2016 Fiscal Year Annual Research Report
皮膚を場とする外的刺激に対する生体応答機構の包括的解明
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15H05790
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
椛島 健治 京都大学, 医学研究科, 教授 (00362484)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大日 輝記 京都大学, 医学研究科, 講師 (20423543)
國澤 純 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 医薬基盤研究所 ワクチン・アジュバント研究センター, プロジェクトリーダー (80376615)
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Project Period (FY) |
2015-05-29 – 2020-03-31
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Keywords | 皮膚免疫 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.マウス皮膚の包括的な可視化プロジェクト 生体の生理的機能を解析する際に、非侵襲的な三次元での皮膚の可視化は有用なツールとなる。研究代表者はこれまでに、一部の皮膚に存在する細胞や構成物の可視化に成功してきた(Kabashima et al. Nat Immunol 2014; J Exp Med 2014)が、免疫応答への関与が示唆される感覚神経、汗腺などの皮膚構造物の可視化の課題が残存している。本研究ではさらに、皮膚の構成細胞や構造物だけではなく、細胞機能を包括的に可視化し、その意義を解析できるシステムを、各種の遺伝子改変動物や蛍光プローブの作製・導入を通じて構築する。第1に各種皮膚構造物の可視化、第2に各種皮膚構成細胞と細胞機能の可視化を行い、第3に人工蛍光プローブ分子によるin vivoラベリングシステムを確立する。 2.外的侵襲に対するマウス皮膚の生体応答の包括的解明 研究代表者は、「各種外的侵襲に対して応答する上皮細胞由来の因子が、血管内皮細胞などの間質細胞や血管周囲マクロファージなどの免疫細胞に作用する事により、後毛細血管周囲に固有の細胞を集積させることによりiSALTを形成させ、特有の生体応答を誘導する」という仮説を考えた。この仮説に合致して、各種外的侵襲により、iSALTの形成維持期間や構成細胞などに違いがあることを既に確認している。今後さらに、各外的侵襲に対する上皮・免疫・間質細胞により形成されるiSALTの誘導機序とその役割の解明を図る。第1にiSALT形成における上皮・免疫・間質細胞の役割を解明する。第2に外的刺激に対するiSALTの生理・病態的役割を解明する。第3に皮膚常在菌による皮膚免疫応答の調整機構を解明する。第4に外的侵襲に対する皮膚と腸管における生体応答を比較検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
【皮膚炎に伴う血管から皮膚への抗体移行促進機序の可視化】(Ono, et al, JACI 2017; 2018) 天疱瘡などの自己抗体依存性臓器特異的自己免疫疾患では、循環血中の自己抗体が血管壁を越えて局所へ移行することで発症する。しかしながら自己抗体の血管外への移行がどのように制御されているかは十分に解明されていなかった。本研究では、PMAの塗布やテープストリッピング、紫外線照射などにより炎症を起こした皮膚ではiSALTが存在する後毛細血管において自己抗体の移行が著しく促進し、健常皮膚では自己抗体の移行を検出できない少量の注射でも移行がみられた。またこの移行は静脈内免疫グロブリン大量投与 (IVIG) により検出レベル以下に抑制できた。以上より、iSALT領域の血管が皮膚の炎症状態により抗体の移行を制御することを見出した。 【表皮のRIPK3はネクロプトーシスの誘導に依存しない新規機能を介して乾癬型の炎症に関与する】(Honda, et al, JACI 2017) 乾癬において表皮細胞の細胞死が発症初期に役割を果たすことが示唆されていたが、その本態は明らかではなかった。RIPK3は細胞死の新しい形態のひとつであるネクロプトーシスに必須の細胞内シグナル分子である。本研究では、ヒトの乾癬およびイミキモド塗布によるマウス乾癬モデルで、RIPK3の発現が促進する一方でネクロプトーシスは必ずしも増強しないこと、RIPK3欠損マウスに乾癬を誘導した場合、CXCL2, IL-1, IL-24など、乾癬の発症に重要な役割を果たすケモカインやサイトカインの産生が減弱し、結果として発症が抑制されることを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
1) iSALT形成における上皮・免疫・間質細胞の役割の解明 上皮・免疫・間質細胞の3つの観点から、各種外的侵襲によるiSALTの形成とその構成細胞の役割を検証する。表皮角化細胞について、生理活性物質の発現、pH変化、Ca2+上昇などの多彩な一次応答を評価するためのin vivoモニタリングシステムを確立する。次に、各種外的侵襲に対するiSALT形成とその特徴を解析し、iSALT形成に関与する上皮由来の因子を同定する。さらに、血管内皮細胞と血管周囲マクロファージに着目して、これらの因子がiSALTの構成細胞や形成に及ぼす影響をin vitro, in vivoで検証する。 2) 外的刺激に対するiSALTの生理・病態的役割の解明 マウス皮膚疾患モデルとして、研究代表者の研究室で確立している一次刺激性皮膚炎、ハプテン感作接触皮膚炎、タンパク抗原によるアトピー性皮膚炎、各種刺激による尋常性乾癬モデルを用いる。フローサイトメトリーと生体イメージング法を用いて、各疾患モデルにおける皮膚への各浸潤細胞の同定と局在を明らかにし、さらにiSALTの観点から解析する。また長年未解決の問題であった「皮膚という末梢臓器におけるナイーブT細胞への抗原提示」や、「細胞のIgEなどへのクラススイッチの可能性」に対する解答をiSALTの観点から解き明かす。
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Research Products
(19 results)