2018 Fiscal Year Annual Research Report
宇宙赤外線背景放射のロケット観測でさぐる銀河ダークハロー浮遊星と宇宙再電離
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15H05744
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
松浦 周二 関西学院大学, 理工学部, 教授 (10321572)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
津村 耕司 東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 助教 (60579960)
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Project Period (FY) |
2015-05-29 – 2020-03-31
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Keywords | 宇宙物理 / 赤外線天文学 / ロケット実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,銀河のダークハロー内の浮遊星や宇宙再電離期の電離源天体の光を近赤外線の宇宙背景放射として観測することを目的とする.この研究は,CIBER-2(Cosmic Infrared Background EpeRiment 2)と名付けた国際共同ロケット実験により実施する. 我々がこれまでに行なってきたCOBE,IRTS,「あかり」やSpitzerなどの衛星による観測,およびロケット実験CIBERの結果から,近赤外線の宇宙背景放射は当初から予期されていた系外銀河の積算光よりもはるかに明るいこと(超過成分の存在)がわかってきた.特に,平成29年度初頭にThe Astrophysical Journal誌にて発表したCIBER実験の成果(Matsuura et al., ApJ, 839, 7, 2017)では,宇宙背景放射の超過の原因が太陽系内の黄道光の差し引き不足による可能性を除外し,超過成分は銀河系外に起源を持つ可能性が高いことを示した.この超過成分は宇宙初期に起源を持つ可能性があり,その解明は科学的に極めて重要である.この超過成分の解明を目的とするCIBER-2実験では,CIBER実験と比べて観測波長の可視光への拡大や1桁の感度向上を可能とする観測装置を新たに開発した. CIBER-2観測装置の基幹部分である光学系は本科研費により日本で開発し,研究の主パートナーとしてNASAロケット実験を取りまとめる米国カリフォルニア工科大学へ搬送した.平成30年度は,日本チームから現地にメンバーが赴き,観測装置の組立て・調整や光学性能評価試験を実施した.現在までに装置はほぼ完成したため,2019年度はNASAの組立て基地へ観測装置を移設し総合試験を行なった後,打上げ基地(ホワイトサンズ実験場)へ移設し装置の校正試験を行なう.そして,2019年7月にロケットの打上げ・観測を実施する予定となっている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
CIBER-2プロジェクトにおける日本の主担当は観測装置の基幹部分である望遠鏡およびレンズ光学系の開発であり,本科研費の研究課題はこれを遂行するものである.当初の研究計画では平成28年度に光学系の開発を終えロケット打上げを実施するはずであったが,機器開発の中で様々な技術的問題により実験計画に約2年の遅延が生じた. その主な理由は,光学系を構成するレンズと望遠鏡の鏡の製作加工精度,および望遠鏡の振動耐性等に深刻な問題があったことである.CIBER-2の科学目的に沿った広視野・広波長帯域の仕様を満たす光学系をロケットの搭載可能域内で実現するには非球面レンズを多用せざるを得なかったが,非球面レンズ群は大きな曲率をもつため製造に課題があった.海外メーカーで行なった試作で精度やレンズに欠けの問題があったことで国内メーカーへの切り換えに予定外の時間やコストが生じた.また,望遠鏡の振動試験において予定外の大きな機械的共振が問題となったため,この対策のための構造シミュレーションの見直しやダンパーを新たに開発することに時間を要した.現在はこれらの問題をクリアしロケットの打ち上げを目前にしている. 当初計画では研究期間内に2回の打上げを実施する予定であったが,上記のような計画遅延のため研究期間内には初回打ち上げのみ実施する.今後は2回目の打上げを実施できるよう予算獲得への尽力と速やかな観測装置の改修を実施する.
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Strategy for Future Research Activity |
これまで,CIBER-2観測装置を光学系を中心として開発を進めた結果,2019年に打上げが実施できる状態にまで装置が完成した.今後は実験場所をロケット組立て基地(Wallops)や打上げ基地(White Sands)に観測装置を輸送し,最終的な感度校正や調整および振動試験等を実施したのち,2019年7月に打上げ・観測を行なう予定である. 打上げ後はパラシュートによる観測装置の回収を行ない,オンボードメモリに書き出した観測データを回収する.観測装置は次回の打上げにむけて必要な修理や改修を行なう. この初回実験について,装置開発や実験の実施にかかわる学術論文をチーム内で分担し早急に出版する.観測データについては研究チーム内で解析を分担しさまざまな科学側面における学術論文を多数出版する.
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Research Products
(13 results)
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[Journal Article] MIRIS observation of near-infrared diffuse Galactic light2018
Author(s)
Onishi Yosuke、Sano Kei、Matsuura Shuji、Jeong Woong-Seob、Pyo Jeonghyun、Kim Il-Jong、Seo Hyun Jong、Han Wonyong、Lee DaeHee、Moon Bongkon、Park Wonkee、Park Younsik、Kim MinGyu、Matsumoto Toshio、Matsuhara Hideo、Nakagawa Takao、Tsumura Kohji、Shirahata Mai、Arai Toshiaki、Ienaka Nobuyuki
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Journal Title
Publications of the Astronomical Society of Japan
Volume: 70
Pages: 76 (14pp.)
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Presentation] 宇宙赤外線背景放射観測ロケット実験CIBER-2:プロジェクト進捗状況2019
Author(s)
佐野圭, 松浦周二, 太田諒, 瀧本幸司, 橋本遼, 檀林健太, 山田康博, 鈴木紘子, 古谷正希, 津村耕司, 高橋葵, 松本敏雄, 和田武彦, James Bock, Daehee Lee, Shiang-Yu Wang, CIBER-2 Collaboration
Organizer
日本天文学会2019年春季年会
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[Presentation] 宇宙赤外線背景放射観測ロケット実験CIBER-2:光学系性能評価2019
Author(s)
瀧本幸司, 松浦周二, 佐野圭, 太田諒, 橋本遼, 檀林健太, 山田康博, 鈴木紘子, 古谷正希, 津村耕司, 高橋葵, 松本敏雄, 和田武彦, James Bock, Daehee Lee, Shiang-Yu Wang, CIBER-2 Collaboration
Organizer
日本天文学会2019年春季年会
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[Presentation] OKEANOSのクルージングサイエンス2018
Author(s)
松浦 周二, 津村 耕司, 岩田 隆 浩, 岡田 達明, 吉川 真, 森 治, 中条 俊大, 松本 純, 矢野 創, 平井 隆之, 松岡 彩子, 野村 麗子, 米徳 大輔, 三原 健弘, 癸生川 陽 子, 伊藤 元雄
Organizer
第62回宇宙科学技術連合講演会
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