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2016 Fiscal Year Research-status Report

炎症抑制効果を有する乳清タンパク質分解ペプチドによるサルコペニアの予防と改善

Research Project

Project/Area Number 15K00890
Research InstitutionKanagawa Institute of Technology

Principal Investigator

佐々木 一  神奈川工科大学, 応用バイオ科学部, 教授 (80747634)

Project Period (FY) 2015-04-01 – 2018-03-31
Keywordsサルコペニア / 炎症 / 炎症抑制 / 乳清たんぱく質 / 骨格筋
Outline of Annual Research Achievements

高齢者のサルコペニアは、たんぱく質摂取量の低下のみではなく加齢に付随する慢性炎症が原因となり発症・進行を促進する。良質なたんぱく質源である乳清たんぱく質(主成分はα-ラクトアルブミンおよびβ-ラクトグロビン)は、我々の研究により炎症抑制効果を有することが明らかになった。乳清たんぱく質を高齢者のサルコペニアの予防および進行抑制に応用するための科学的基盤の構築が当研究の目的である。
初年度(2015年度)は、筋損傷モデルを作成し、このモデルの安定性および乳性たんぱく質の筋損傷抑制効果を病理標本レベルで確認した。次年度(2016年度)は、筋損傷モデルおける乳清たんぱく質の効果をより詳細に検討した。筋損傷レベルの比較は、筋逸脱酵素(クレアチンキナーゼ(CPK)、乳酸脱水素酵素(LDH))の活性測定により定量的に行った。乳清たんぱく質を配合した餌を与えたマウスでは、対照群(カゼインを配合した餌を摂取)と比較して、血中CPK、LDHは、有意に低い値を示し、筋損傷レベルが低いことを確認した。
次いで、血中の炎症性サイトカイン(TNF-αおよびIL-6)の濃度を測定した。肝炎などの場合は、TNF-α、IL-6ともに上昇するが、骨格筋の場合は、TNF-α濃度は上昇せず、IL-6濃度のみが上昇し、他の臓器とは異なるパターンを示すことがわかった。さらに、乳清ペプチドを摂取したマウスの腸内細菌叢を解析した。乳清ペプチド摂取により、糞中の乳酸菌群が有意に増加しクロストリディウム群が有意に減少した。
今年度の研究結果は、乳清ペプチド摂取により筋損傷が抑制されることを示すと同時に、他の臓器の炎症とは異なるサイトカインパターンを示し、乳清たんぱく質摂取により腸内細菌叢が顕著に変化することも示すものである。これらは、新規な結果である。今後、これらの結果を精査し乳清ペプチドの作用機作の解析を進める予定である。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

27年度は、骨格筋の炎症状態を観察し、乳清たんぱく質摂取による炎症抑制効果を確認するための「動物モデルの構築」を主体に研究を進め、安定した筋損傷モデルを構築することができた。28年度は、構築した動物モデルを用い、「骨格筋の損傷、炎症、再生に対する乳清たんぱく質の作用」についての解析を行う計画とした。乳清たんぱく質の作用機作についての検討が進み、新規な結果を得ることができた。特に下記は特筆すべき点である。
1.筋損傷レベルの判定には、筋逸脱酵素(クレアチンキナーゼ、乳酸脱水素酵素)の血中レベルにより判定した。その結果、27年度に構築した筋損傷動物モデルを用い、筋損傷レベルの比較が可能であることがわかった。27年度は、病理標本(パラフィン切片)の観察により行ったが、筋逸脱酵素により、定量的な損傷の観察が可能となった。
2.血中の炎症性サイトカインレベルを観察することにより、筋損傷形成における炎症性サイトカインの役割について検討した。他の組織の炎症とは異なりTNF-αの血中レベルは上昇しないが、顕著なIL-6の上昇が見られた。これは、他の臓器とは異なる炎症性サイトカインパターンである。このパターンの相違を生じさせる骨格筋の特性、特に免疫細胞の種類等が異なると思われる。
3.乳清たんぱく質を摂取したマウスの糞便中の細菌叢が顕著に変化した。乳酸菌群の構成割合が有意に増加し、クロストリディウム群の構成割合が有意に減少した。乳清たんぱく質摂取による腸内細菌叢の変化は、これまで報告されていない結果である。
乳清ペプチドの作用機作に関する検討に関しては、計画は順調に進展したと考えられる。計画の中で、筋再生時のたんぱく質代謝の測定についての進展は得られていない。この面での計画の再検討が必要と思われる。

Strategy for Future Research Activity

乳清ペプチドによる筋損傷抑制効果の作用機作についての検討をさらに進める。当研究の目的は、高齢者のサルコペニアの予防・抑制のための食品の開発のための基盤を構築することにある。乳清ペプチドの作用機作の解析は、素材の安全性および機能性を確認するための基盤となる。
1.腸内細菌叢の関与に関する検討 -- 乳清ペプチド摂取によりマウスの腸内細菌叢の変化が見られた。この変化が、筋損傷抑制に関与しているかの詳細を検討する。腸内細菌叢のより詳細な解析、他のたんぱく質との比較、抗生物質投与により腸内細菌叢の増殖を抑制した際の効果の確認等により腸内細菌叢の関与を検討する。
2.骨格筋損傷時の炎症性サイトカインパターンについての検討 -- 筋損傷時の炎症性サイトカインパターンが肝炎など他の臓器で観察されるものと異なることが明らかとなった。血中のサイトカインパターンと骨格筋細胞のサイトカイン遺伝子の発現パターンを比較することにより、サイトカインパターンの比較を行う。サイトカイン以外の炎症に関する遺伝子発現を解析することにより筋損傷に対する乳清ペプチドの効果を総合的に判定する。
3.たんぱく質代謝に関係する遺伝子の解析 -- 当初の計画では、13C標識分岐鎖アミノ酸の代謝量を測定し、たんぱく質代謝の解析を行う予定であった。しかし、技術的な問題(感度、13C標識アミノ酸の価格等)があるため、別の方法を検討する。たんぱく質代謝に関係する遺伝子群の解析により、乳清たんぱく質の効果を確認する。

  • Research Products

    (2 results)

All 2016

All Journal Article (2 results) (of which Int'l Joint Research: 1 results,  Peer Reviewed: 2 results,  Open Access: 2 results)

  • [Journal Article] 32.Increased insulinogenic indexes after liquid food (Inslow) intake in subjects with impaired glucose tolerance and type-2 diabetes: a randomised controlled trial2016

    • Author(s)
      Liu E, Kume A, Yan H, Wang X, Zheng H, Konno T, Ding H, Shen H, Sasaki H, Ji ZS.
    • Journal Title

      Int J Food Sci Nutr Diet

      Volume: 5 Pages: 278-286

    • DOI

      http://dx.doi.org/10.19070/2326-3350-1600050

    • Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
  • [Journal Article] 31.DPP-4 inhibition improves early mortality, β cell function, and adipose tissue inflammation in db/db mice fed a diet containing sucrose and linoleic acid2016

    • Author(s)
      Shirakawa J, Okuyama T, Kyohara M, Yoshida E, Togashi Y, Tajima K, Yamazaki S, Kaji M, Koganei M, Sasaki H, Terauchi Y.
    • Journal Title

      Diabetol Metab Syndr

      Volume: 8 Pages: 1-13

    • DOI

      10.1186/s13098-016-0138-4

    • Peer Reviewed / Open Access

URL: 

Published: 2018-01-16  

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