2018 Fiscal Year Annual Research Report
Regulation of synapse formation, maintenance, elimination and plasticity by C1q family proteins
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15H05772
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
柚崎 通介 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 教授 (40365226)
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Project Period (FY) |
2015-05-29 – 2020-03-31
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Keywords | ニューロン / シナプス / 神経回路 / グルタミン酸受容体 / 補体 |
Outline of Annual Research Achievements |
神経回路の基盤であるシナプス形成・維持・除去を制御する分子機構の解明を目指し、今年度も引き続き、以下の2つの目標の達成を進めた。 [目標1] 補体ファミリー分子によるシナプス形成・可塑性制御機構の解明 海馬CA1および歯状回においては、シナプス特異的にCblnファミリー(Cbln1/Cbln4)やGluDファミリー(GluD1/GluD2)分子がそれぞれ発現している。それぞれのシナプスにおけるこれらの分子の機能を解明するために、それぞれの遺伝子の単独および二重欠損マウスを作成して解析を進た。一方、シナプス可塑性制御機構としてはグルタミン酸受容体のエンドサイトーシスを光遺伝学的に制御することにより、小脳での長期抑圧(LTD)と運動学習との因果関係を初めて明らかにすることに成功した(Neuron, 2018)。またこれまでに謎であった、小脳LTDにおけるNMDA型グルタミン酸受容体の作用機序について明らかにすることができた(Cerebellum, 2018; J Physiol, 2018)。 [目標2] 神経活動・代謝・炎症による補体ファミリー分子の分泌調節機構の解明 ライソソームは、カテプシンB等のタンパク質分解酵素をもつ細胞内小器官であり、不要となった細胞内タンパク質の分解を担う。シナプス形成分子Cbln1が小脳顆粒細胞の軸索に存在するライソソームに局在すること、また神経活動が亢進すると、軸索からライソソームの内容物(タンパク質分解酵素カテプシンB)とともにCbln1が細胞外に分泌されることを初めて明らかにし、論文として発表した(Neuron, in press)。これまで神経活動に応じてどのようにシナプス再編が起きるのはよく分かっていなかったが、タンパク質分解酵素とシナプス形成分子の分泌によって、細胞外環境の破壊とシナプス形成が、協調して働く新しいメカニズムが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
シナプス形成分子Cbln1が小脳顆粒細胞の軸索に存在するライソソームに局在すること、また神経活動が亢進すると、軸索からライソソームの内容物(タンパク質分解酵素)とともにCbln1が細胞外に分泌されることを初めて明らかにし、論文として発表した(Neuron, in press)。この研究成果は次の3つの点で画期的であると考えるために、上記の自己評価とした。i)これまでにニューレキシンなどの多くのシナプス形成分子が報告されているが、神経活動に応じて分泌されることが明らかになったのはCbln1が初めての例であること。ii) タンパク質を分解する酵素をもつ細胞内小器官であるライソソームが神経活動に応じて軸索と融合し内容物を分泌することを初めて明らかにしたこと。iii)タンパク質分解酵素とシナプス形成分子を同時に分泌することによって、細胞外環境の破壊とシナプス形成が、協調して働くという新しい概念を提出したこと。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、前年度に引き続き以下の2つの目標の達成を目指すとともに目標3を進める。 [目標1]補体ファミリー分子によるシナプス形成・可塑性制御機構の解明 海馬CA1および歯状回におけるCblnファミリー(Cbln1/Cbln4)およびGluDファミリー(GluD1/GluD2)分子の機能解明をさらに進めて論文化する。また、これまでに明らかにした、成熟後の小脳においてC1ql1ーBai3シグナリング経路を駆動すると、プルキンエ細胞が再び複数の登上線維によって支配される現象については、その分子機構の解明を進め論文化の準備を進める。 [目標2]神経活動・代謝・炎症による補体ファミリー分子の分泌調節機構の解明 補体C1qは正常発達時や病的過程による過剰活性化によって、シナプス刈り込みを引き起こすことがこれまでに報告されていたもののそのシグナル伝達機構は不明であった。今年度は脳内においてこれまでに同定したC1q受容体候補の解析をさらに進め論文化を図る。 [目標3]補体ファミリー分子の操作による神経回路と個体行動の制御 前年度までに人工シナプス形成分子を開発し、小脳および海馬に投与することにより神経回路を変化させるだけでなく、個体レベルでの小脳失調やアルツハイマー病モデルマウスの表現型を大きく改善させることに成功した。また本分子は脊髄損傷後の治癒過程も促進することがわかってきた。今年度にはこれらの成果をまとめて論文化を進める。
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Research Products
(12 results)
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[Journal Article] PIP3-Phldb2 is crucial for LTP regulating synaptic NMDA and AMPA receptor density and PSD95 turnover.2019
Author(s)
Xie M-J, Ishikawa Y, Yagi H, Iguchi T, Oka Y, Kuroda K, Iwata K, Kiyonari H, Matsuda S, Matsuzaki H, Yuzaki M, Fukazawa Y, Sato M.
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Journal Title
Scientific Rep.
Volume: 9
Pages: -
DOI
Peer Reviewed
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