2015 Fiscal Year Annual Research Report
マイクロRNA-33の骨髄機能および慢性炎症における役割の検討
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15H06335
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
馬場 理 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), その他 (30758446)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | マイクロRNA / 単球 / 造血幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、マイクロRNA(microRNA; miR)という20塩基程度の遺伝子をコードしないRNAが内在性に存在し、標的としたmRNAの翻訳を抑制することによって種々の遺伝子発現を精巧に調節していることが明らかになってきた。その中でも、miR-33はコレステロール代謝遺伝子を制御する転写因子であるsterol regulatory element binding protein 2 (SREBP-2)のイントロンに種を超えて高度に保存され、コレステロール輸送蛋白であるATP-binding cassette A1(ABCA1)を標的として抑制し、血中HDLコレステロール値を低下させることが報告されている。我々のグループにおいて、このmiR-33の欠損マウスを作製したところ、マクロファージおよび肝臓におけるABCA1の発現上昇、マクロファージにおけるアポA-Iに対するコレステロール引き抜き能の増加、血中HDLコレステロール値の上昇を認めた。また、miR-33/アポE両欠損マウスにおいてはアポE単独欠損マウスに比して動脈硬化形成が抑制されることも判明している。しかしながら一方で、上記両欠損マウスにおいて末梢血中の炎症性単球の割合が上昇していることも見出している。この炎症性単球の割合の上昇は、動脈硬化形成に対して負に作用する可能性があり、現在これについて解析中である。現在までに、miR-33単独欠損マウスにおいては、①miR-33/アポE両欠損マウスとは逆に末梢血中の炎症性単球が減少していること。②骨髄中では逆に増加していること。③骨髄中の造血幹細胞分画およびその下流の前駆細胞が増加していること。④造血幹細胞分画においてアポトーシスが減少していること。⑤2,3,4においては血球系由来の表現型であり、1については血球系以外の由来であることが判明している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
miR-33単独欠損マウスの末梢血中では、アポE欠損マウスと掛け合わせた場合とは逆に炎症性単球が減少していた。一方、骨髄内では末梢血中とは逆に炎症性単球は増加しており、miR-33欠損マウスにおいては骨髄中からの単球移出が抑制されていることが示唆された。さらに、骨髄において造血幹細胞を含有するLSK細胞分画、およびその下流の顆粒球、単核球、赤血球、血小板の前駆細胞(CMP, GMP, MEP)の増加が認められた。造血幹細胞数を規定する因子としては、自己複製、アポトーシス、分化、髄外移送などが考えられるために、これらについてそれぞれ検討したところ、Annexin Vを用いた解析においてmiR-33欠損マウスのLSK細胞分画でのアポトーシスが減少していることが判明した。次に、これらの表現型の由来が血球系によるものか、また血球系以外によるものかを骨髄移植モデルを用いて解析を行った。骨髄移植によって①血球系もそれ以外も野生型、②血球系はmiR-33欠損、それ以外は野生型、③血球系は野生型、それ以外はmiR-33欠損型、④血球系もそれ以外もmiR-33欠損型の4群のマウスを作成した。それぞれの群について解析を行ったところ、造血幹細胞およびその下流の前駆細胞、骨髄中の炎症性単球の増加が①,③群において認められ、造血幹細胞由来の表現型と考えられた。また、末梢血中の炎症性単球については③,④群にて減少を認め、骨髄から末梢血への炎症性単球の移出の抑制については、血球系以外の要因が原因となっていると考えられた。さらに、競合的骨髄移植法を行った。同一ドナーに野生型およびmiR-33欠損型の骨髄を1:1で移植したところ、miR-33欠損型骨髄由来の造血幹細胞およびその下流の前駆細胞、末梢血中の白血球の割合が野生型のそれを上回ることが確認できた。
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Strategy for Future Research Activity |
造血幹細胞およびその下流の前駆細胞、骨髄中の炎症性単球の増加については、造血幹細胞由来の表現型と考えられた。フローサイトメトリーによってLSK細胞分画を採取し、そこからRNAを抽出する。バイオインフォマティクスによって表現型の原因と思われる遺伝子群を同定し、そのmRNAの発現量について定量的PCRを行って分析を行う。予想通りに発現上昇の認められた遺伝子については、フローサイトメトリーの蛍光強度によってタンパク発現も上昇していることを確認する。バイオインフォマティクスによって選定した遺伝子群に変化がなかった場合はLSK細胞より抽出したRNAを用いて、マイクロアレイによって網羅的に解析を行い、標的遺伝子の同定を試みる。炎症性単球の骨髄から末梢血中への移送の抑制については血球系以外の表現型であると考えられた。まずはmiR-33欠損マウスの最も顕著な表現型である、血中HDLコレステロールの増加で説明できるか検討を行う。HDLコレステロールの影響で表現型の説明ができない場合は、造血幹細胞のニッチとして作用する間葉系幹細胞の初代培養細胞を採取し、やはりバイオインフォマティクスによって標的遺伝子群を予想し、mRNAの発現量について解析を行う。 表現型を来たすmiR-33の標的遺伝子同定後は、その標的遺伝子の発現を抑制し、表現型が消失するかを確認する。標的遺伝子欠損マウスの入手が可能であれば、miR-33欠損マウスとかけ合わせることによって両欠損マウスを作成。miR-33単独欠損マウスをコントロールとして表現型が消失しているかを検討する。また、造血幹細胞由来の表現型については、レンチウイルスを用いた標的遺伝子のノックダウンも考慮する。
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Research Products
(1 results)