2015 Fiscal Year Annual Research Report
深海底熱水孔における優占微生物の環境適応戦略の多角的研究と地球環境修復への展開
Project/Area Number |
15H05991
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
美野 さやか 北海道大学, 水産科学研究科(研究院), 助教 (00755663)
|
Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
|
Keywords | N2O / 亜酸化窒素 / NosZ / Epsilonproteobacteria / Hydrogenimonas |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、深海底熱水孔環境に優占する微生物の環境適応を多角的に解明し、地球環境修復に利用可能な遺伝資源として応用する基盤を構築することにある。平成27年度は、深海底熱水活動域由来のN2O還元能を有する微生物群集の1. 群集構造解析、2. N2O還元活性の測定、および3. 鍵酵素をコードする遺伝子配列解析を中心的に進め、以下の結果を得た。 ・N2O還元条件下で培養した微生物群集の16S rRNA遺伝子に基づくクローンライブラリー解析の結果、すべてのクローンはEpsilonproteobacteria綱 Hydrogenimonas属に帰属したものの、その塩基配列間にはわずかな差が認められ、種内の多様性が存在することが示唆された。さらに、どのクローンも既知種との相同性は約95%と低く、N2O還元活性を有する微生物群集は新規性が高いものであることが推測された。しかしながら、本微生物群集から単一の株を取得するには至らなかった。 ・Hydrogenimonas属のゲノム情報は皆無であるが、近縁種のゲノム情報を基にN2O還元酵素NosZをコードする遺伝子を対象としたプライマーの設計を行い、nosZ遺伝子塩基配列の多様性解析を試みた。16S rRNA遺伝子に基づく解析では種内レベルの多様性が認められたものの、NosZ遺伝子の塩基配列は単一のものであった。 ・攪拌培養によってN2O還元微生物群集のN2O還元量が、静置培養と比べて大幅に増加することを明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度中に、種内レベルの多様性が認められるN2O還元微生物群集であることを明らかにし、ゲノム情報がないHydrogenimonas属のnosZをターゲットとしたプライマー作成に成功し、遺伝子情報を取得できた点が評価できる。平成27年度に予定していた、化学合成独立栄養微生物における鍵代謝(炭酸固定、硫黄酸化、水素酸化)の遺伝子配列解析およびその生理活性測定が遅れているものの、次年度に予定していたN2O還元活性条件の至適化について、攪拌培養が有効な手段のひとつであることを明らかにした点は、今後の研究を進める上で大きな進展であることを鑑み、上記判断とした。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後、以下の点に焦点を当て推進する予定である。 ①N2O還元活性を有する多用な化学合成独立栄養微生物の網羅的探索 ②N2O還元活性条件(培養温度、攪拌速度、細胞密度等)の評価および至適化 ③様々な培養条件(温度、エネルギー基質)下で、N2O還元能を有する新規Hydrogenimonasの純粋分離 ⑤鍵代謝の生理活性測定および遺伝子配列の多様性解析
|