2017 Fiscal Year Annual Research Report
ミトコンドリア内への過剰なCa2+流入を感知・抑制する蛋白質複合体の構造生物学
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15J40096
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
真板 綾子 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2015-07-29 – 2019-03-31
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Keywords | 蛋白質複合体 / X線結晶構造解析 / ミトコンドリア / カルシウム |
Outline of Annual Research Achievements |
ミトコンドリアへの過剰なCa2+取り込みの制御に関わるHAX-1-UCP3複合体に着目し、この複合体の構造機能相関研究を行った。これまでに、HAX-1とUCP3の相互作用領域がそれぞれC末端側領域HAX-1(211-280)とミトコンドリア内腔に存在するループ2領域(UCP3(165-175))であること及び両者の結合にはCa2+の存在が必須であること明らかにした。また、HAX-1(211-280)に関しては、Ca2+と直接結合すること及びその結合により大きな構造変化が誘起されることから、HAX-1(211-280)のCa2+結合を介した大きな立体構造変化がミトコンドリア内のCa2+濃度上昇の感知とUCP3との結合に関与している可能性を示唆した。前年度までに、HAX-1のカルシウム結合・膜結合に関わる残基の一部を同定することにより、カルシウムとの結合により膜結合性を獲得するという興味深い知見を得た。そこで、今年度は、膜と結合するHAX-1のC末端のαへリックス領域を取り除いたHAX-1(211-247)/(211-266)の発現系・大量精製系を構築し、その試料を用いてNMR法による相互作用解析及びX線回折実験に用いるための共結晶化を行った。NMR法では、HAX-1(211-247)/(211-266)はUCP3ループ2ペプチドと結合可能であること及びCa2+と結合しないことを明らかにした。これより、Ca2+非存在下では、アンフォールド状態のC末端側のαヘリックス領域が、HAX-1のUCP3結合領域をマスクしている可能性が考えられた。一方、HAX-1(211-247)/HAX-1(211-266)の大量調製を行い、UCP3ループ2ペプチドとHAX-1(211-247)/(211-266)の共結晶化スクリーニングを行ったが、回折実験に供する結晶は得られなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、HAX-1-UCP3複合体形成機構の解明を目指し、NMR法による相互作用解析及び共結晶化を精力的に行っている。前年度までに、HAX-1のカルシウム結合・膜結合に関わる残基の一部を同定し、カルシウムとの結合により膜結合性を獲得するという興味深い知見も得ている。今年度は、構造解析を困難にしているHAX-1の膜結合に関わるαヘリックスを除去したコンストラクトを二種類作成し、NMR法によるカルシウム結合、UCP3のループ2ペプチドとの相互作用解析を行った。興味深いことに、C末端側の膜結合ヘリックスを取り除いた領域では、UCP3ループ2ペプチドとの結合は保持するが、カルシウムと直接結合しないことを明らかにしている。したがって、カルシウム結合にはC末端側のヘリックス領域の残基が必要であることと、UCP3結合表面はカルシウム結合とは依存しないことがわかった。当初の結晶構造解析で複合体構造を明らかにする方向とは違う方向に進んでいるが、随所で興味ある成果が得られていることから、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までに、HAX-1の膜結合に関わるαヘリックスを除去したHAX-1(211-247)及びHAX-1(211-266)のNMRを用いたUCP3ループ2ペプチドとの相互作用解析の結果より、HAX-1のUCP3ループ2ペプチド結合に関わる残基はアミノ酸残基211-247の間にあり、その結合はカルシウムの有無に依存しないことを明らかにした。今後は、HAX-1(211-247)の13C/15N二重標識試料の調製し、三重共鳴法によるNMR測定を行い、主鎖の帰属を行う。この帰属の結果と、昨年度行った相互作用解析の結果から、UCP3ペプチド2との結合に直接関与するHAX-1の残基の同定を行う。一方、HAX-1のカルシウム結合に関しては、当初、HAX-1(211-247)の領域内にある酸性残基のみがカルシウムとの結合に関与していると考えていたが、上記のコンストラクトを用いたカルシウムとの相互作用解析より、カルシウム結合にはC末端側の領域の残基も関与することが明らかになった。そこで、今後は、カルシウム結合に関与しているC末端側の残基を変異体実験により明らかにする。以上のことより、UCP3とHAX-1の相互作用様式及びカルシウムの役割を明確にする。
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