2015 Fiscal Year Research-status Report
創造的な思考におけるスケッチスキルの効果の解明と教育法の提案
Project/Area Number |
15K00692
|
Research Institution | Shizuoka University of Art and Culture |
Principal Investigator |
伊豆 裕一 静岡文化芸術大学, デザイン学部, 教授 (40633871)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松岡 由幸 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (20286636)
加藤 健郎 慶應義塾大学, 理工学部, 講師 (70580091)
佐藤 浩一郎 慶應義塾大学, 理工学部, 助教 (40598330)
高野 修治 湘南工科大学, 工学部, 教授 (10633654)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | スケッチスキル / スケッチスキル構造モデル / 多空間デザインモデル / 最適デザイン / 創発デザイン |
Outline of Annual Research Achievements |
多くのデザイナーが創造的な活動に活用するスケッチの効果の解明による、スケッチを的確に活用し創造活動を行うためのスケッチスキルの効果的な修得に向けた教育法の開発に向け、デザインの創作時に創出されるキーワードとスケッチの関係に着目することでデザインの思考過程におけるスケッチの効果を考察した。 スケッチを用いたデザインの創作過程において、同一の被験者により描かれたスケッチと創出されたキーワードを比較分析することで両者の関係を考察した。スケッチについてはスケッチスキルを分類し構造化することで提案したスケッチスキルの構造モデル、キーワードについてはデザインにおける包括的な観点として研究分担者らがこれまでに提案し、デザイン思考における活用の可能性を示してきた多空間デザインモデルの観点に基づいて分類・分析した。 スケッチの制作には抽出されたキーワードをもとにスケッチを描くことにより属性を展開する効果に加え、スケッチを描くことにより新たなキーワードの抽出を促す効果が見られた。スケッチを描くことにより抽出されたキーワードを、再度、多空間デザインモデルの観点で分類・分析した。デザインの思考過程におけるスケッチの効果として、トップダウンによりデザイン対象の価値や意味から属性を展開することで最適化をはかる最適デザインに加え、属性を展開することでボトムアップにより新たな価値や意味を抽出する創発デザインに主眼をおいた効果を確認した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初研究計画では、プロダクトデザイン以外のデザイン分野のスケッチの事例収集を計画したが、デザインの創作時に活用されるスケッチの効果解明に向け、透視図法や構成要素の詳細な形状描写等多くのスケッチスキルの活用が求められるプロダクトデザイン分野での分析を優先させた。 同一の被験者による、キーワード発想後のスケッチ描画、スケッチ描画後のキーワード発想、およびスケッチ描画とキーワード発想を並行した事例の分析を行った。スケッチについては、スケッチスキルの構造モデルに示した4項目のスケッチスキル、キーワードについては多空間デザインモデルに示した4階層に分類し評価した。その結果、デザイン対象全体の構造や形状を展開するスケッチスキルの活用は属性を表すキーワードの発想に影響し、詳細な要素を展開するスケッチスキルの活用は価値や意味を表すキーワードの発想に影響することを見出した。以上の研究成果を論文としてまとめ発表した。
|
Strategy for Future Research Activity |
デザイン教育においてスケッチスキルと共に重視される、デッサンによる観察描写力とスケッチスキルの関係の解明を行う。発想したデザイン案のイメージ表現を目的とするスケッチに対し、デッサンでは対象物の正確な表現が求められる。また、おもに輪郭線で形状を表現するスケッチに対し、デッサンでは陰影により立体を表現する。このように両者の間には多くの相違点がある一方、透視図法や陰影の表現方法には共通点も見られる。しかし、一般に両者は異なるスキルとして別個に教育され、それぞれの描画スキルの関係は明らかでなく、同一の被験者により描かれたデッサンとスケッチを比較分析することは、創造過程におけるスケッチスキルの効果の解明に加え、創造活動を行うためのスケッチスキルの効果的な修得に向けた教育法の開発にも効果があると考えられる。両者の描画スキルの違いとデザイン発想の関係を解釈し、学会発表ならびに論文として発表を行う予定である。
|
Causes of Carryover |
当初研究計画では、27年度より国際会議での発表を予定していたが投稿が間に合わず、おもに外国旅費として予定していた経費との間に差額が生じた。28年度については、海外で開催のものを含む複数の学会での発表に向け、研究結果を論文にまとめ、投稿を進めている。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
海外で開催のものを含む学会での発表のための旅費としての使用を予定。
|