2015 Fiscal Year Annual Research Report
グリア細胞由来のトランスグルタミナーゼによるアルツハイマー病の新規発症機序解明
Project/Area Number |
15J12259
|
Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
河邊 憲司 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
|
Keywords | アルツハイマー病 / ミクログリア / アストロサイト / トランスグルタミナーゼ / MFG-E8 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,仮説『アストロサイトによってアミロイドβ (Aβ)凝集が促進された後,ミクログリアによってニューロンが障害され,アルツハイマー病の発症に至る』の検証により,アルツハイマー病発症機序の解明を目的とした。目的達成のために課題を2つに分け,それぞれ検討した。 I. アストロサイトによるAβ凝集機序の解明 Aβ凝集にアストロサイトが関与するか調べるために,SDS PAGE法を用いてAβオリゴマーの形成を経時的に確認したところ,単なる培養メディウムよりもアストロサイトのコンディションメディウム中の方がオリゴマー形成日数が短縮されることがわかった。次に,Aβの凝集機序の詳細を検討するために,蛋白質架橋酵素であるトランスグルタミナーゼ(TG)に着目し実験を行った。TG阻害剤であるシスタミンを加えたAβ溶液を37℃でインキュベートするとオリゴマー形成が遅延し,Aβ凝集にTGの関与が示唆された。 II.ミクログリアの貪食によるニューロン障害の機序解明 Aβによって活性化したミクログリアはmilk fat globule EGF factor 8 (MFG-E8)を放出し,液中のMFG-E8によってニューロンを認識し,貪食することが報告されている。ミクログリアをAβによって刺激しMFG-E8発現を調べたが,変化しなかった。一方,ミクログリアとアストロサイトのMFG-E8発現を比較すると,ミクログリアはMFG-E8のロングフォームのみの発現であったが,アストロサイトはロングフォームが強く発現し,さらにショートフォームも発現していることが確認された。次に,ミクログリアによるニューロン障害を評価するためにニューロン/グリア混合培養系を構築した。この混合培養系にAβを添加し免疫染色を行ったところ,ミクログリアによってAβは取込まれ,MFG-E8と共染色される像が観察された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アストロサイトの液性因子によってAβ凝集が促進され,凝集促進酵素としてTGの関与が示唆される結果を得ることができた。仮説1の検証は順調に進んでいるといえる。ミクログリアによるニューロン障害の機序に関しては実験系の構築に時間がかかり,仮説2は十分に検討できていない。よって「おおむね」とした。
|
Strategy for Future Research Activity |
計画書通りにアストロサイトのTGによるAβ凝集機序の解明およびミクログリアによるニューロン障害の機序の解明を行う。具合的には凝集に関与するTGのアイソザイムの特定や凝集Aβの性状を検討する。また,MFG-E8の詳細な機能や放出細胞を検討した後,ニューロン障害との関わりを調べる。さらに上記に述べたin vitroの実験と平行してin vivoの実験を行う予定である。ラットにAβを脳室内投与してアルツハイマー病モデルを作出し,Aβ投与前,投与前後,投与後の3群に分けてシスタミンを飲水投与して,行動実験および脳切片の免疫染色を行う。これらによってTG阻害によるアルツハイマー病の治療・予防効果を検討し,アルツハイマー病治療・機序解明の足がかりとする。
|
Research Products
(3 results)
-
-
[Journal Article] Mechanism for increased hepatic glycerol synthesis in the citrin/mitochondrial glycerol-3-phosphate dehydrogenase double-knockout mouse: Urine glycerol and glycerol 3-phosphate as potential diagnostic markers of human citrin deficiency.2015
Author(s)
Moriyama M., Fujimoto Y., Rikimaru S., Ushikai M., Kuroda E., Kawabe K., Takano K., Asakawa A., Inui A., Eto K., Kadowaki T., Sinasac DS., Okano Y., Yazaki M., Ikeda S., Zhang C., Song YZ., Sakamoto O., Kure S., Mitsubuchi H., Endo F., Horiuchi M., Nakamura Y., Yamamura K., Saheki T.
-
Journal Title
Biochimica et biophysica acta.
Volume: 1852 (9)
Pages: 1787-1795
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
-