2017 Fiscal Year Research-status Report
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15K00334
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
泰中 啓一 静岡大学, 創造科学技術大学院, 客員教授 (30142227)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉村 仁 静岡大学, 創造科学技術大学院, 教授 (10291957)
宮崎 倫子 静岡大学, 工学部, 教授 (40244660)
上原 隆司 名古屋短期大学, 保育科, 助教 (40621660)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 生態系シミュレーション / 生物共生 / 進化シミュレーション / 格子ロトカボルテラ模型 / 最適化 / 進化ゲーム / 長寿企業 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで代表者が開発した「格子ロトカボルテラ模型」を引き続き研究してきた。代表者らが2017年以降アクセプトされた論文は、ほとんど格子ロトカボルテラ模型である。 (1)生態系モデルに対する交通流モデルの適用 動物は餌探索などの目的で移動する。これまで格子上の餌探索はランダムウォーク(RW)が主流であった。しかし、多くの捕食者は、RWとは異なり、長距離移動をする。このような長距離移動の効果を調べるため、交通流(一方向だけの移動)モデルを使った。交通流モデルの場合、RWの時とは大きく異なっていた。例えば、RWのときは、平均場近似理論と同じ結果に近づくが、一方向移動のときは平均場理論には近づかない。この理由は、渋滞による縞状の空間パターン形成が影響していた。また、動物‐植物系で、砂漠化の影響を調べたモデルでは、パラドクスも起きた。一般的に、砂漠化が進行すると植物の数が減少する。しかし、逆に増えることもある(パラドクス)。なぜなら、砂漠化が進行すると、動物が砂漠を渡り切る前に飢え死にするからである。このような、砂漠化によって起きる移動動物の悲劇は、これまでほとんど指摘されていなかった。 (2)メタ個体群モデルに対する複雑ネットワークの影響 複雑ネットワーク上で、Nodeを生息地と見なす「メタ個体群モデル」を考え、移動と生物多様性(絶滅)との関連を調べてきた。とくに簡単なジャンケンモデルを使って研究した。全Nodeの次数が同じ時、多種が共存できなかった。しかし、次数が異なる時、多種が共存できた。さらに、突然変異によって引き起こされる多様なパラドクスについても報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
格子ロトカボルテラ模型に対する新たな進展があった。これまで格子上の生物移動はランダムウォークが使われてきた。しかし、多くの生物は、長距離移動をする。代表者らは、長距離移動の影響を調べるために、交通流と生態系モデルを合体させた。結果は、従来とは大きく異なり、生物移動の新たな性質を議論してきた。また、ネットワーク上で、移動をさせた。各Nodeの次数が異なる時、さらに新たな結果を得た。 2017年以降、一年余りの投稿で、8編の論文がアクセプトされた。掲載された雑誌は、インパクトファクターの高い雑誌で、J. Theor. Biol. (2018掲載決定)、Scientific Reports (2018, 2017)、Physica A (2018, 2編)、BioSystems (Elsevier, 2017)、J. Phys. Soc. Japan(2018, 2017)などであった。
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Strategy for Future Research Activity |
次の2点に重点を置く。 (1)共生系の研究 様々な必須共生系を調べ、必須共生系における比率選択を生物学の一分野となるように努力する。これまで、茨城大の北出先生・三輪先生と共同研究を行い、比率選択の進化に確信を持つようになった。例えば、(a)サンゴと褐虫藻。サンゴの胃の壁に、褐虫藻が1つだけ入る部屋(細胞)が並んでいる。つまり、サンゴの部屋と褐虫藻は、1:1の比率関係であった。 (b)シロアリは、多様な腸内細菌と共生している。シロアリと各腸内細菌との比率が、種によって異なるが、ほぼ決まっている場合が多い。(c)ゾウリムシ:クロレラは、環境変動下においても、約1: 80が安定であった。本研究では、比率選択研究の重要性を世界に広める。 (2) 経営学と共生方程式 共生系方程式を使い、資産変動の長期予測を行う。次のシナリオを考える:(a) なぜ日本には多くの老舗企業が存在するのか? なぜ長寿になるのか?(b)下請企業の切り捨ては、短期的には得でも、長期的には損をする可能性がある。(c) 日本では、自動車メーカ数が諸外国よりはるかに多い。この理由を説明する。これらのシナリオを企業の協調行動によって分析する。経営の価値観が「拡大成長」から「持続可能」、また短期的視点から長期的視点に転換するよう提言する。
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Causes of Carryover |
私が責任著者(Corresponding author)として、Scientific Reports 等、2つのOpen Access論文を投稿中です。これら2つの論文は、きわめて重要と思い、Science等レベルの高い雑誌に投稿してきました。しかし、数回Rejectされてきたため、遅れてきました。 使用計画としては、Open Access論文誌への投稿料金です。
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