2015 Fiscal Year Annual Research Report
母体腸内細菌叢の変化を介した環境要因の次世代健康影響の解明
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15H06087
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
櫻井 健一 千葉大学, 予防医学センター, 准教授 (80323434)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | 環境影響評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、環境化学物質を含む環境要因が妊娠中の女性の腸内細菌叢にどのような影響を与え、さらにその変化が児の健康に与える影響を明らかにすることを目指すものである。本年度は出生コホートにおいて、参加者の登録および母児の糞便を含む生体試料の採取および、一部検体の腸内細菌叢解析を行った。本コホート研究は、妊娠13週未満の妊婦を対象とした。参加者登録は平成28年6月に終了し、確定した。本コホート研究のプロトコール及び参加者プロフィールをまとめ、国際誌(BMJ Open)に報告した。本コホート参加者は、433名であり、平均年齢32.5 (±4.4) 歳、平均body mass index (BMI) 21.1 (±3.0) kg/m2であった。妊娠初期の喫煙率は5.0% であった。平成28年1月に全参加者の出産が終了し、妊娠中及び出産までの生体試料の採取が完了した。本研究では、母体血、臍帯血、臍帯、母児糞便、母乳を採取している。妊娠中及び出産時の調査票に関しては現在入力中であるが、一部解析を開始した。腸内細菌叢の解析では、妊娠初期及び後期における腸内細菌叢の変化を検討したところ有意な変化は認められなかった。原因として解析例数が少ないためと考えられ、今後腸内細菌叢解析の例数を増やす予定である。パイロット的な解析であるが、腸内細菌叢が児に与える影響について、臍帯血インスリン値およびレプチン値との関連を検討した。臍帯血インスリン値は平均3.73μIU/mLであり、レプチン値は平均7.58ng/mLであった。腸内細菌叢の門と臍帯血インスリン値およびレプチン値には有意な相関は認められなかった。こちらに関しても解析例数が少ないため、今後解析例数を増やす予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は出生コホートのリクルート及び生体試料の収集が中心となった。コホートのリクルートは平成27年6月に終了となり、参加者数は433名となった妊娠中のアンケートは376名より回収でき、回収率は87%であった。小児の肥満、アレルギー及び発達障害の有病率を考慮すると妊娠中の曝露因子とこれらの病態との関連を検討する上では十分なサンプルサイズと考えられた。本コホート研究の研究プロトコール及び参加者プロフィールをまとめた論文が国際誌(Sakurai K et al. BMJ Open 6:e010531, 2016)に掲載された。また、生体試料として、母体血(前期・後期)、臍帯血、臍帯、母乳、母児糞便の採取を行った。全参加者が平成28年1月までに出産し、出産までの生体試料の収集も順調に完了した。腸内細菌叢の解析に関しては、妊娠中母体の一部サンプルを用いて解析を開始した。妊娠中の腸内細菌叢の変化を解析したところ有意な変化は認められなかった。新生児に関しては、一部のサンプルを用いて臍帯血中のインスリン値およびレプチン値の測定を行った。腸内細菌叢と臍帯血インスリン及びレプチン濃度との関連を検討したが、有意な相関は認めなかった。 上記のように、ほぼ当初の計画の通り、解析は進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在まで、質問表および生体試料の収集は順調に進んでいる。質問表は解析可能なデータセットにしていく必要があるが、平成28年度は妊娠前期・後期及び出産時までの質問表、医療機関調査票のデータセットを作成し、解析を進めて行く予定である。これらの質問表はほぼ収集が終わっており、コンピュータへの入力を漸次進めて行く。これらの質問表には、食事評価を目的とした簡易型自記式食事歴法質問票(BDHQ)も含まれており、今年度は環境要因としての食事習慣を解析予定である。腸内細菌叢解析に関しては、解析例数を増やすことを予定している。今年度は100例の解析を目指している。腸内細菌叢の解析を行った後、食事習慣との関連を解析する予定である。腸内細菌叢解析に関しては、解析のスケールアップに対応した実験系の確立が必要である。申請者の研究室に置いてスケールアップへの対応が困難となった場合は、理化学研究所の腸内細菌叢解析グループより支援をいただく予定である。 また、腸内細菌による児への影響を評価するため、出生体重、臍帯血インスリン濃度・レプチン濃度、臍帯DNAメチル化との関連を検討する予定である。臍帯DNAメチル化の解析は、DNAメチル化解析用アレイおよびメチル化 感受性高解像能融解曲線分析にて行う予定である。アレイ解析に関する機材は申請者が所属する千葉大学予防医学センターが保有しているため、解析は可能な状態となっている。 腸内細菌叢データと上記の質問表データ、血液データ、DNAメチル化データとの関連を統計学的に解析して行く予定である。
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Research Products
(1 results)