2015 Fiscal Year Research-status Report
オントロジーを用いた環境共生への地域ストーリーの共同構築手法の開発
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15K00674
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Research Institution | Research Institute for Humanity and Nature |
Principal Investigator |
熊澤 輝一 総合地球環境学研究所, 研究高度化支援センター, 助教 (90464239)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木村 道徳 滋賀県琵琶湖環境科学研究センター, 総合解析部門, 研究員 (90573923)
鎌谷 かおる 総合地球環境学研究所, 研究部, プロジェクト研究員 (20532899)
岩見 麻子 愛知工業大学, 工学部, ポストドクトラル研究員 (80750017)
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Project Period (FY) |
2015-10-21 – 2018-03-31
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Keywords | 地域ストーリー / 環境共生 / 共同構築 / ストーリーデザイン / 対話 / オントロジー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、地域の将来設計において、環境共生社会とそこに至るストーリーを共同構築する手法を導入し、オントロジー工学の技術を援用しながら共同構築する新たな手法を開発することを目的としている。この目的を果たすために、平成27年度は以下の三項目を計画し、実施した。 (1) 過去・現在の地域の見かたを示す情報の収集:地域ストーリー構築のシーズとして、第一に、地域の自然・生活・歴史を象徴する古写真・郷土史・副読本等の文献資料を収集した。第二に、事例対象地で居住・勤務する様々な立場の若者を対象にワークショップを2回実施し、事例対象地における現在の地域の見かたを示す情報の収集を進めた。 (2) 環境共生に向けた課題と解決策の抽出:持続可能性の課題を現実的に解決する方策を含んだ地域ストーリーの共同構築にあたり、ストーリーの文脈となる環境共生に向けた課題と解決策を抽出した。具体的には、平成26年度「たかしま・未来・円卓会議」での議論の結果および京都府木津川市での里山活動の計画作成事例をオントロジーの概念と連結させることによって、情報を整理した。 (3) 地区の利害関係者間での継続的な対話ワークショップの実施:事例対象地で居住・勤務する人々にこれら以外の外部者を交えた対話を実施した。方法は、哲学対話の手法に準ずる形式をとった。2ヵ月に1回の頻度で実施し、ストーリー構築の基礎となる、地域の自然・文化に対する見かたや、現在の仕事や暮らしに対する自己の理解と他者への理解を深めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・哲学対話の手法に準じた対話ワークショップを定期的に実施する中で、地域の中でずっと伝えていきたいものについて語り合い、その情報を利害関係者間で共有できている。 ・過去・現在の地域の見かたを明らかにし、将来へ残していきたいものを把握する機会としての古写真を用いたワークショップの実施を計画しており、研究協力者および朽木住民福祉協議会等の協力を得ながら、これに向けた準備を進めている。 ・社会-生態システムの持続可能性を記述したオントロジーの組織化と拡充が進んでいる。 これら三点の充実した進捗により、地域ストーリーの共同構築に向けて十分な準備が進められている状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 過去・現在の地域の見かたを示す情報の収集(継続)・整理:前年度に引き続いて、事例対象地における過去と現在の地域の見かたを示す情報を収集する。収集の対象となるのは、地域の自然と深く関わっている方々の語り、一般の方等から提供された古写真および新たに撮影された写真である。これらが撮影された経緯等について提供者等よりコメントを得る。これらから得られたテキスト情報を分類して、地域の論点に当たるキーワードとする。併せて撮影場所等の緯度・経度情報を与えて掲載可能な写真をGoogle Map等上に掲載する。 (2) 地区の利害関係者間での継続的な対話ワークショップの実施:事例対象地で居住・勤務する人々にこれら以外の外部者を交えた対話を実施する。方法は、哲学対話の手法に準ずる形式をとる。頻度は、4ヵ月に1回の頻度で実施を計画している。 (3) 社会-生態システムの持続可能性を記述したオントロジーの拡充:環境共生社会への移行やレジリエンス、自然災害にかかわる概念の付加し、サステイナビリティ・サイエンス・オントロジーの拡充を行う。 (4) ロールプレイ実験による地域ストーリーの共同構築に至るプロセスの設計:事例対象地を想定したロールプレイ実験を実施し、地域のあるべき環境共生社会の像と、これに至るまでのストーリーの構築を通して、個人で作る個別ストーリーの仕様と共同構築する地域ストーリーへの統合方法を明らかにする。 (5) 地区の利害関係者が参加した地域ストーリー共同構築の実験:まず、(2)と同様の参加者による個別ストーリーの作成作業を実施する。次に、オントロジーを用いて個別ストーリー展開の類型化を行った後、この類型を手がかりに地域ストーリーの共同構築作業を行う。 (6) 地域ストーリーの共同構築手法の評価と汎用的枠組みの提示:参加者へのインタビューを通して手法を評価した後、共同構築手法の汎用的な枠組みを提示する。
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Causes of Carryover |
オントロジーの技術開発に関する打ち合わせおよび成果公開に係る旅費については、科学研究費助成事業・基盤研究(B)「オントロジーの多次元的視点管理に基づく領域横断型セマンティックデータの知的探索」(代表:古崎晃司)より支出することができた。 また、オントロジーを表示するサイト構築に係る経費については、研究代表者が勤務する総合地球環境学研究所のコアプロジェクトFS「地球環境研究の共通言語と理論的基礎をデザインする」(責任者:熊澤輝一)より支出することができた。 以上より、オントロジー関連の支出を他経費で支出できたことにより、次年度への使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
1.事例対象地での聞き取り調査、古写真を用いたワークショップ、対話ワークショップの実施、およびこれらに向けた研究協力者や地区の利害関係者との打ち合わせに係る国内旅費、聞き取り調査対象者への謝金、聞き取り調査等のテープ起こし作業に係る謝金等を支出する。2.事例情報の収集にあたり、雑誌、書籍、資料を購入・複写するための経費を支出する。また、各ワークショップの記録を蓄積するためのハードディスクの経費を支出する。3.オントロジーを用いたWebシステムの構築役務に対して経費支出する。4.本研究の成果を国内外で発表することを目的として、これに係る国内旅費、外国旅費を支出する。また、成果公開のための必要経費として、英文校閲謝金、学会投稿料、論文別刷代、学会参加費、国際会議参加費等を支出する。5.環境共生、地域ストーリーデザイン、対話、共同構築、オントロジー等に関する文献等を購入するための経費を支出する。
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Research Products
(10 results)