2015 Fiscal Year Research-status Report
調理プロセスで発生する加熱生成成分の機能性、安全性に関する基礎的知見の確立
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15K00798
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
新藤 一敏 日本女子大学, 家政学部, 教授 (80350180)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 加熱成分 / ローズマリー / けしのみ / 抗酸化活性 / PPARγアゴニスト活性 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度として、まず食材16種(ローズマリー、けしのみ、アキグミ、タラゴン、セロリシード、山椒、コーングリッツ、マスタードシード、カフェライムリーフ、サボりー、マジョラム、ききょう、ほじそ、おかひじき、ししどうがらし、ディルウィード)について、無処理及び加熱処理(フライパン上中火で5分加熱)物の抽出エキス(50%メタノール抽出エキス及びジクロロメタン:メタノール(1:1)エキス)を調整し、それらをDAD HPLCシステムで分析・比較した。その結果、ローズマリーで5種の新たな成分、けしのみで1種類の新たな成分が生成していることを見出した。 次にこれら新規成分について大量調製、単離精製、構造解析を実施し、それぞれの化学構造を明らかにすることができた。ローズマリーから得られた新たな成分はいずれもcarnosol, carnosic acid(ローズマリーに含有される天然成分)の類縁化合物であり、そのうちの2化合物は新規化合物、残りの3化合物は天然の他の植物から報告されているもののローズマリーには含有されていないものであった(おそらくすべてcarnosol, carnosic acidから生成したもの)。またけしのみから得られた新たな成分はtrans, trans-2,4-decadienalと同定した(linoleic acidを加熱処理すると生成することが報告されている。けしのみはlinoleic acidをもつ油脂を多く含む)。 現在は得られた新たな成分にについて、生理活性を検討中である。これまでにローズマリーから得られた新たな成分に優れた抗酸化活性があること、またローズマリーの新たな成分のいくつか、trans, trans-2,4-decadienalに穏やかなPPARγアゴニスト活性があることを見出している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
食材の処理数は当初予定通りである。予想外であったのは、食材により回収できる新たな成分の量が様々であることであった。本年度のローズマリー5成分、けしのみ1成分の単離、構造解析には約半年を要した。今後もこの程度のペースを維持していきたい。 生理活性の検討についても、おおむね予想とおり着手できている。ただしPPARγアゴニスト活性についてはレセプターバインディングアッセイまでは完了できたが、その先の細胞での応答を見る系の確立手技が困難であり、現在まだ途上である。 全体的には初年度としては、おおむね順調と判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
あらたな食材についての探索は順次進めていく。 今年度発見されたローズマリーの新たな成分については、新規化合物を含むこと、優れた抗酸化活性、PPARγアゴニスト活性を有することが判明した。このため、当初の予定を少し変更し、これら新たな成分の有用な生理活性をより深く探求する研究を進めていきたい。
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