2015 Fiscal Year Research-status Report
n-3多価不飽和脂肪酸の炎症収束作用による肺高血圧症予後改善の可能性
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15K00837
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
斉藤 麻希 岩手医科大学, 薬学部, 助教 (40365185)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田辺 由幸 横浜薬科大学, 薬学部, 教授 (10275109)
鎌滝 章央 弘前大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60360004)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 肺高血圧症 / モノクロタリン |
Outline of Annual Research Achievements |
指定難病の一つである肺高血圧症 (PH) は、進行性且つ難治性の循環系稀少疾患である。PH の生命予後は膠原病等慢性炎症を伴う基礎疾患との合併により著しく低下することが報告されていることから、PH 予後改善における炎症収束の意義は大きいと考える。また、稀少疾患である PH 治療薬が極めて高価であり、医療費膨張をもたらしかねない現状と、肝障害などの有害作用を併せ持つことなどを考え合わせ、より安価且つ安全な PH 治療方略の糸口を、抗炎症・炎症収束作用を有する食品(特に n-3 多価不飽和脂肪酸)や既存の循環系治療薬に求めることとした。 本年度は、まず、臨床で用いられているが肝障害が報告されている PH 治療薬の減量が、n-3 多価不飽和脂肪酸投与により可能か否かを確かめるための予備的実験を行った。即ち、低用量ボセンタン (30 mg/kg/day) で PH 予後が改善されるか否かを検討した。また、これまでにレニンーアンギオテンシン (RA) 系の亢進が循環系組織における炎症性応答に関与するとの報告を受け、RA 系に抑制的に作用する薬物(カプトプリル、ロサルタン、オルメサルタン)の効果についても検討した。PH モデルとして、モノクロタリン (MCT) 誘発 PH ラットを用いた。PH が誘導される MCT 投与 2 週間後から、低用量ボセンタン、カプトプリル、ロサルタン、及びオルメサルタン投与を開始した。その結果、低用量ボセンタンおよびカプトプリル投与群では PH ラットの生命予後改善は見られない一方、アンギオテンシンII AT1 受容体遮断薬であるロサルタン及びオルメサルタン投与群では一定の生存期間延長を観察した。また、小動物を用いての PH 研究で喫緊の課題である非侵襲的肺循環パラメター測定を目指し、臨床用超音波画像診断装置を応用した測定系構築を試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
①PH 治療薬と n-3多価不飽和脂肪酸 (n-3PUFA) の併用効果に関する in vivo 実験の遅れ:実際の交付額に鑑み、当初購入予定であった小動物用超音波診断装置の購入を見送り、臨床用超音波画像診断装置を用いての測定を試みることにした。ヒト用リニア探触子でのラット四腔断面像や左胸骨傍短軸断面像の取得が容易でなかったこと、ラット保定台や、探触子固定台などの作製に想定以上の時間が掛かったことが、原因であると考えられる。 ②n-3PUFA 受容体 GPR120 強発現ヒト肺動脈平滑筋細胞の樹立の遅れ:研究分担者の異動により、一時的に核酸電気泳動実験が滞ったこと(H27度にゲル撮影装置を購入したことにより解消)、異動先における細胞培養環境の構築に時間を要したが理由として挙げられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度に生じた in vivo 実験の遅れは、主に超音波診断の手法が確立しなかったことに起因するが、平成28年現在、その測定系構築は概ね仕上がっている。平成28年度では、この実験系を用いて、平成27年度に終えられなかった「PH治療薬と n-3PUFA 併用効果に関する in vivo 実験」を完了させつつ、平成28年度計画にある心肺の組織化学的検討に供する試料の取得を行うことで、挽回可能である。更に、赤色蛍光タンパク質融合 GPR120 発現プラスミドの構築を完了させ、本年度計画にある「GPR 120 強発現ヒト肺動脈平滑筋細胞の樹立」を目指す。
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Causes of Carryover |
当初予定していた小動物用カラー超音波画像診断装置の購入を見送ったことによる(一部は新たに必要となったゲル撮影装置の購入に充てた)。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度に滞っていた in vivo 実験および長鎖脂肪酸受容体強発現細胞構築の為の実験動物、試薬、および実験器具の購入に充て、平成28年度は計画通りに実験が遂行できるよう努める。
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