2015 Fiscal Year Research-status Report
聴覚皮質における音の時間的構造情報の抽出機構の研究
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15K00234
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
堀川 順生 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50114781)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小島 久幸 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 講師 (00104539)
杉本 俊二 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50422811)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 聴覚皮質 / 時間非対称音 / 逆転音 / 反応選択制 / 抑制機構 / STRF(周波数時間応答野) |
Outline of Annual Research Achievements |
時間的に非対称な広帯域ノイズ様の自然音(F)とその逆転音(SR)に対する聴覚皮質の活動を微小電極法で記録し,音の時間的情報の処理機構について解析した.時間逆転音はスペクトル構造が同じでその時間経過のみが異なるため,時間情報に関する処理を抽出できる利点をもつ.8匹のモルモットの一次聴覚皮質(AI)から43個ニューロンの活動を記録した.動物はケタラールとキシラジンの混合剤で麻酔し(初回ketamine 20 mg/kg + xylazine 6.3 mg/kg,追加10 mg/kg/h + 3.7 mg/kg/h),頭部を固定後聴覚皮質を露出し,硬膜を除去した.タングステン微小電極を電動マニピュレータ(NARISHIGE)を用いてAIに皮質表面に垂直に刺入し,ニューロンの細胞外電位をシングルあるいはマルチユニットで記録した.取り込んだスパイクデータはLabChartソフトウェアを用いて,単一ユニットスパイクを分離し,応答をドットラスターおよびPSTヒストグラムで表示した.靴音に対する応答と逆転音に対する応答の大きさを比較するために,音の開始から50 ms間のスパイク数を計測し反応の選択性指数を求めた.反応選択性指数を用いてFとSRに対する選択性を調べると,49%のニューロンはFに,7%はSRによく応答し, 44%は同じ程度に応答した.皮質の深さ方向の分布を見ると,SRによく応答するニューロンはIV層で現れなかったが,浅層や深層では現れた.Fによく応答するニューロンはSRに対する応答が弱いが、その機構について逆転音の一部を消去した音に対する反応を調べ解析した.結果は先行する弱い音が後方の大きな音を抑制する機構が存在することを示唆した.STRF(周波数時間応答野)の記録も同時に行い、選択性指数とSTRFパターンとの比較について進めている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
次のような理由による。(1)モルモットの聴覚皮質から単一ニューロンの音に対する活動が細胞外電位で安定して記録できていること、(2)時間非対称音Fその逆転音SRに対する活動をドットラスターおよびPSTヒストグラムにより表示できるようになったこと、(3)FとSRに対する活動の選択性を選択性指数を用いて解析できたこと、(4)ニューロンの深さと応答パターンの比較できるようになっていること、(5)SRの分割音に対する応答を計測し、FとSRに対する選択性が現れる機構について考察が進んでいること、(5)STRF(周波数時間応答野)を計測できていることである。FとSRに対する選択性とSTRFパターンとの比較は今後の研究に残されている.
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の計画は順調に進展している,今後は計画書に沿って、Fに対する条件付け前および条件付け後の動物におけるFとSRに対する応答の選択性およびSTRFを計測し、データの比較を行う.これにより、条件付け後にニューロンの応答特性がどのように変化するのか、その変化はSTRFのどこに現れ、それが時間的応答特性とどう関係するかについて解析を行ってゆく.条件付けは研究分担者である小島講師の所(東京医科歯科大学)で行い、聴覚皮質ニューロンの応答の計測は本学(豊橋技術科学大学)で行う.マルチチャンネル計測装置を導入したので、今後ニューロンの応答計測の効率が上がることが期待される.
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Causes of Carryover |
実験が予定よりもうまく進んだため、使用予定の動物数が少なくなった.またそれに伴う医薬品および微小電極等の消耗品の量も少なくなった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額分の費用は、次年度では条件付け前と条件付け後の動物からの多くのデータを取る必要があるために、物品費(動物費および消耗品費)に充当する.さらに次年度の実験をより集中的に行う予定としており、前倒しでの研究費の使用を申請した.トータルで物件費が12,40千円の予定である.その他旅費35,0千円、人件費・謝金50千円、その他10,0千円で、総計17,40千円の予定である.
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Research Products
(1 results)