2016 Fiscal Year Research-status Report
n-3多価不飽和脂肪酸の炎症収束作用による肺高血圧症予後改善の可能性
Project/Area Number |
15K00837
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
斉藤 麻希 岩手医科大学, 薬学部, 助教 (40365185)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田辺 由幸 横浜薬科大学, 薬学部, 教授 (10275109)
鎌滝 章央 弘前大学, 医学研究科, 助教 (60360004)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 肺高血圧 / モノクロタリン / 多価不飽和脂肪酸 / アスピリン |
Outline of Annual Research Achievements |
アスピリンによるシクロオキシゲナーゼのアセチル化が、炎症収束性物質産生を増強させる可能性が示唆されている。本研究では、モノクロタリン誘発肺高血圧ラットへの多価不飽和脂肪酸 (PUFA) およびアスピリンの併用が肺高血圧病態にどのような影響を与えるかにつき、in vivo で検討した。 肺高血圧症の誘導のため、5週齢 SD 系ラットにモノクロタリンを単回投与した。その翌日から n-3 系 PUFA のソースとして魚油、n-6 系PUFA のソースとしてコーン油の経口投与を開始すると同時に、アスピリンの投与を開始した。経時的に体重測定、心エコー検査を実施し、PUFA 摂取およびアスピリン投与による影響について検討した。また、肺高血圧病態が完全に成立するモノクロタリン投与 3 週後に右心室収縮期血圧や右心肥大の有無(右心室/左心室+心室中隔室重量比, RV/LV+S)について検討するとともに、炎症性サイトカイン等の発現変動の検出に備え、心肺組織を取得した。 体重の推移に関しては、全ての群において、これまでの研究成果と比較して目立った変化は見られなかった。心エコーで測定した肺動脈径も全ての群間に差は認められなかった。右心室圧や RV/LV+S についても、健常動物に比較してモノクロタリン投与群で上昇していたものの、PUFA およびアスピリンの投与の有無による明確な違いを見出すには至らなかった。いくつかのサイトカインについて発現変動について調べると、心線維化や炎症に関与するいくつかの因子の発現を魚油+アスピリン投与が強力に抑制する一方で、別の炎症関連因子の発現は増大させるという予備的結果を得た。次年度も上記データの収集を続け、PUFA およびアスピリンが肺高血圧病態に与える効果について確認するとともに、炎症性サイトカイン発現についても検討を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は、肺高血圧症モデルラットを用いた in vivo 実験を中心に進めたが、肺高血圧ラット作製には熟達しており問題がなかった。昨年度からの課題であったヒト臨床用超音波診断装置を用いての非侵襲的心機能測定に関しても、安定して傍胸骨短軸像が取得出来るようになり、比較的速やかに肺動脈径の測定等を行うことが可能となった。肺高血圧の誘導から病態完成まで 3~4 週間を要するため、病態モデル作製が律速となり例数の確保は容易ではなかったものの、初年度に購入したビーズ式組織破砕装置や微量分光光度計により、肺、右心室、左心室+心室中隔と多数のサンプルからの total RNA 取得に要する時間が短縮出来たことなどが挙げられる。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、病態モデル動物を作製し、生化学的解析用サンプルの例数確保を行う。生化学的解析用に取得したサンプルは一旦超低温槽内に凍結保存し、ウェスタンブロットおよび RT-PCR による炎症関連因子の解析に供する。組織学的解析用の組織は生化学的解析用サンプルとは別に準備する必要があるため、こちらも順次必要例数の確保に努める。固定した組織はパラフィン切片作製に用い、ヘマトキシリン-エオジン染色やエラスチカ-マッソン染色等による組織リモデリングに関する検討や、炎症関連因子に対する免疫組織学的解析を行う。
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Causes of Carryover |
モノクロタリン投与3週後に取得したサンプルを用いて、一部の炎症性サイトカインの発現変動を検出した結果、肺高血圧進行過程の時点毎に薬物に対する感受性が異なる可能性が示唆されたため、平成29年度の交付額から前倒し請求し、必要物品および試薬を購入した。予定よりも納入価格が低価格であり、残額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今回生じた繰り越し分は、元来平成29年度に配分されるべき額の一部であるため、予定通りに実験を遂行することで何ら問題は生じない。
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