2015 Fiscal Year Annual Research Report
電力機器の高耐圧化を目指した微小空間領域における絶縁破壊メカニズムの解明
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15H06222
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
岩渕 大行 横浜国立大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50757341)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | 沿面放電 / マイクロギャップ / 仕事関数 / 二次電子放出係数 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年の微細加工技術の発達に伴い、気体中や絶縁物表面の微小ギャップにおける絶縁破壊現象が大きな問題とされるようになった。特にマイクロアクチュエータに代表されるようなトルク出力が要求されるMEMS デバイスでは、出力が電界強度によって決定されるため、μm~nm オーダのギャップ間の絶縁の把握が重要な鍵となる。本研究においてはMEMS デバイスを模擬したSiO2 ウェハ上のマイクロ沿面ギャップにおける放電機構を検討した。 本年度は以前実験で用いたSiO2ウェハの誘電体表面における二次電子放出係数、及び電極材料であるW,Al,Ti表面における光電子放出の測定を行った。光電子放出は電極材料表面における仕事関数を表す。その結果、電極材料表面における光電子放出係数は文献値と比較して大きな値を示し、表面のわずかな酸化が仕事関数、ひいては電極表面からの電界電子放出電流に大きな影響を与える可能性が示された。 また、誘電体界面における二次電子放出係数は入射電子エネルギー700eVでピークを持つことが分かった。 以上の結果を踏まえ、粒子法(PIC-MCC法)によるシミュレーションを実施すべく、シミュレーションソフトウェア"PEGASUS"を導入し、シミュレーションモデルの構築を開始した。来年度は、本年度実験により取得した二次電子放出係数および仕事関数データを境界条件に組み込んだマイクロギャップ放電シミュレーションを実施する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はマイクロギャップ放電の電極材料、誘電体材料に特化した物性の測定を実施したため、比較対象として考えていた電力用エポキシ樹脂の物性測定は実施しなかった。 その分シミュレーションモデルの構築を先駆けて行い、次年度に本格的な放電物理モデル構築を行える見込みを得た。 以上の観点から、研究進捗はおおむね順調に進展していると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度構築を開始したシミュレーションモデルを基本として、雰囲気気体の圧力、印加電圧、極性をパラメータとしたマイクロギャップ放電のシミュレーションを実施する。 最終的にマイクロギャップ放電の物理モデルを考案し、微小ギャップを有するデバイスにおける新たな絶縁設計指針を提唱する。
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