2016 Fiscal Year Research-status Report
新規経腸栄養剤開発を目指す機能性ペプチド成分に関する研究
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15K00831
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
桑波田 雅士 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (30304512)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ゼラチン加水分解物 / ストレプトゾトシン / 膵臓保護 |
Outline of Annual Research Achievements |
我が国には、糖尿病あるいはそのリスクを保有する者が2,000万人を越えて存在する。我々はゼラチン加水分解物の摂取により、糖尿病モデルラットの病態進行が抑制される可能性を見出した。現在、臨床応用されている糖尿病患者用の経腸栄養剤には、タンパク質成分の機能性に焦点をあてた製品は存在しない。本研究では、ゼラチン加水分解物摂取が糖尿病モデルラットの病態に及ぼす影響を検討し、その作用機構を解明するとともに、活性画分を濃縮することを目的とする。 本研究では、ストレプトゾトシン投与による糖尿病モデルラットを用いて研究を実施してきた。そしてこれまでの研究では、ストレプトゾトシン投与と同時にゼラチン加水分解物を含有した飼料で飼育を行なうことで、飼育1週間後の血糖値の上昇を有意に抑制し、糖尿病の病態進行を抑制できることを見出した。一方でストレプトゾトシン投与1週間後から本試験飼料を給餌した場合には、ゼラチン加水分解物の糖尿病進行抑制作用が消失し、対照飼料で維持した場合との差が無くなることを確認していた。そして今年度の研究では、ストレプトゾトシン投与後2日間の試験飼料の摂取が、血糖値の変化に影響を及ぼしている可能性を見出した。2日間実験飼料を自由摂取させ、1晩絶食後に経口糖負荷試験を実施したところ、ゼラチン加水分解物を摂取した群で血糖値の上昇が有意に抑制され、糖負荷30分後の血漿インスリン濃度は有意に高値を示した。さらにストレプトゾトシン投与3日目に膵臓の組織学的検討を実施したところ、ランゲルハンス島が占める面積割合が、対照飼料の摂取と比較し、ゼラチン加水分解物摂取で有意に高値を示した。これらの結果から、ゼラチン加水分解物は膵臓の保護に効果的であると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
糖尿病自然発症モデル動物をはじめとする複数のモデル動物を使用した検討を開始する予定であったが、現時点ではそれに至っていない。しかしながらゼラチン加水分解物の血糖上昇抑制作用が、骨格筋をはじめとするインスリン抵抗性の改善に起因するのではなく、膵臓に直接あるいは間接的に作用し、ランゲルハンス島を保護する効果があることを確認できたことは、今後の研究にも大きく役立つデータを得ることができた。また、腸管からのGLP1分泌を測定するための予備実験も進めており、次年度には結果が得られるものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
ゼラチン加水分解物摂取による糖尿病進行抑制効果の作用機構を検討する。ゼラチン加水分解物摂取後の腸管からのGLP1分泌を検討し、このインクレチンによる膵臓保護効果が関与する可能性を明らかにする。もし肯定的な結果が得られなかった場合には、摂取成分の直接的な作用を検討する目的で、ゼラチン加水分解物摂取後の血漿ペプチド分析を実施する。 そして当初の予定通り、他の糖尿病モデル動物に対するゼラチン加水分解物摂取の影響を評価するとともに、その活性本体の濃縮、同定を試みる。
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Causes of Carryover |
ゼラチン加水分解物の摂取が、糖尿病の進行を抑制するメカニズムの解明に関する研究に時間を要したため、当初、複数の糖尿病自然発症モデル動物を利用した研究を計画していたが、それに至らなかった。これが次年度使用額が生じた大きな理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度実施できなかった自然発症モデル動物を利用した実験を次年度実施する予定であり、そのモデル動物購入費用として支出する。
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[Journal Article] Comparisons of dietary intake in Japanese with non-alcoholic fatty liver disease and type 2 diabetes mellitus.2016
Author(s)
Kobayashi Y, Tatsumi H, Hattori M, Sugiyama H, Wada S, Kuwahata M, Tanaka S, Kanemasa K, Sumida Y, Naito Y, Fukui M, Kido Y.
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Journal Title
J Clin Biochem Nutr
Volume: 59
Pages: 215-219
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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