目し、その細胞を野生型マウスに移植すると線維化が増悪することが明らかとなった。更にバイオインフォマティックスを用いた解析からこの細胞を制御する分子が複数知られてきており、現在はその分子の役割をCrispr/Cas9を用いた遺伝子改変マウスの作成を行って解析を行っている。 この様に、今年度の研究により、自然免疫の新分野である“mRNA安定性制御機構”及び、“疾患特異的マクロファージサブタイプ”の一端を明らかにすることができた。特に、線維化を制御するメカニズムは未だに明らかとはなっておらず、現在その発症メカニズムと新規に同定した細胞との関係性に関し、さらに検討を加えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々は、Regnase-1のIKKキナーゼによるリン酸化部位にアミノ酸変異を加えたノックインマウスを作製した。IKKキナーゼによる蛋白質分解に非感受性の変異体マウスでは、マウスのT細胞性自己免疫疾患モデルの一つである実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)に対して発症の抑制や病状の軽減が認められた。EAEの発症には様々な細胞が関わっており、自己免疫反応を引き起こすT細胞を含む血球系と、T細胞や抗原提示細胞と相互作用しこれらの細胞の組織間移動の制御にかかわっている非免疫細胞に分けられる。我々はノックインマウスにおけるEAEの症状の改善がどの細胞集団によりもたらされているかを明らかにするために、マウスの骨髄細胞を野生型およびノックインマウス間で置換した際のEAE発症の影響を調べた。その結果、野生型の骨髄細胞をノックインマウスに移植したレシピエントマウスを用いた場合にEAEの症状が改善し、ノックインマウスの非血球系細胞がEAE症状の改善に寄与していることが明らかとなった。EAEの発症には病原性T細胞が血液脳関門を通過することが必須であり、それらの中でもTh17細胞が、自身の産生する炎症性サイトカインのインターロイキン17(IL17)と血管内皮細胞の相互作用を通じて、血管から中枢神経へと侵入することが重要であると考えられている。免疫組織学的解析およびFACS解析の結果、ノックインマウスでは脊髄組織へのT細胞の浸潤が野生型と比べて極めて少なかった。さらに野生型およびノックインマウスの肝臓由来類洞血管内皮細胞(Lsec)を単離し、複数の炎症性サイトカインとIL17による共刺激を行い、ELISAおよびqPCRを用いて炎症性サイトカインおよびケモカインのmRNAおよび蛋白質産生量の定量を行った。その結果、ノックインマウス由来のLsecはIL17に対するサイトカイン・ケモカイン産生が野生型と比較して大きく減少していることが明らかとなった。これらの結果から、ノックインマウスではIL17に対する細胞応答が野生型よりも弱く、そのことがEAE発症における病原性T細胞の中枢神経系への移行を送らせており、症状の改善に大きく寄与していることが示唆された。これらの結果から、Regnase-1はTLRやIL1RのようにIL17受容体シグナルでもmRNAの不安定化を通じて炎症反応の制御にかかわっていると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度に引き続き、上記の二つの研究について更に進めていく予定である。 mRNA安定性制御機構に関しては、Regnase-1がIL17受容体シグナリングにおける炎症性サイトカイン及びケモカインの産生に関与していることが明らかとなったので、IL17受容体シグナル経路におけるRegnase-1の役割について検証する予定である。これらの分子メカニズムの解明を通じて、Regnase-1のIL17受容体シグナリングにおけるmRNA安定性機構という新たな知見の獲得を試みる。 マクロファージ研究に関しては、今後、線維症に関与するマクロファージがどのような分子メカニズムで線維化に寄与しているかを検討する予定である。またこれまで、佐藤はアレルギー及び、メタボリックジンドロームに関わる疾患特異的マクロファージサブタイプの分化機序も明らかにして来ている。したがって、今回同定した新規マクロファージの分化メカニズムも今後解明していく予定である。さらに、線維症を標的とした薬は未だ開発されていない。そこでこのマクロファージのヒトカウンターパートを見つけることができれば、そこから新規創薬の糸口に繋がることが考えられるために、ヒト細胞を用いた検討も開始する予定である。
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Research Products
(7 results)