2015 Fiscal Year Annual Research Report
スマートフォンによる注意バイアス修正法:不安・抑うつ合併患者への応用に向けた試み
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15H06656
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Research Institution | Japan Lutheran College |
Principal Investigator |
上田 紋佳 ルーテル学院大学, 総合人間学部, 助教 (60707553)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | 注意バイアス修正法 / 不安 / 抑うつ / スマートフォン |
Outline of Annual Research Achievements |
精神障害には合併症が多く存在し,特に不安障害とうつ病は併発することが多い。将来的に合併を治療するための手立てを確立するため,合併症患者の性質を考慮した新たなアプローチ方法の開発と,不安と抑うつが合併する場合の自動的な処理のメカニズム解明が必要とされている。本研究は,自動的な処理に介入する治療法であり,不安障害患者の不安を低減する効果が報告されている注意バイアス修正法によるトレーニングを,大学生を対象として不安・抑うつ合併群と高不安群に実施し,両群への有効性の違いを明らかにすることを目的としている。 平成27年度は,注意バイアス修正法の効果をより高めることを目的に,合併群や高不安群にとって最適な刺激を明らかにするため,注意バイアス修正法で使用する刺激の予備調査を行い,刺激のデータベースを作成した。 日本における感情語のデータベースは,感情価または覚醒度のどちらか一方を調査しており,両者を同一の参加者に評定させたものはこれまでなかった。したがって,本研究で作成した感情語のデータベースは,従来のものと比べて,より精度の高いデータベースであるといえよう。近年,感情語を用いた研究は幅広く行われており,臨床心理学領域における精神障害者の情報処理過程に着目する研究以外に,認知心理学,社会心理学などの領域においても本データベースは活用されることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り,平成27年度はデータベースの作成にあたり,注意バイアス研究で使用されている刺激や感情価をもつ単語のデータベースから,中性語とネガティブ語の漢字二字熟語を収集した。そのプールから,出現頻度を統制した二字熟語の感情価および覚醒度の予備調査をネット調査により行った。また,評定者の特性不安も同時に測定し,高不安群と低不安群で評定値に顕著な違いが見られる刺激を特定した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は,昨年度作成した刺激のデータベースを使用して,スマートフォンによる注意バイアス修正法トレーニングを実施する。注意バイアス修正法トレーニングを行うためのアプリは現在のところ,iOSに対応したものしか準備できていないため,まずは,アンドロイドに対応したアプリを作成することが大きな目標である。次に,実験参加者のリクール方法を確立することも重要な目標である。トレーニングは1か月以上にわたるため,トレーニングの途中でドロップアウトする参加者が一定数生じてしまう。そのため,実験の実施には,多くの実験参加者の確保が必要となる。しかしながら,大学生を対象とする場合,試験や長期休暇の影響を強く受けることが懸念される。したがって,大学生以外の参加者をネット調査などから募集することを検討したい。
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