2016 Fiscal Year Research-status Report
夾纈を題材とした伝統工芸継承のためのテキスタイルデザイン
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15K00708
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Research Institution | Kobe Design University |
Principal Investigator |
ばんば まさえ 神戸芸術工科大学, 芸術工学部, 教授 (00249202)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
さくま はな 神戸芸術工科大学, 芸術工学部, 助教 (00589202)
安森 弘昌 神戸芸術工科大学, 芸術工学部, 准教授 (20341018)
廣中 薫 神戸芸術工科大学, 芸術工学部, 准教授 (50594347)
曽和 英子 神戸芸術工科大学, 附置研究所, 研究員 (80537134)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 夾纈 / 板締め / 絞り染 / 伝統工芸 / 染織 / 正倉院裂 / テキスタイル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、正倉院裂の夾纈を元にして現代の夾纈テキスタイルを作り上げることを目的としている。27年度では夾纈の歴史・技法の成り立ち・版木の特徴を調査し、それを基に版木の試作と染色実験までを実施したが、十分な結果は得られなかった。 28年度ではこれらを解決するために情報を収集し、様々な試行錯誤をした。版木の詳細な情報収集のために、島根県古代歴史博物館に多数所蔵されている京都の紅板締め版木と再現締め具を閲覧して参考にした。試作においては、染料の滲み改善に向けて版木の形を変更し、防染力を高める改良を重ねた。次に、圧着性を高めるために、挟む方法を変えて実験し、適した道具を考案した。染色方法においては、高度な技術を持つ京都の染色工場へ調査に行き、職人から直に習得した。 27年度に引き続いて正倉院夾纈に関する調査を実施した。文献から夾纈文様の特徴を抽出、考察、奈良国立博物館正倉院展での実物見学を行った。上代布の美しさを再認識し、その再現を試みることを決め、版木データを作成した。中国で行なわれている夾纈についての詳細な文献を入手し、日本の紅板締めに現れる文様との比較を行った。 新しい夾纈文様デザイン作成に向けては、在学生を対象としたワークショップを実施、版木の特徴を活かすための原画作成方法を模索すると共に、若い世代にも受け入れられるデザインを作るための基盤となる、現代のファッションデザインにおけるテキスタイルプリントを調査した。また、最終的な目標の一つとしている絞り産地との連携を視野に、名古屋の有松・鳴海地域の企業、京都の絞り工場を視察、産地の現状とニーズを聞き取り調査した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
28年度中に完全な版木作成の計画をしていたが、染料の滲みを無くすための対応策に時間がかかったために遅れが生じている。改善のため、紅板締め復元の調査結果を参考にして今回の版木に適した挟む道具を考案・作成している。これにより染色の精度については早期の改善が見込まれる。 また、当初は正倉院裂の復元は目的にせず、夾纈の技法を用いた新しいデザイン作成とテキスタイル制作のみを計画していたが、正倉院展で実物を見学した後、正倉院文様を一度復元模写して、その成り立ちと美しさを知ることが新しい文様デザインへのヒントにつながると確信したため、制作を追加した。正倉院夾纈の中でも複雑な文様の復元を行っているために時間を要し、他の作業計画に若干影響が出ている。この追加作業によって夾纈裂の文様形成について深い理解を得ることができた。 夾纈文様研究及びデザイン作業については予定通りに進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で、版木の作成と染色方法については概ね確立できた。29年度では、グラフィックデザインを専門領域とする教員・学生と共同で、現代のライフスタイルや若い世代にも受け入れられる夾纈デザインを考案していく。デザインワークショップ、染色ワークショップ等を実施することで、布をたたんで染める夾纈技法の特徴や正倉院宝物に表れる文様の特徴を学生など若い世代が学ぶ機会にもしていきたい。制作されたデザインは、データ化して版木を作成、布へ染色する。完成したテキスタイルは、ファッションデザインやインテリアデザインへの応用を視野に加工をする計画である。 研究成果は夾纈の文様研究と版木の作成と染色の技術的な研究成果を学会で発表する。他に、制作したテキスタイル等を含む内容を展覧会で発表することを予定している。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が発生した理由は以下である。中国出張調査の未実施分、埼玉県の歴史民俗博物館での紅板締め調査出張が不要と判断された、産地調査で参加人数が見込みより少なかった、版木制作が予定より遅れているために材料費の支出が少なかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究最終年度においては前年度未執行分の版木材料を購入する。加えて、レーザーカットするためのデータ作成では、制作数が多い場合にはアルバイトを雇用して作業をする計画のため、人件費が必要である。成果発表に向けての準備では材料費(パネル代、写真データ印刷費)が必要で、染め上がったテキスタイルを最終成果物としてアイテム化するための作業人件費も見込んでいる。また、計画には当初は入れていなかったが、成果記録費(冊子またはCD)を追加で入れる予定である。
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