2016 Fiscal Year Research-status Report
干潟における嫌気的硝酸還元過程に溶存有機物の質と量が与える影響
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15K00525
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
千賀 有希子 東邦大学, 理学部, 講師 (30434210)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 脱窒 / アナモックス / アンモニアへの異化型硝酸還元 / 干潟 / 富栄養化 |
Outline of Annual Research Achievements |
干潟は人間活動に由来するNO3-の負荷を大きく受け富栄養化や酸性化が危惧されている.干潟においてNO3-は,主に微生物によって脱窒,嫌気性アンモニア酸化(アナモックス),アンモニアへの異化型硝酸還元(DNRA)の3つの嫌気的硝酸還元過程によって消失する.脱窒とアナモックスはNO3-をN2として大気中へ放出する過程であり窒素の浄化に関与する.一方,DNRAは窒素を干潟内に留める貯留過程である.これらの過程は干潟内の栄養レベルを左右する重要な過程であるが,その進行は不明な点が多い.本研究では,富栄養化が進行する谷津干潟を対象に15Nトレーサー法を用いて堆積物中のこれら3つの嫌気的硝酸還元過程を追跡することを目的とする. これまでの研究において,谷津干潟堆積物中では圧倒的に脱窒活性が高く,アナモックスはほとんど進行していないことが示された.アナモックスが進行しない原因として1)堆積物中にアナモックス細菌が存在しない,2)アナモックス細菌は存在するが失活している,の2点が考えられた.したがって本年度の研究では,アナモックスの集積培養を行い,1)と2)について検討を行った. 集積培養は,常時NO3-濃度が5mgN/Lとなるように添加維持し,撹拌しながら3ヶ月行った.培養後,堆積物を上から1cmまでの層(表層)と4ー5cmの層(下層)に分け,脱窒とアナモックスの活性を測定した. 脱窒活性は,表層において14.8 μgN/gdry/day,下層では35.7 μgN/gdry/dayであった.一方,アナモックス活性は表層では2.5 μgN/gdry/day,下層では検出されなかった.表層のアナモックス活性は,現場の堆積物で測定した活性よりも高く,集積培養によってアナモックスが促進されたことが示された.したがって,谷津干潟堆積物にはアナモックス細菌は存在するが失活していると考えられた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アンモニアへの異化型硝酸還元(DNRA)活性の測定には至らなかったが,その点以外は計画通りに研究を遂行している.DNRAの測定法は現在検討中であり,測定法を確立後直ちに測定を開始する予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
DNRA活性測定に向けて15NH4+測定法を確立させる.その後,脱窒,アナモックス,DNRA活性の同時測定法を確立する.現場における3つのこれらの過程の進行を明らかにする.
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Causes of Carryover |
研究は順調に進んでおり,検討のための試薬や器具などにかかる予算が削減できた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
来年度は新たな分析法の確率に取り組むため,試薬や器具等を新たに揃える予定である.
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Research Products
(8 results)