2015 Fiscal Year Annual Research Report
アリストテレスの問答法の理論とその発展的解釈の研究
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15H06815
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Research Institution | Tokuyama College of Technology |
Principal Investigator |
高橋 祥吾 徳山工業高等専門学校, 一般科目, 准教授 (10758337)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | アリストテレス / 問答法 / 論証 / 弁論術 / トポス / トポス論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,アリストテレスの『トポス論』での問答法には理論的な不備が存在し,その不備を修正し,問答法の理論を改訂した可能性を検討し,明らかにすることを目的にしている.このとき,改訂された問答法は『弁論術』において展開されているという解釈を行っている.本年度は,『トポス論』における問答法の不備について明確にすること,改訂された問答法の理論と『トポス論』における問答法の差異と共通点の明確化.さらに,それらが論証の理論と関連があることを明らかにした. 本研究では『弁論術』のトポスが「共通」のトポスと「固有」のトポスの二つに分けられることに着目し,この区別の方法は『トポス論』の問答法には見られないことに注目している.ただし,『トポス論』においては,利便性の高いトポス,あるいは普遍的なトポスというものが存在することがアリストテレス自身によって指摘されている.このトポスの具体例は,『弁論術』の共通のトポスの具体例と同じものである.したがって,アリストテレスは『トポス論』のトポスの役割を一部引き継ぎつつ,共通と固有という対立関係によって位置づけ直したと考えることができるだろう.その一方で『分析論後書』の論証理論のなかでも,固有と共通の対立関係が論証の原理に適用されている.『弁論術』では論証理論は問答法や弁論術に対置・比較されることで,特徴づけられている. そして,この共通と固有の区別は,たまたま論証と弁論術や問答法において用いられたとは思われない.というのも,アリストテレスは弁論術の固有トポスをよりよく厳選していくことで論証の原理が得られるとしているからである. 以上の研究は,『比較論理学研究』(広島大学比較論理学プロジェクト研究センター研究成果報告書)にて発表した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在までの進捗は概ね順調だと言える.予定した通りの成果を出せているを判断している.しかし,「稍遅れている」としているのは,今後の計画が順調に進むかが,以下の二つの理由で不明瞭だからである.ひとつは,論証の原理と,問答法のトポスの関係について,当初計画していたよりも,より深い関係性を明らかにすることができるかもしれないと思われる.そのため今後この点を明らかにしようとすれば予定よりも遅れる可能性がある. 二点目は,今後の計画に入っている解釈の確からしさを補強する具体例について検討する予定であるが,M.Fredeの研究が,その具体例の検討に関して再検討を促す内容のため,具体例の検討に時間を必要とする可能性がある.というのは,Fredeの研究では,従来問答法の実例と考えられてきたものを否定しているからである.この点を再検討する必要があるため,予定通りに行かない可能性がある.
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Strategy for Future Research Activity |
計画では,問答法の変化が本質的であるかどうかの検討と具体例の検討を行うことになっている.現在の状況から,本質的な変化の有無については,問答法のトポスと論証の原理の関係性を重視する方向で,本質的な変化があることを示せるのではないかと思われる.論証の原理と『弁論術』のトポスがより深い関係性を持っていることを示し,『トポス論』ではその関係が見いだせないことを示すことで,本質的な差異がある可能性を示したい.その一方で,具体例の検討は,当初想定したよりは例の数は少なくなるかもしれないが,実施していく予定である.
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