2015 Fiscal Year Annual Research Report
新規根粒制御因子CAMTAは共生シグナルの混線を防止するか?
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15H06863
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
山崎 明広 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 研究員 (50752953)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | 共生 / 根粒 / 菌根 / シグナル |
Outline of Annual Research Achievements |
1.CAMTA1が根粒共生、菌根共生のシグナル分岐に関与する可能性について、CAMTAが2つの共生シグナルの混線防止装置であるという仮説に基づいて検証を行った。根粒共生特異的に発現が誘導されるNIN遺伝子の発現量と発現パターンについて、camta1変異体に菌根菌を感染させて調査した結果、明らかなNINの発現誘導あるいは発現パターンの変化は観察されなかった。この結果は、CAMTA1が根粒、菌根共生のシグナルを分岐させるスイッチとして機能しているのではないことを示唆している。 2.CAMTA1特異的あるいは複数のCAMTAに影響する可能性のあるRNAiコンストラクトを使用して共生変異体の菌根共生能を調べたところ、後者で菌根共生が一部復帰した。これは菌根共生を制御するCAMTAが存在する可能性を強く示唆している。詳細な調査に向けてCAMTA1と比較的近いCAMTA2、3をクローニングした。また、レトロトランスポゾン挿入株をデータベースから探索し、種子の取り寄せを行った。 3.共通共生シグナル経路の変異体でCAMTA1をノックダウンし、その遺伝的ヒエラルキーを調査した。結果、CAMTA1は核膜タンパク質CASTOR/POLLUXと、共生シグナルの中核を成すCCaMK/CYCLOPSの間で機能することが示唆された。また、蛍光タンパク質を融合させたCAMTA1を植物で発現させたところ、核に局在することを明らかにした。さらにCAMTA1プロモータでβ-グルクロニダーゼを発現させ、根粒共生におけるCAMTA1の発現パターンを明らかにした。これらの結果は今後CAMTA1の作用機序を明らかにする上で必要不可欠な情報である。加えて、より詳細な表現型の解析等に向けてcamta1変異体と共生変異体との掛け合わせを行い、F1種子を得るとともに、castor変異体との掛け合わせでは二重変異体を得ている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画書に従い、平成27年度は主に以下の項目について研究を行った。 1.「共生シグナル分岐へのCAMTA1の関与の調査」として、camta1変異体における菌根共生条件での根粒共生特異的な遺伝子発現を調べた。 2.「根粒共生に関与するCAMTAの探索」として、主にCAMTA1特異的あるいは複数のCAMTAに有効であると考えられるRNAiコンストラクトを用いて共通共生シグナル経路の変異体でノックダウンを行い、菌根共生表現型を調査した。 3.「CAMTA1の機能、性状解析」として、CAMTA1の遺伝的ヒエラルキーの調査、蛍光タンパク質を利用したCAMTA1の局在解析、CAMTA1プロモータの時空間的パターンの調査を行った。また、camta1変異体と共生変異体との掛け合わせを行った。 根粒共生特異的な遺伝子発現を調査した結果は、予備実験をもとにした仮説を支持するものではなかった。一方、共通共生シグナル経路の変異体でRNAiを行い菌根菌表現型を調べたところ、菌根共生に関与するCAMTAの存在が強く示唆された。また、CAMTA1は核膜タンパク質CASTOR/POLLUXと共生シグナル経路の中核を成すCCaMK/CYCLOPSとの間で根粒共生制御を行うことが分かった。これらの結果はCAMTAファミリーが共生シグナルの分岐に関与することを示唆するものである。 得られた知見に基いて「CAMTAがどのように共生シグナル分岐に関わるか」というメカニズムについての仮説の修正を行うことは想定の範囲内であり、仮説の修正を行ったとしても効果的な実験結果を得られるように研究計画を構築してある。以上より、平成27年度の研究計画はほぼ予定通りに進捗した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、平成27年度の研究結果に基いてCAMTAによる共生シグナル制御メカニズムの仮説を修正し、これを検証する。 予備実験の結果を基に、菌根菌によって活性化される共通共生シグナルをCAMTA1が抑制することによって、根粒共生に特異的な遺伝子発現が菌根共生によっては誘導されない、という仮説を建てた。しかし、camta1変異体に菌根菌を接種しても、根粒共生特異的な転写因子NINの発現は誘導されなかった(平成27年度)ことから、仮説の修正が必要である。平成27年度の研究結果から、CAMTA1が抑制しているのは、既知の共通共生シグナル経路を経ずに根粒共生の中核因子であるCCaMKあるいはCYCLOPSを活性化する、未知のシグナル経路である可能性が示唆された。平成28年度は、CAMTA1の機能解析と根粒形成抑制機構の解明を引き続き行うとともに、CAMTA1が抑制していると考えられる未知のシグナル経路を明らかにする足がかりとなるようなデータを得たい。現在のところ、研究計画に含まれている「CAMTA1の活性化制御メカニズムの調査」が、未知のシグナル経路解明に繋がることを期待している。 申請時の研究計画は、CAMTAによる根粒共生制御のメカニズムを解明することで、CAMTAが根粒、菌根共生のシグナル分岐にどのように関わるかを明らかにするという方向性で組み立ててある。研究計画にあるように、「二重変異体の作出とその表現型の調査」、「菌根共生に関与するCAMTAの探索」、「CAMTA1のドメイン解析と活性制御メカニズムの調査」、「CAMTA1の相互作用因子の同定と解析」について、既に得られた知見を加味し、研究を行っていく。
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