2016 Fiscal Year Research-status Report
持続的住環境形成に資する地域と大学の協働活動のプログラムと運営手法の研究
Project/Area Number |
15K00748
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
櫻井 典子 新潟大学, 教育・学生支援機構, 特任准教授 (00537003)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 地域と大学の協働 / Project Based Learning / 大学生の地域活動 / まちづくり / 地域貢献 / 持続的住環境形成 / 学習環境デザイン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、申請者が実際に運営する地域と大学の協働活動「新潟大学ダブルホーム」を持続的な住環境形成に資する活動へ発展させていくプロセスの中から有効な活動プログラムや支援手法を構築していくことを目指している。ダブルホームの活動地域や先進事例の対象地域が持つ社会的・物理的資源や活動組織の可能性を明らかにしつつ、先進事例から得る有効手法をダブルホーム活動に導入・検証し、今後の地域と大学の協働活動への提言へ繋げる。 先進事例調査から、地域と大学の協働活動に関わる主体(地域、大学教員、学生)が持つ異なる志向から生じる課題への対応の必要性、学生の地域活動への参加意欲や学習深化の向上に向けたしくみやプログラムの重要性を認め、改善に取り組んでいる。正課授業と課外活動を往還させつつ活動の質を高めていくために、インストラクショナル・デザインの視点から入門授業の改善に取り組んでいる。その成果検証について教育系の学会やフォーラムで発表した。 平成28年度は、前年度に得られた結果を踏まえて、持続的住環境形成に資すると考えらえるプログラムや運営手法をダブルホーム活動に導入し、アクションリサーチを中心とした検証を行った。具体的には、地域との信頼関係構築に向けた活動計画の改善や地域の実情やニーズを把握するための対話機会創出、そして学生間のピアサポート体制づくりや振り返り行動の促進などである。これらに対する効果を、各ホームが年度末に見出した活動成果や課題から検証した。各ホームが地域住民とともに見出した課題を活動拠点の範囲や活動内容の型で比較・考察して得られた結果について日本建築学会で続報として発表する予定である。 大学の地域貢献が求められる今、今後もアクション・リサーチを実践し、地域と大学の協働活動に有効な手法や知見を蓄積していきたい
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.先進事例調査 平成28年度は、主に早稲田大学のWAVOCの取り組みを調査した他、松本大学の地域づくり考房「ゆめ」の関係者から聞き取り調査や資料収集を行った。WAVOCでは、担当教職員が学生チームの主体的活動を支える仕組みを構築しつつ、リフレクション「体験の言語化」に力を入れ、学生たちの学習深化に大きな成果を出していた。松本大学は、地元中心に地域ぐるみで学生の主体的活動を支援していた。活動奨励費の申請制度、学内の地域貢献活動コンペ、チームビルディング合宿など、参考になる取り組みがあることを認めた。 2.ダブルホーム活動調査 平成28年度は、前年度に得られた効果的な手法や知見をダブルホーム活動に導入し、アクションリサーチを中心とした検証を行った。地域との信頼関係構築に向けた活動計画の改善や地域の実情やニーズを把握するための対話機会創出、そして学内体制強化に向けた学生間のピアサポート体制づくりや振り返り行動の促進などを実施した。各ホームが年度末に見出した活動成果や課題から効果を検証した。成果と課題を活動拠点の範囲や活動内容の型で比較した結果、1地域で活動するホームは、複数や広域地域で活動するホームよりも地域住民との信頼関係を構築しやすいこと、一方で行事の減少に直面するなど、行事参加型のままでは持続が困難になることが見いだせた。また、行事参加型よりもプロジェクト遂行型の方が学生の総合的学習意識の平均点も高い傾向があった。プロジェクト遂行型であっても短期的なものよりも継続的で挑戦的なものが効果的である可能性も認められた。また、その成果を住民と共に達成していくことも重要であった。 ダブルホーム活動の地域への影響の把握調査は2地域のみの実施となった。長期活動の中で受け入れ地域からは活動の成果を求める声が高まっていることを見出した。今年度も調査を継続していく。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、これまでに得られた結果を踏まえて、ダブルホーム活動を持続的住環境形成に資する活動とするために、参加者の学びや成長に効果的なプログラムや運営体制づくりに取り組み、アクションリサーチを中心とした検証を継続する。先進事例調査も継続して実施しつつ、ダブルホーム活動の地域への影響として、これまでの成果や課題を見出すための調査を実施する。 Ⅰ.活動プログラムや運営体制の改善効果の検証:これまでの研究結果を踏まえて、活動プログラムや運営体制を改善し、それらがダブルホーム活動の地域および大学参加者にどのような経験をもたらし、参加者の学びや成長に影響を与えるかを検証する。 Ⅱ.「新潟大学ダブルホーム」活動地域の住環境調査とダブルホーム活動の地域への影響の把握:今年度は、全ホームの活動地域の関係者にヒアリングを実施し、活動の見直しを検討していく。昨年度の継続調査として選定した地域においては、活動に積極的に参加している住民だけでなく、活動に関連する行事参加者等を対象として、ダブルホーム活動がもたらす地域への影響を詳細に把握するための調査を実施する。 上記の調査結果の分析により、持続的な住環境形成に資する地域と大学の協働の在り方として有効な活動プログラムや運営手法を考察し、今後の地域と大学の協働活動への提言とする。先行事例の研究者や実践者と持続的住環境形成に資する参加者の学びや成長に効果的なプログラムや運営手法について報告・対話ができる体制を構築したい。そこから得られた知識を共に蓄積・共有して地域と大学の協働活動モデルを豊富化し、優れた実践手法を普及していくことを目指したい。
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Causes of Carryover |
3月18~20日の大学教育研究フォーラム参加費用(旅費とその他)や3月23日の松本大学視察調査の旅費が含まれていないためである。また、大学生等の研究および分析補助者の参加を予定していたが、活動の一部として実施したことや、代表者がデータ入力や分析を行ったことで予定していた謝金を支出しなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は、個人研究として活動地域でヒアリング調査を実施していくための費用に助成金を使用する予定である。
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Research Products
(8 results)