2017 Fiscal Year Research-status Report
気候変動による急速な高山植生変化の検出とそのメカニズム解明のモデル構築データ解析
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15K00524
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Research Institution | Rakuno Gakuen University |
Principal Investigator |
矢吹 哲夫 酪農学園大学, 農食環境学群, 教授 (50275484)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金子 正美 酪農学園大学, 農食環境学群, 教授 (00347767)
工藤 岳 北海道大学, 地球環境科学研究院, 准教授 (30221930)
星野 仏方 酪農学園大学, 農食環境学群, 教授 (80438366)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | レジームシフト解析 / 高山生態系回復実験 / 高山生態系回復モデル解析 / 相構造の回復 / 水文学 / 越冬バイオマス |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度の研究実績を踏まえて、研究分担者の工藤によるフィールドでの関連データ測定と生態系回復実験(ササの刈取り実験)についてのより整合性の高いモデル構築を行なった。即ち、高山生態系回復(希少な高山植生の回復)のメカニズムとして初期土壌水分の一定量の増加が相構造を変化させるという昨年度提起した基本メカニズムの上に、高山の土壌水文学的なダイナミクスを踏まえたより現実性の高いメカニズムを考えて、それに立脚したモデル解析を行なった。 具体的には、刈取り実験実行中の工藤とのディスカッションの結果、刈取りした翌シーズンの初期土壌水分量に、刈取りしたシーズン最後の土壌水分(終条件)の効果は残らず、各シーズン最初の水ダイナミクスでリセットされる可能性が高いという結論に達したことを受け、初期土壌水分量の経年変化をモデルに組み込むことで、刈取りによるササの越冬バイオマスの減少という形で翌シーズンの水ダイナミクスへの影響効果が残ることを検証すべく、モデルの再構築を行なった。 その結果、初期土壌水分量が刈取り効果によって漸次増加して、相構造の回復が実現する可能性を見出し、少なくとも一定期間安定的に高山植生が回復する可能性があることが判明した。この結果は直ちに秋の物理学会(環境物理学セッション)で発表し、またその後に武蔵野大学の数理工学シンポジウムに招かれて講演者の一人として報告した。 モデルに含まれるパラメータをフィールド現場での測定データを参照して現実的な領域に絞り込み、また一部モデルの改良も加えて、説明モデルからより定量的な分析モデルへ展開することで、研究期間の1年延長による今年度の最大の研究課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
7月末に研究代表者矢吹の健康課題が生じ、その為の検査、治療計画の検討、治療に2018年度後半の半年間を要したことが、研究進捗状態が「やや遅れている」ことの最大の理由である。研究実績の概要で記したように、高山土壌水文学的なメカニズムに基づいたより現実的なモデル再構築を行ない学会、招待講演での公表とディスカッションを行ったが、本来であればその後夏場に集積された研究分担者工藤による大雪フィールドでの測定データを参照して、モデルに含まれるパラメータをより現実的な領域に絞り込み、また一部モデルの改良も加えて、説明モデルから定量的な分析モデルへ展開することで、高山植生回復の方法論の提起を行なう予定だったが、それを実現出来なかったことが予定より「やや遅れている」具体的な理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究代表者矢吹が、平成29年度までの所属先である酪農学園大学を定年退職し、札幌市内に立地する北星学園大学の特別専任教授(任期5年間)として着任した。このことに伴い研究期間が1年延長された平成30年度、北星学園大学を新たな研究機関として、研究成果の完成を目指す。具体的には、研究実績の概要の最後に記したように、モデルに含まれるパラメータのフィールド現場での測定データの参照による現実的な領域への絞り込みと一部モデルの改良を加えて、説明モデルからより定量的な分析モデルへ展開することが、本研究の完成年度となる平成30年度の最大の研究課題である。同時に、平成29年度のこの欄に記していたように、研究分担者星野、金子による各々リモートセンシングの観測データ、GIS(地理情報システム)の観測データを総合的に解析して、現実的な予言能力を備えた最終的な分析モデルを完成させて、気候変動によって劣化した高山生態系の回復への具体的な施策へ寄与することを目標とする。
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Causes of Carryover |
平成29年度夏に生じた研究代表者の健康課題への優先的対応に伴い研究計画を一時休止し、定年退職により新たに所属することになった大学での研究活動再開を織り込み、本研究の完成年度となる平成30年度の使用額が生じた
平成30年度の主な具体的な使用計画として、平成29年度の夏以降に行う予定であった国際学会での成果発表、国際専門誌への投稿を行なうための、作画依頼費、旅費、参加費、投稿料、ネーティブチェック依頼費等を予定している。
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