2015 Fiscal Year Annual Research Report
回帰不連続デザインにおいて非古典的測定誤差がもたらす影響の研究
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15H06214
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
柳 貴英 一橋大学, 大学院経済学研究科, 特任助教 (30754832)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | 経済統計学 / 計量経済学 / 政策評価 / 因果推論 / ノンパラメトリック |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、回帰不連続デザインのすべての観測変数が観測上のエラーをもちうる状況において、政策効果や因果効果を識別・推定可能か否かを明らかにすることであった。 平成27年度に実施した具体的な研究内容は2点存在する。 第1に、本研究が着目する計量経済モデルにおいて、回帰不連続デザインで通常考えられる推定量がどのようなパラメータを識別・推定するのかを理論的に解明した。具体的には、観測上のエラーの影響を受けない、ある部分母集団についての政策効果を、通常の推定量が識別・推定することを示せた。この結果は観測できる変数がエラーを含むか否かが明らかでない現実の実証分析において、回帰不連続デザインを利用できる場合にはある種の因果効果を推論できることを意味する意義ある結果と考えられる。ただし、当該パラメータは回帰不連続デザインにおける通常の因果効果パラメータとは一般に異なるため、その解釈には注意を要する。本研究では、そのような解釈についても考察している。 第2に、理論的に解明した結果の妥当性を確かめるために、シミュレーション計算機実験を実施した。シミュレーション計算機実験の結果は、理論的な結果から予想されるものにおおよそ一致することを確認できた。近年の計量経済学では理論的に解明した結果の実際的なパフォーマンスをモンテカルロ計算機実験や現実の経済データにもとづく実証分析で確認することが重要となっている。本研究における計算機実験も意義ある研究実績と考えている。 平成27年度はひとつめの研究成果を主な貢献内容としてまとめた論文を「一橋大学機関リポジトリHERMES-IR」に掲載するとともに、当該論文を計量経済学分野の国際学術雑誌に投稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの研究計画はおおむね予定どおりに進展している。 しかし、研究実施計画に記載した第3の研究目的である、回帰不連続デザインにおける通常の政策効果パラメータを識別・推定するための方法の開発は、平成27年度内には達成できなかった。その主な原因は、操作変数や繰り返し観測値の存在を仮定したとしても、観測上のエラーが存在する状況における、パラメータの識別・推定は容易でないことにある。 平成27年度内に達成できなかった研究計画は、引き続き、平成28年度に実施することにしたい。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度には2つの研究計画を予定している。 第1に、平成27年度内に執筆した論文の改訂を行う。当該論文は平成27年度末時点において国際学術雑誌に投稿中であり、平成28年度内には雑誌の編集者および査読者のレポートを得られる予定である。当該レポートに書かれたコメントを参考に、論文の改訂および再投稿を行うことを予定している。 第2に、平成27年度内には実施できなかった研究計画を引き続き実施する。具体的には、操作変数などの追加的な変数の利用可能性を考えたもとで、引き続き、回帰不連続デザインにおける通常の政策効果パラメータの識別・推定方法の開発を検討する。新しい識別・推定方法を開発できたあかつきには、開発手法の現実的なパフォーマンスを評価するためのモンテカルロ計算機実験も実施する。 平成28年度末には、これらすべての研究成果を新しい論文としてまとめ、計量経済学分野の国際学術雑誌に投稿することを予定している。
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Research Products
(2 results)